新たに紡ぐ物語
「今聞いてもらった話は本題とあんまり関係ないんだけど、なんとなく知ってて欲しくて...」
「それで、なんでこの大陸の大悪党になるのか見当がつかないけど、何があったの?」
懐かしむような、それでいて、どこか悲痛そうに自分を咎める顔をする彼女にかける言葉を持っていないので、対応が冷たくなってしまうけど、続きを促す。
「まあ、端的に言うと、国外逃亡→世界が知りたい→世界旅行→なんやかんや→対処する→大悪党って感じかな」
うーん、そのなんやかんやが知りたい所存です。てか、端的すぎだなおい。
「はーい焦らない、焦らない」
え、心読まれてる?
んーいや、この感じは表情から言葉を汲み取られた感じ?
「国外逃亡から世界旅行までの所は端折らせてもらうけど、この大陸についたのは大体5年位前かな?」
5年前で頭に浮かぶのは大陸にどでかい穴が二つ、小さい方に大きい方が重なるように空いて、瓢箪の脱粒性とか呼ばれてたっけ。
「もしかして...もしかする?」
「あはは」
何かを察したのか遠い目をして、乾いたように笑っている。そう、笑っているのだ。
「せいかーい、到着して半月ぐらいだったよね」
「で?」
「まあ、そういう事」
まるで説明が終わったかの様にうんうんと頷き、「よし無事に話終わった」と次の話に移ろとする。
あ、あぁ、待った、言葉足らずだったかな?一応何があったか聞こうかな。
つーと、背中を汗が伝う感覚がする。
「で、何があったの」
「後々話すね」
満面の笑みで軽く話を流されるため、これ以上聞いても無駄だと思い、話すのをやめるが、二人の関係がまだ続く様な言い方に背中を汗が伝う。そう本当に汗が伝うのだ。
「ご、ご飯おいしかったよ、ありがとう。でもそろそろお暇させてもらうよ」
"超新星の魔女"瞳の色と隕石のが落ちたと思われる程の威力の魔法に因んだ異名となっている。
色々と動揺し過ぎだからって異名持ちに気づかなかったのは痛手だ、仕事の失敗やその他諸々の負担に頭が上がらない、どうしよう。
「...不合格」
「え?」
「不合格だから」
笑顔の雰囲気からガラリと無表情になり、古傷を撫でられた痛みが全身を走り思考を鈍らせ、鼓動が早くなる。
「逃げたら不合格だから...」
「に...逃げません」
超新星の魔女に睨まれてしまっては確実に逃げれない。何よりこれ以上傷に触れて欲しくないそんな思いで言葉が詰まってしまう。
「じゃあ、あなた買われてみない?」
「結構です」
「ギルド名を買い直せるぐらいのお金を出すって言ったら?」
確信をつかれ、手・足と逃げる手段を捥がれる。
ギクッと心に動揺が広がる、ギルドで依頼を受けた以外の内容は話してないから、何処まで情報を握られているか、分からないな。
「今回の任務が失敗に終わった分の補填も...」
「その件は大丈夫」
変わらない表情で興奮気味に被せられる。
「無かったことにしたから。それで、返事は?」
「何をさせられるの?」
「それは返答した後、で、返事は?」
こっちの問いかけに殆ど答えてくれず、もちろん無かった事にしたの内容が凄く気になるが、例のごとく教えてくれないし、しかも余裕が無いのか、返事を迫られる。
「カ...カワレマス」
「よし、良い子!よろしくね」
変わらなかった表情がやっと笑顔に戻る。
追い詰められ、後がないため頷くが、後々この選択が自分の首を締めないことを、せつに願う。願っています。
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