第4話 追跡と疑惑

香織と藤田は、公衆電話の映像に映っていた松田和也を追跡するために、手がかりを探し続けていた。二人は松田の居場所を突き止めるため、彼がよく出入りする場所や知り合いについて調査を進めることにした。


門司港の街は夕方に差し掛かり、空はオレンジ色に染まっていた。港に面したカフェで香織と藤田は再び作戦を練り直した。


「映像から判断すると、松田は何か重要な情報を持っているに違いない。彼が美沙に何を伝えたのかを知る必要がある。」香織がテーブルに広げた地図を見つめながら言った。


「そうだね。彼がよく行く場所を洗い出して、一つずつ確認してみよう。」藤田が頷いた。


二人はまず、松田がよく訪れるという地元の居酒屋「たちばな」に向かうことにした。居酒屋は地元の人々に親しまれ、温かい雰囲気が漂っていた。カウンターには常連客たちが談笑しており、その中に松田の姿があった。


「彼がいるわね。まずは様子を見ましょう。」香織が静かに囁いた。


二人はカウンターから少し離れたテーブルに座り、松田が店を出るのを待つことにした。しばらくすると、松田が店を出て歩き始めた。香織と藤田は彼の後を慎重に追いかけた。


松田は港の倉庫街へと向かい、古びた倉庫の一つに入っていった。香織と藤田は少し離れた場所から様子を伺いながら、松田が倉庫の中で誰かと話しているのを見つけた。


「何か怪しいわね。近づいてみましょう。」香織が藤田に合図を送った。


二人は倉庫の影に隠れ、松田ともう一人の男が話しているのを盗み聞きした。


「美沙のことはどうなっている?彼女はまだあのプロジェクトの秘密を知っているのか?」もう一人の男が問いかけた。


「心配するな。彼女はもう黙っている。警告はしたが、彼女が何かする前に対策を打っている。」松田が答えた。


「でも、もし彼女が真実を暴こうとしたら、我々の計画はすべて台無しになる。確実に彼女を見張っておくんだ。」男は冷たく言い放った。


その言葉を聞いた香織は、松田が美沙に関与していることを確信した。彼らが何か大きな計画を隠していることが明らかになった。


「聞いたわね。彼らは美沙さんを何かの計画に巻き込んでいる。」香織が藤田に囁いた。


「このままでは彼女の命が危ない。松田に直接話を聞く必要がある。」藤田が同意した。


二人は松田が倉庫から出てくるのを待ち、再び後を追った。松田が人気のない路地に差し掛かったところで、香織が声をかけた。


「松田和也さん、少しお話を伺えますか?」香織が静かに言った。


松田は驚き、振り返った。「誰だ、お前たちは?」


「私たちは探偵です。中山美沙さんの失踪について調査しています。あなたが何か知っていることを教えてください。」香織が名刺を差し出しながら答えた。


松田は一瞬戸惑ったが、すぐに冷静さを取り戻した。「美沙のことは俺には関係ない。もう彼女には関わりたくないんだ。」


「でも、あなたは彼女に警告をしたと聞いています。彼女が何か大きな計画に巻き込まれていることを知っているのでしょう?」藤田が追及した。


松田は深いため息をつき、諦めたように話し始めた。「わかった。実は、美沙はあるプロジェクトの秘密を知ってしまったんだ。その計画は町の再開発に関するもので、彼女はその中で不正が行われていることを知ってしまった。俺は彼女に警告したが、彼女は真実を明らかにしようとしている。」


「具体的にどんな不正が行われているのですか?」香織が尋ねた。


「それは…プロジェクトの資金の一部が不正に使われているんだ。彼女はその証拠を掴んでいるかもしれない。」松田は悔しそうに答えた。


「ありがとうございます、松田さん。これで少しでも彼女を助ける手がかりが得られました。」香織は感謝の言葉を述べた。


「美沙を助けてやってくれ。彼女はただ真実を明らかにしたいだけなんだ。」松田はそう言い残し、去っていった。


香織と藤田は再び港の景色を眺めながら、次の手がかりを考えた。


「次は美沙が持っているかもしれない証拠を探しましょう。彼女がどこにその証拠を隠しているのかを突き止めなければ。」香織が決意を込めて言った。


「そうだね。美沙の家や職場を再度調べてみる価値がありそうだ。」藤田も同意した。


二人は美沙の家に向かい、彼女の部屋を再度調査することにした。門司港の静かな夜が、二人の探偵を新たな冒険へと誘っていた。

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