第5話 秘密のプロジェクト
香織と藤田は、美沙の家に向かう前に、一息入れるために港のベンチに座って作戦を練り直していた。夕焼けが水面を染め、美しい光景が広がっていたが、二人の心は美沙の安全と謎の解明でいっぱいだった。
「美沙の家を調べる前に、彼女の職場でもう一度聞き込みをしてみよう。何か新しい手がかりが見つかるかもしれない。」香織が提案した。
「そうだね。職場の同僚たちからもっと詳しい話を聞けるかもしれない。」藤田が同意した。
二人は再び美沙の勤務先である広告代理店に向かい、受付で田村由香に再度会うことができた。由香は二人を会議室に案内し、落ち着いた場所で話をすることにした。
「美沙の家にはこれから行くつもりですが、その前にもう少し話を聞かせていただけますか?」香織が切り出した。
「もちろんです。何でもお話しします。」由香は真剣な表情で頷いた。
「美沙さんが巻き込まれているプロジェクトについて、もう少し詳しく教えていただけますか?」藤田が尋ねた。
「美沙は、町の再開発プロジェクトに関わっていました。そのプロジェクトは、門司港の古い建物を修復し、新しい観光スポットを作る計画です。美沙はこのプロジェクトに非常に熱心で、細部にまでこだわっていました。でも、最近は何かに怯えているようで、仕事に集中できていないようでした。」由香は説明を続けた。
「具体的には、どの部分が問題になっていたのか、心当たりはありますか?」香織がさらに質問した。
「美沙はプロジェクトの資金運用に関して疑問を持っていました。特定の予算が不明瞭で、どこに使われているのかがはっきりしなかったんです。それで、彼女はそのことを調べ始めたんですが…」由香は言葉を濁した。
「その後、彼女が何か具体的な証拠を見つけたのでしょうか?」藤田が尋ねた。
「はい、彼女は確かに何かを見つけたと思います。でも、その内容を詳しく話してくれませんでした。ただ、何か重大なことを掴んだようでした。」由香は心配そうに答えた。
「ありがとうございます、由香さん。これで少しずつ真実に近づいている気がします。」香織は感謝の言葉を述べた。
二人は美沙の家に向かい、彼女の部屋を調査することにした。美沙の家は静かな住宅街にあり、彼女の部屋は整然と片付けられていた。香織と藤田は慎重に部屋の中を調べ始めた。
「どこかに証拠が隠されているはずだわ。」香織が呟いた。
「まずは書類から調べてみよう。」藤田が提案し、二人はデスクや引き出しを確認し始めた。
デスクの引き出しの奥から、美沙の手書きのメモが見つかった。そこには、プロジェクトの詳細や疑問点が綴られていた。
「ここに美沙が調べた内容が書かれているわ。」香織がメモを読み上げた。「資金の一部が不明瞭な形で使われている。特定の契約書類が隠されている可能性がある…」
「このメモに書かれていることが、彼女が見つけた証拠ね。」藤田が頷いた。
さらに調査を進めると、美沙のベッドの下から隠し箱が見つかった。箱の中には、プロジェクトに関する重要な書類や写真が収められていた。
「これが証拠ね。美沙はこれを見つけて危険に晒されたのかもしれない。」香織が箱の中身を確認しながら言った。
その時、美沙の家のドアベルが鳴った。二人は緊張しながらドアを開けると、そこには美沙が立っていた。
「美沙さん!無事でよかった!」香織が驚きと喜びの表情で言った。
「香織さん、藤田さん…あなたたちが来てくれて本当にありがとう。」美沙は涙を浮かべながら感謝の気持ちを伝えた。
「大丈夫よ、美沙さん。私たちが真実を明らかにするから。」香織は優しく言った。
「でも、まだ危険が続いているわ。あのプロジェクトに関する不正を暴かなければ…」美沙は不安そうに続けた。
「私たちが一緒に解決するわ。まずはこの証拠をもとに、次の手を考えましょう。」藤田が力強く言った。
三人は美沙の部屋で再び証拠を整理し、プロジェクトの詳細を調査するための計画を立てた。門司港の夜は静かに更けていく中、香織たちは新たな決意を胸に抱き、真実を明らかにするための一歩を踏み出した。
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