3-7 真実

「片付けの前にまずは学院の安全を確保しないと」


気を取り直したリュシアンは率先して指示を出した。エリーナたちは、すぐに行動を開始する。


「レオナルド、警備を強化するよう騎士団に伝えてくれ。不審な動きがあれば即座に報告するように。ソフィア嬢、他の生徒たちの安全確認と状況説明を頼めるか」


レオナルドとソフィアは了承し、急いで教室を出ていった。


「エリーナ、俺たちは学院長室を調べよう。グレゴリーの意図を探る手がかりがあるかもしれない」


エリーナは同意し、二人で学院長室へと向かった。


学院長室に到着すると、扉は施錠されていなかった。慎重に中に入り、二人は手分けして部屋を捜索し始めた。リュシアンが本棚を調べる中、エリーナは机の引き出しを開けていく。


突然、エリーナが声を上げた。


「リュシアンさん、これを見てください」


彼女が手にしていたのは、古びた羊皮紙だった。そこには複雑な魔法陣と、判読しがたい古代文字が記されていた。


リュシアンが近づき、羊皮紙を覗き込む。


「これは⋯⋯禁術の魔法陣か? しかも、かなり強力なものみたいだ」


「でも、なぜグレゴリー学院長がこんなものを⋯⋯」


その時、羊皮紙の端に小さな文字で書かれた注釈に気づいた。


『エヴェリストの血を以て、古の力を我が物とせん』


エリーナは息を呑んだ。


「これは⋯⋯私の血のこと?」


リュシアンは深刻な表情で頷いた。


「どうやら、グレゴリーはお前の血統に関する何かを知っていたようだ。そして、その力を自分のものにしようとしていた」


さらに捜索を進めると、グレゴリーの手記が見つかった。そこには、驚くべき内容が記されていた。


「エリーナ、これを見てくれ」


それには、クロウフォード家の歴史と、エリーナの祖先との因縁が記されていた。古代の魔法使いの血統を持つクロウフォード家が、かつてエリーナの祖先と敵対していたこと。そして、その敗北の歴史がグレゴリーの中で恐怖と執着に変わっていったことが綴られていた。


「彼は⋯⋯私の存在を脅威に感じていたのね」


エリーナの呟きに、リュシアンは頷いた。


「そうだ。彼は家系の誇りと、過去の敗北への恐れから、お前の力を封じ、自分のものにしようとしていたんだ」


さらに、グレゴリーが王国の政治と魔法学院での絶対的な権力を維持するために、エリーナを排除しようとしていたことも記されていた。


リュシアンは手帳を閉じ、エリーナの肩に手を置いた。


「エリーナ、君は特別な存在だ。でも、それは君を脅威にするものじゃない。君の力は、みんなを守るためのものだ」


「はい、私は誰かを傷つけるためにこの力を使うつもりはありません。でも、グレゴリー学院長を止めなければ。彼の恐れと執着が、多くの人を危険に晒しています」


「彼が手に入れた禁術の力は危険すぎる。そして、彼の歪んだ考えを正さなければならない」


二人は見つけた証拠を集め、学院長室を後にした。廊下では、すでに他の教師たちが集まっていた。


リュシアンが状況を簡潔に説明すると、教師たちは驚きと怒りの声を上げた。


「我々も協力します。グレゴリーの行為は、学院の名誉を汚すものです。彼の恐れと権力への執着が、学院の理念を踏みにじっています」


グレゴリーの追跡は学院だけにとどまらず、リュシアンの指揮のもと騎士団との連携で行われることとなった。

学院だけの危機ではなく、国全体の問題として捉えられ、エリーナの血統に関する情報もリュシアンを通して王に伝えられた。

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