第4話 練習試合前の戦い

第4話

待ちに待った練習試合の日、この一週間フォーメーションの確認や攻撃の確認を沢山してきたけど、まだまだ穴はあるしそもそも連携が上手くいかないところは数多くある。そこをどこまで詰められるのか楽しみだな

相手が来るのはあと一時間後、その間に準備やらを済ませて置かないと


「おい待て。まだ音は犬猫の鳴き声か?」


「安心してくれ、今回はスクリーンにリプレイが流れる」


「それなら、まぁ」


「線審が居ないなんて快適だよねぇ」


「皆さん、ウォーミングアップを始めてください。相手さんが来るまで3対3やりますよ」


「お!いいねぇ。今回はちゃんと僕のを持ってきてるし楽しみだなぁ。また審判引かないといいけど…」


「前回審判だった人は必ずどちらかのチームに入ることになってます。ですから先に引いてください」


「やったー!」


ウォーミングアップを終わらせ、くじを引くと紅チームだった。僕が引き終わり、他の人たちもくじを引くと今回の審判は黄金で僕のチームは蓮と剛になった。相手チームはセッターとリベロが揃っているが攻撃は大しかいない。大丈夫かこれ?


「聖!また同じチームだな!剛にトスができるとは思えんし俺がセッターをやろう」


「言い方ってもんがあんだろおいこら」


「コラコラ喧嘩しないの、怒りをぶつけるのは相手コートに!ね?」


「それでアウトにならなければいいがな」


黄金によってコイントスが行われサーブ権は相手に渡ったが取ればいっか


「そろそろ始めるぞ、守備につけ」


黄金が笛を構える


「だってさ、やろうか。前回動かなかったし僕が取るよ」


「は?どういう?」


「フローターならどこにとんでもだいたい間に合うし」


「流石聖だな。じゃあここで待ってる」



笛がなる。俺はセッターの定位置に立ち聖のレシーブを待つ。大のサーブは聖側のサイドライン付近に飛んだ。ほとんどアウトだが聖は丁寧に上げた。体勢が崩れる形のレシーブだったが文句なしのAパス。ボールを確認した後2人の体勢を見てみると2人とも助走距離は確保していた。あのレシーブから一瞬で立ち上がったらしい。剛には悪いが最初は聖と決めていたんだ。大もそれがわかっているようで聖を警戒して剛のジャンプにも反応しない。俺は本職じゃないから聖の飛ぶ高さは分からない。でも選抜合宿の時に聖が言っていたんだ


″味方から託されたトスはどんなトスだろうと打ち抜く。それがエースの役目だ。だから僕を信じて″


と、前にあった時から2ヶ月は立っているが同じコートに立ってスパイクを打つところをまだ見ていない。だから見たい、俺が憧れた聖を見たい

なるべく高く素早く上げる。大もそれに追いつこうと走るが聖は大よりも低いのにも関わらず大よりも早く高く飛んだ。そのまま智と猫田の間に打ち込む。床でバウンドしたボールは入口の方まで飛んでいった

そんな凄まじいスパイクを見せた聖は力の加減とブロックの避け方が甘いと反省していた。全国レベルのリベロが動けなかったにも関わらずだ。どこまで行っても向上心を忘れないその姿勢も惚れ惚れするほど美しい

俺は聖に駆け寄って背を叩く


「流石だな聖は。マークされても関係ないんだな」


「いや、無理矢理避けたね。でもいいトスだったよ。ありがとう」


「おい!俺の方見もしなかっただろ。そのせいで聖にマークが着いたんだろうが」


「聖はそれでも勝てるからいい」


「託してくれてありがとう。サーブどうする?僕が全部やってもいいけど」


「聖のサーブは見てぇけど…」


「安心しろ、次からは剛にもトスを上げる。最初は聖が良かっただけだ」


「じゃあ聖が打ってくれよ。誰を狙うんだ」


「ネコだよ」


「フンッわかってないな。聖は相手の最善を見たいんだよ」


「あ〜はいはい。早く定位置についてくださーい」


剛に背を押されネット際に連れていかれる。聖は智からボールを受け取ったあと、手の上でボールを遊ばせながらエンドラインまで歩く。そのまま審判の方を向き開始の合図を待っていた。聖のプレイは万能の一言に尽きる。ジャンフロもスパイクサーブも打てる。遊びでバナナサーブも打っていたこともあった。白チームは3人レシーブで挑むが果たしてどうなるのか


笛がなった。2歩下がってからボールを上げる飛び上がった。轟音と同時に相手コートにボールが飛ぶ。その位置は智と大の間、猫田の少し前。猫田が飛び込みネットスレスレで返ってきた


「チャンス!俺が取る!」


中央で上げたボールをそのまま剛にセットする。大も着いてくるがドシャットとは言わず掌にあたり弾かれる。エンドラインまで飛んだボールを猫田がAパスで繋げる。智のトスで大がスパイクするはずだから大の位置を確認して…智はまだトスを上げていない、どうやって飛ぶか…


この時聖は智のトスに合わせるように飛んでいた


智が選択したのはフェイント。大の位置と俺の位置、それらを計算してフェイントを選択したみたいだ。しかし聖はそのフェイントに合わせて飛び、打ち抜いた。智は普段の涼しい顔を崩して目を見開いていた。猫田はオーバーネットだと声を出し、皆でスクリーンの前に集まってリプレイを見ることにした


智が上げたボールがネットを超えた瞬間にいつもより低い高さで飛んでいる聖が打ち落とす。フェイントのボールに合わせて飛ぶという神業を披露した

その瞬間を目の当たりにした俺たちは敵味方関係なく歓声を上げて聖を褒め称える。褒められた聖は顔を赤くしてボールを持ってコートに俺たちを引っ張るがコートに着く前に入口が開いた。どうやら練習試合をする高校が到着したようだ

今回戦うのは、植木高校。県大会常連校だが生神聖世代で有名な選手は居ない。今日戦うのは3年生。2年間連携を積んできた相手とほぼ即席チームの俺たち。どこまで戦えるのか確かめる日だ


相手チームの挨拶の声が体育館中に響く。聖の笑顔が輝いて見えた



あとがき

風邪気味になったので少し少なめです。エアコンで喉がやられたのかもしれませんね…

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