第4章 闇との戦い
4-1 古代の魔導書
翌朝、エリーナは朝早く、まだ日も昇らない時間に目を覚ました。
昨日の疲れが残っていたがやるべきことがあったため、彼女は静かに身支度を整え、部屋を出た。
リュシアンが言っていた、魔法について書かれている書物⋯⋯それに心当たりがあった。
サラの後を追って禁書コーナーに入った際に見つけた魔導書を思い出したのだ。
廊下を歩いていると、ソフィアとレオナルドが待っていた。禁書コーナーに一緒に来て貰うよう頼んだのだ。
「おはよう、エリーナ。昨日は大変だったわね」
「ああ、そうだね。大丈夫だったか?」
「ええ、ありがとう、二人とも。あの魔導書をもう一度見る必要があるの」
三人は慎重に図書館へと向かった。昨日の騒動で、警備は厳重になっていたが、レオナルドの機転で何とか通り抜けることができた。
図書館の奥にある禁書コーナーに到着すると、三人は息を潜めた。以前来たときと同じように、魔法の結界が張られていた。
「強化されてなければいいけど」
エリーナは深呼吸をして、前回と同じように魔力を集中させた。しばらくの緊張の後、結界が消えていくのが見えた。
「よかった」
ソフィアがほっとした表情を浮かべる。三人は慎重に中に入り、目的の魔導書を探し始めた。エリーナは以前見た場所を思い出し、そこに向かった。
「ここよ」
エリーナが手に取ったのは、古びた革表紙の分厚い本だった。三人は近くのテーブルに座り、エリーナが魔導書を開いた。ページをめくると、複雑な魔法陣や古代文字で書かれた呪文が並んでいる。
「これ、読めるの?」
ソフィアが不思議そうに尋ねた。エリーナは首を傾げた。
「不思議ね。前に来たときは全然読めなかったのに、今は少しずつ意味がわかるわ」
彼女は魔導書に集中した。ページをめくるうちに、エリーナの瞳に再び紋章のような模様が浮かび上がる。
「エリーナ、君の目が⋯⋯」
レオナルドが驚いた声を上げたが、エリーナは気づいていないようだった。彼女は魔導書に没頭し、その内容を吸収していった。
突然、魔導書が淡い光を放ち始めた。そして、エリーナの体も同じように光り出す。
「エリーナ」
ソフィアが心配そうに声を掛けた。しかし、エリーナは応答しない。彼女の意識は魔導書の世界に入り込んでいるようだった。
光が強まり、ソフィアとレオナルドは目を覆わざるを得なくなった。そして突然、光が消えた。
二人が目を開けると、エリーナは魔導書を閉じ、静かに座っていた。
「エリーナ、大丈夫?」
ソフィアが心配そうに尋ねると、エリーナはゆっくりと顔を上げた。その瞳には、今までにない強い光が宿っていた。
「ええ、大丈夫よ。むしろ、すごくすっきりとして気分がいいわ」
エリーナはゆっくりと手をかざし、古代の呪文を口にした。空気がわずかに震え、彼女の前に淡い光が集まっていく。数瞬後、光の中から小さな精霊が姿を現した。
透明な羽が煌めき、まるで星屑を纏ったような姿で優雅に舞っている。精霊の周囲には虹色のオーラが輝き、二人はその美しい光景に目を奪われた。
「これは⋯⋯」
「エヴェリスト家に伝わる精霊魔法よ。今まで使えなかったけど、魔導書を読んだことで使えるようになったの」
精霊に目を向けると、エリーナに反応するように精霊がくるりと回った。その姿にエリーナは微笑みを浮かべた。
「でも、まだ全てを理解したわけじゃないわ。この魔導書には、もっと強力な魔法や、エヴァリスト家の歴史についても記されているのよ」
「じゃあ、もっと読み進める必要があるのね」
その時、図書館の入り口から物音が聞こえた。誰かが来たようだ。
「まずいな、早く戻らないと」
エリーナは魔導書を元の場所に戻し、三人は急いで禁書コーナーを出た。結界を元に戻し、何事もなかったかのように図書館を後にした。
外に出ると、朝日が昇り始めていた。新しい一日の始まりだ。
「エリーナ、これからどうするの? 魔導書は手に入れなくて大丈夫?」
「もう魔導書の内容は全て私の中にあるわ。少しずつ理解を進めて実践していく。そして、私の力を完全に目覚めさせるわ。それが、学院長を止める唯一の方法だと思うの」
「僕たちも協力するよ。一緒に頑張ろう」
三人は互いに頷きあい、それぞれの部屋へと戻っていった。
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