長い一日 始まり

「眩しいな」


 呟く物憂げな空色髪の少年は、大通りから外れた路地裏で集団を眺めていた。


 第一防壁から城下街が広がる第二防壁までを直線で繋ぐ大通りの中央を開けるようにして、住民たちが奮起している。そこを、国家直属冒剣者団、世に言う「国剣」の複数組が連なって意気揚々と王城へ行進していく。


 ガーデフィン国から南東に位置する森にて大量発生した邪獣の討伐に出国した国剣を出迎えるため住民や、見物に他国からも人が集まっており、凄い盛り上がりを見せている。


「あ、そう思えば」


 そそくさと少年は大通りとは反対方向へ少し進んだとこに位置する店に入って行った。


「いらっしゃい」


 店に入ると簡素な服を着た小太りな男が無愛想に迎える。


「どうも」


「はぁ、冒険者か」


 挨拶したと同時に少年を見た男が露骨にに嫌な顔をする。


 その対応に慣れた様子で会釈をして、目当ての商品を探して店内を見渡す。


 はぁ、冒剣者と見分けるためにこんなもの首につけてるからだよ。

 白い下地に黒い文字で「七十三」と書かれた首飾りを触りながら考える。


 店内を一周見渡し、店主の男に話しかける


「すいません、十三番ありませんか?」


「ねーな、他の店を当たってくれ」


「ビズならあるけど?」


「現物を確認してからだ」


 顔色を変えずに続ける店主に淡々と返答されているけど、対応してくれるそうだ。


 帯革に付いている小物入れから小包を取り出し、カウンターテーブルへ広げる。


「少し待て、取ってくる」


 男は座りながら、店主の後方にある扉へ指を刺して透かさず立ち上がり奥へ入っていく。


「ほら、現物確認しな」


 カウンターに握り拳一つ分の小袋が置かれる


「ところで、十三番ってなんですか?」


「は?知らねーのに買うのか?」


 あり得ないと顔に書いてあるような表情を店主がする。


「え?あ、はい。薬師に買ってこいと言われまして」


「はぁ、心臓だよ心臓、魔縮石を抜いて無いやつを結晶化したやつだ」


「それっ...」「うるせぇ、さっさと持って帰りやがれ」


 喋ろうとした途端に商売の邪魔だと言われ、追い出された。


「次はあそこかな」


 誰に言うでもなく、一人ポツリと呟き歩き始める。

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