長い一日 昼

「ただいま」「帰るさね」


 入り口の扉を勢いよく開け放ち、帰ったことを主張した。


「え、おかえりは?」


「ここは店さ、店じゃなかったとしても、お前の家でもないさ」


 物静かな店内に店主らしきメガネの知命ぐらいの女が慣れたように淡々と答える。


「だれも...」「あ?」


 言葉を遮るようにして冷淡にされど、荒々しく言い放たれる


「まあまあ、例のもの買ってきたから、いつものあれ作ってよ」


「今回の5錠作ったら最後さね。正直言ってあんたは才の...」「大丈夫、わかってるから」


 今度はこっちから遮るようにビズを渡す。

 女は悲しそうな顔を一瞬見せたが、直ぐに商人の顔に戻る。


「半時もあれば作れるさ、店内でもみてな」


「わかった、座って待ってるよ」


「回復薬でも見て...いや、なんでもないさ」


 僕のことを理解してくれている人がいることがありがたくて、うんうんと一人になった店内で頷く。


「冒剣者は国と剣を愛し、国を守るもの、冒険者は冒険と金を愛し、己のみを守るものとはよく言ったものだな」


 赤茶色の髭を胸の上辺りまで蓄えた大男が豪快に笑飛ばす


「お前みたいな奴を入れるのはここぐれーだろーないいぜ、試験してやる」


「ありがとうございます」


 所々破れた服を着て、弱々如く辛うじて返事ができている状態の少年が答える。


「実力が無い場合は不採用だ、受かったとしても依頼に失敗したりしたら、おめーに請求がいくからな」


 よく響く大きい声で、男が試験場と呼ぶ場所で説明を受ける


「...はい」


「じゃあ、始めるぞ」


 男は言い放ち、間髪入れず持っている長剣を振り上げた瞬間、頭に衝撃が走る。


 警戒するように見渡すと、メガネをかけた女が左手に小袋、右手に拳を作っている。


「ごめん、寝てた」


「それはいいさ、流石に五回も呼べば起きるさね普通」


「そうだね」


苦笑いしながら、袋を受け取る


「てか、足りてた?」


「少し足りないが割り引いてやるさ」


 常連へのサービスってやつだと言わんばかりの顔をする。


「ありがとう、お礼はまた」


「またがあればいいがね、まあ、次は回復薬でも買いにくるさね」


 その言葉を尻目に路地へと出る

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