長い一日 夕
薬屋を出て東に歩き、小橋を渡って、路地へ入ったところに、派手に「万事屋会」と書かれた看板をくぐり、扉を開ける。
扉が音を立てると同時に複数の視線が突き刺ささった。しかし、視線が首元の証を見た途端に突き刺すような感覚がなくなった。
入り口のそばに客が数人で飲食できる円形の机が置かれ、その奥に受付場が設置されている。
「No.73、3の件」
周りへ会釈するようにしながら、受付場へ向かい、要件だけを伝えた。
「かしこまりました、2階1室での対応です」
受付嬢に言われた通りに受付横の階段を上がり、通路一番手前のドアノブを握る。
質素な部屋はそこまで広くなく、背の低い長方形の机を挟んで向かい合うように椅子が置かれており、入り口左側の椅子に腰をつけた。
「どうも、どうも」
腰をつけるのと同時に扉を開けた執事の格好をした細身の男が会釈句をして、反対側の席に着く。
「早速ですいませんが、本題を願います」
「その前に、商会を疑っているわけではないが、首飾りの裏を見せて頂けますかな?」
こちらの話を遮られげんなりするが、顔に出さないように気をつける。
首飾りを反転させ、男が納得したように頷いたのを確認し元に戻す。
でも、確認が必要ってことはあまりこちら側には近くない人間ってことかな。
「目標の期限は半年、方法はお任せします。詳しくは書類を確認していただけますかな」
「わかりました、書類の処理は任せください、支払いは?」
「前払いで半値、成功報酬でもう半値これでどうですかな?」
「わかりました」
うーん、この前払いは組合への紹介料でほぼ消える。なんとも悲しいことかな。
「報酬、微妙ですかな?」
「あ、いえいえそんなこと無いです」
おっとと、危ない危ない欠点の一つ、考え事が顔に浮かぶを発動してしまっていた。
「あ、そうだ、書類に署名をお願いします」
男がさらさらと流れる様に名前を署名した書類を受け取り、そこに魔力を注ぎ込む。すると文字が銀色に光った瞬間に跡形もなく消えた。
「以上で契約成立です、成功後に証としてこの書類をお送りしますので、受け取り次第焼却願います」
「ふむ終わりですかな、書類を受ければ報酬も送られるでしょう」
男は立ち上がり、服装を正すと警戒する様に部屋を出ていった。
ガーデフィン学園か、頑張れば今日中に片付きそうかな。
思ったよりも長い期限に疑問を感じつつ方法を思案する。
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