第19話 反省
天井から生えてきたプロジェクターに第二セット前の休憩時間の様子が映される
水を飲みながら第二セットの作戦を話し合っている中聖だけはホワイトボードに何か書いていた
「勝てるのは聖が戦うことだよな」
「それは…少なくとも第三セットになってからだろう。第二セットから聖に無理はさせられない」
「一旦、トスを散らばせようか、僕はサーブに全力を注ぐよ」
「ぼ、僕もブロック頑張るよ!」
「僕はレシーブだね!」
みんなそれぞれの思いを語っている中、智だけは下を向いていた。何かあったのだろうかと智に近づこうとすると蓮に声をかけられた
「聖、第一セット無理してないか?」
「全然、無理も何も90%くらいでやったからね」
「それはどのくらい持つんだ?」
「さっきのセットみたいな負荷だったら、悪いけど第三セットの途中くらいまでは持つんじゃない?」
「先ほどのような負荷だったら…か」
蓮は僕に合わせていた目線を植木ベンチ、特に根津に視線を合わせる。彼らは全員でタブレットを覗きながら監督も含め話し合っていた
「なーんか一筋縄ではいかなそうな雰囲気あるよね」
「第一セットは聖一人に負けたといっても過言ではないからな。年上のプライドというものがあるんだろうな」
「そうねー」
話をいったん止めて智の方を見る。智の近くには黄金と大がいて楽しそうに話していたから大丈夫か
「次のセット頼むね?なんかいやな予感がする。僕は休みのターンなんでしょ?」
「そうだな、聖には万が一に備えてほしい」
「ん、よし!みんな聞いて~」
僕の声にみんな話を止めてこちらに集まる。みんな集まってから先ほどから書いていたホワイトボードの中身を見せる。そのホワイトボードには新しいフォーメーションが書かれていた
―――――――――
聖 黄金 蓮
剛 ネコ 智大
そのフォーメーションじっと見ていた蓮がつぶやく
「これは…俺がアウトサイドヒッターになっているのか?」
「そして、僕がミドルブロッカーか」
「そう!こっちの方がよさそうだなって思って!今のところ僕らってローテーションの練習ってあんまりしてないでしょ?今なら変えられるかなって!」
「俺は…変わってねぇな、ならいいか」
「これ、僕の方がこんがらがりそ~」
「では、これで出してくるな」
蓮が高木さんに紙を私に行っている間、智と黄金と大は軽くトス合わせをしていた。蓮からの謎の視線をよそに高木さんの笛が鳴る。エンドラインに並びに行くと相手コートさんのメンバーが違う気がする。もう一度笛が鳴り根津さんとの握手をすましてからコイントスをする。結果は…こちらのサーブ権だ。やったね!
「ねぇ根津さん、メンバー変えました?」
「本選前に見せたくなかったけどさすがにこのままじゃ面目丸つぶれなんでな」
「へぇそれはそれは…残念だな」
「…何がだ」
「僕、この試合手加減しないとなの」
「は!?」
「聖!」
根津さんが目も口も大きく開いて驚きを表現している。今日初めて会ったけど面白い人だな~でも蓮に呼ばれちゃったし行かないと
「ばいばーい」
「は?ちょっとおい!…あ~もう…」
蓮から水筒を受け取り少しだけ含む
「すまない、すこし長かったから呼ばせてもらった。何を話していたんだ?」
「ん~何でもないよ~」
「…そうか」
蓮に水筒を渡してから植木ベンチを覗きこむ。根津さんはさっきの顔はどっか行ったようで真剣な顔で監督さんの話を聞いている
「……」
「聖?」
「ん?試合始まるね」
「あ、あぁ」
僕と蓮は先にコート内に入る。案外蓮は緊張していないみたいだ。黄金もあまり表情は変わってないと思うし一番緊張しているのは智かな。急な変更で少し戸惑っているのかも?まぁ修正してくれるでしょ今回は手助け禁止くらいの気持ちでいかないとね!チームになるなら厳しくいかないと!成長してほしいし…
みんな話しながらコート内に入ってくる中、智は下を向きながらコートに入ってきた
「私にできるのだろうか…」
蓮さんも聖様に追いつこうと日々努力しているし才能もある。黄金さんも…サーブの一点だけでも全国から注目されている。他の皆さんも全国に通用する力を持っている。それに比べて私は…あの人のただの下位互換だ。あの人に負けたくないがために聖様を利用しているだけ…そんな私に聖様が満足するトスを戦略を立てられるのか…?
そう考えながら定位置に立つ。考え込んでいるのが伝わっているのか蓮さんに声をかけられた
「おい、集中しろ」
「わかってますよ…」
「わかっているのなら」
蓮さんの話の途中で笛が鳴った。いまいち集中できない。失敗した後のことを考えてしまう。こういうところも彼に勝てない理由なのだろう
ボールを叩く、少し詰まってしまいネットを超えることができずにこちら側のコートに落ちる
ミスだ。ミス、会場も風も何も関係ない私が原因のミス…
「何をやっているんだお前は!もう試合は始まっているんだぞ!」
「まぁまて、智も戸惑っているんだ。次はやらないさ」
「智くん、次あるからね」
「…申し訳ございません。次は必ず…」
黄金さんや大さんに励まされながら前衛より前に出ないギリギリまで前に行ったとき、聖様がネットに引っかかって床に落ちているボールを拾い上げた。その時つぶやいた言葉が聞こえてしまった
「智はこういうこと起こすんだ。攻めたわけでもないだろうに…」
まずい、何とか挽回しなければ、じゃないと私のせいで聖様がバレーを…
服を握り締めながら考え込んでいると黄金さんに声をかけられる。その顔には少し焦りがにじんでいた
「……智、焦るな。落ち着かないとお前らしくないぞ」
「はっすいません。なんとか持ち直します」
バレーは25点で勝敗が決まる。一点取られても取り返せばいい。そう、あせるなまだ始まったばかりなんだから…
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