第15話 状況を読み取る
「やばいやばい、ほんとに死ぬ。こんなに疲れると思ってなくて朝そんなに食べてないんだよ~」
どうする、どこ入れる?いや入れるんじゃない決めよう。点が欲しい。にしてもどこに?守備が甘いとこ?レシーブが苦手な人はえぇっと、肉食べたいな肉、朝あっさりしたの食べたし…
「違う違う!」
えーとえーと、あ、笛なっちゃった、とりあえず…迷ったらリベロさん!
僕が打ったボールは焦っているのからなのか、少し下をたたきすぎたようで狙っていたリベロさんの真横をすり抜けていく。流石にアウトかとうなだれていたら
ニャーニャー
スピーカーからネコの音、インの音が響いた。思わず顔を上げて飛び跳ねる
「やったやった!正直アウトだと思ってた!」
反対側では根津さんがリプレイを見て騒いでいた。どうやら一センチもかかっていないぐらいのギリギリでインだったようで、カメラでなかったら相手の点になっていただろう。ラッキーで得た点だけど、一点は一点。
「この点で逆転することができた」
「あぁそれに、植木チームはタイムアウトは取れないだろうからこのまま押し切ればいけるぞ」
「蓮クン、相手はまだタイムアウト使ってないよ?」
「今相手が持っている最大のアドバンテージわかるか?」
「アドバンテージ?」
「正セッターがいないことかな?」
「いや違う」
僕は高木さんからボールを受け取り、エンドラインまでゆっくりと歩く。何やら蓮が授業をしているようだし少しでも時間を稼いだ方がいいだろう、靴紐でも結びなおそうかな…
「セッターの件は聖がカバーしてくれているしな。もっともサーブがほとんどなんだが。さて、他になんだと思う」
「アドバンテージって要するに相手が勝っているところだろ?じゃあ経験とかじゃね」
「でもそれってタイムアウトを取れない理由にはならなくない?」
「あぁたしかに…こういうのがわかるやつがベンチにいるんだよな…」
「だから聞いているんだろう。考えろ」
「……あ、わかったかもしんない。聖クンの腹ペコ?」
「そうだ、タイムアウトを取ってしまったら何か食べるかもしれないしな、聖が普段通りの力を発揮できない今を責めるしかないんだ」
「な~るほどね。とりたくてもとれないわけだ」
「だから智君はさっきからお菓子の準備をしてたんだね」
「はぁ!?あいつそんなことも考えてんのかよ…」
「あとは単に休憩を取らせたくないという面もあるだろうな、さぁこれ以上の時間稼ぎは警告をもらうだろうからさっさと戻れ」
「へいへーい」
「助かった~さすがにこれ以上はね…」
僕は時間稼ぎにボールをいじったり靴紐を結びなおしたり…やれることやってたからそろそろきつかったんだよね…時間稼いだせいでおなかがへこんできた気がする、もうじき背中とくっつくだろうな…
ボールを構えて前を見る。そしてみんなが位置についた瞬間に笛が鳴った。次は根津さんにしよっと
「っあごめん!!」
「聖!?」
今回もすっぽ抜けちゃってサイドライン寄りへ、今度は神に恵まれず犬の鳴き声がスピーカーから聞こえた。流石に二連続はうまくいかないか…
「ごめん、さすがにね…」
「いや、本当に助かった。聖がいなかったらそのまま負けてたよ、おかげでこっちにやる気は十分だ」
「それはそれは、頼もしいことで」
そう二人で笑っていると剛からさっさと位置につけといわれてしまった。蓮は僕に対して失礼だと怒っているけど剛の顔を見ると、僕の方は見ておらず相手サーバーをじっと見ていた。その口角は上がりっぱだ。多分スパイクが打ちたくてたまらないんだろう。まだ怒っている蓮を鎮めてから剛の背中に手を置いて囁く
「次、上げてあげるよ」
僕の言葉に剛は素早く振り向いて大きな声で
「本当か!よっしゃ、はやくこーい!」
といった。囁いた意味がなくなっちゃったよ…
相手サーバーは何やら緊張しているご様子。ネコも、蓮もやる気満々だし楽させてもらおうかな
あとがき
プロローグを追加しました。よかったら見ててってください
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