第2話 月天高校男子バレー部!全員集合!

「あー!やっと来たぁー!」


コート内でストレッチしていた金髪の小柄な男がこちらに走ってくる

知り合いばかりと言っていたけれど、金髪の子の知り合いはいないと思うけど…だけど声は聞き覚えがあるんだよなぁ…


「ひっさしぶりだね!聖くん!僕のこと分かる?」


「あ!平八か」


「ちょっとそれ可愛くないから呼ばないで言ってるじゃん!猫ちゃんとかにしてよ!」


「あぁごめんごめん。そうだったね、えーとネコ?」


苗字を縮めて呼ぶと満足したようで、黄金の方に声をかけに行った

彼は猫田 平八。全中で戦った千葉代表校にいたリベロでどんな強打もAパスで返し、弾いたボールも限界まで追いかけコート内に返す。都道府県対抗戦では別ブロックで出会うことは無かったけれど強い印象に残っている子だ

中学校時代は黒髪だったが、金髪に変わっているから気付けなかった


「おいネコ!何聖達を引き止めてんだよ!早くこい!」


「うるっさいな!ワンちゃんは!キャンキャンするのはいい加減にしてよ〜?」


「だっからワンちゃんって呼ぶなって言ってんだろが!……平八くんよぉ!」


「ちょっと!やめてって言ってるでしょ!」


「じゃあまずお前がやめろよ!」


「うるさーい」


そう言って壁側の荷物がまとまっている所でなにか作業をしている赤い髪の男に猫田が飛びかかって行った

赤髪の知り合いを脳内検索していると、智が教えてくれた


「あの方も猫田さんと同じで髪を染めたのです。茨城代表の犬塚 剛さんですよ。覚えていますか?」


「剛…あぁ!確かに中学の頃からモヒカンとかやってたね!そう考えると落ち着いた髪型になったのかな?」


「まぁその分色が過激になったということで」


犬塚 剛。全中、都道府県対抗戦と戦うことは無かったが観戦はしたことある。ポジションはWSで力任せのスパイクが多く、アウトになることもあるがその分威力はお墨付き。正直当たりたくない子だった。レシーブした腕がアザになってる子もいた。

2人の小競り合いを遠くから眺めていると


「み、みんな、昼は着替えてから食べる?それともこのまま…?」


後ろから声をかけられた。声をかけられるまで気づかなかったため、驚いた声を出しながら後ろを振り向いたら、こちらより大きな声を出して巨体を縮こませる男がいた。その巨体を一目見て分かった。この子、陰影 大だ。名は体をあらわすとはよく言うけれど、ここまでとは…中学時代はチームメイトとスキンシップも良くしていたはずだが僕たちもいつかはそこまでいけるのだろうか

この子は陰影 大。埼玉のMBで中学時点で200cmを越えておりまだ伸び続けているらしい。観察眼が凄まじく巨体を活かした大きな一歩で奇襲攻撃にも間に合う事ができる

そういえば昼ご飯の話をしていたなぁ、と時計を見てみるとなんと12時30分だった!時間を確認し昼ご飯が近づいてきていることがわかるとなんだが空腹を感じ始める。大も僕たちに昼ご飯のことを聞いてきた事だしきっとお腹がすいているんだろう


「ふむ…何かリクエストがあるなら作らせるが何かあるか?」


「なーんも、食べられるならそれでいいかな」


「そうか、ならこの近くに定食屋がある。高木に運転を頼もう」


「おーい!犬猫コンビ!飯食い行くぞ!こっち来い!」


「あーい」


蓮が2人を呼び寄せてからリムジンに乗る。これで定食屋行くのはちょっとアレなのでは…?まぁいいか、面白いし。

車内では色々な話で盛り上がった。みんな東京近くの県であるため家から通ってるのかどこかに住んでいるのか。この月天には寮は無いが近くに学生寮はある。そこに住んでいる子もいるらしい

着いた。体育館がある山の麓付近にある店ですぐに着くとこができた。昼時が終わったからか車は止まっていない

外に置いてあるメニューは美味しそうなものばかりで入る前からヨダレが止まらない


「早く行こーよ!」


「そうだね!急ごう!」


「聖くんは何食べるー?」


「焼肉定食とか美味しそう!」


「あ、おいお前ら!…はぁネコがすまん」


「私たちはゆっくり行きましょうか」


中に入るとおじさんとおばさんの2人が迎えてくれた。どうやらそろそろ休憩のつもりだったらしく片付けをしていたところだったが暖かく迎えてくれた


「おや、可愛い子と大きな子だね。兄弟かい?」


「同い年だよ〜おじさん!後で5人来るから座敷でいい?」


「これは失礼したね。部活の仲間かい?」


「そうだね。良ければおすすめとか教えて欲しいのだけど」


「うーむ1番人気はチャーハンだよ」


「えぇ!?定食屋なのに?」


そのままメニューで迷っている時、カランコロンと入口が開き5人が入ってきた。5人とも外のメニューで食べるメニューを決めていたようでスラスラと注文する


「で?君達は?」


「どうしようか」


「チャーハンでいいんじゃない?1番人気なんでしょ?」


「そうだね。じゃあチャーハン2つ」


「あいよ、ちょっと待っててな。同じくらいに出してあげよう」


「ありがとー」


調理場を覗きながらまつ。こういう料理している所をみるのはなんか楽しいんだよね。ウキウキで眺めていたら蓮に首を掴まれて席に戻された


「仕事の邪魔はするな。全く、俺達も話し合わなきゃいけないことが沢山あるんだぞ」


「邪魔してないよぉーそれに話さなきゃいけないことって?」


「これからの練習計画はもちろん、戦略を詰めなきゃいけないだろ。そこら辺は智に一任するとはいえ全員が知っておかなきゃいけない」


「え?なんでそれを僕が聞く必要があるの?」


ポイッと席に投げられ座らされる。蓮が詰めるように座ってきて窓側に智、真ん中に僕、通路側に蓮が座った


「聖が作戦の要なんだから当たり前だろう?そもそも君がいなきゃこのチームは回らない」


「い、いやだから僕は」


「聖様、お願いします。私達にはあなたが必要なんです」


「え?智?」


「ゼロからインターハイに出たとなれば多くの人から注目を得ることが出来ます。そうすれば様々なチームから声をかけていただけるかもしれません」


「そうだな。俺は将来海外のリーグに行きたいと思ってる。だからこそ1年からキャリアが欲しいんだよ」


「ワンちゃんはバレーしかできないもんねー」


「うるせぇ」


「ひ、聖くんがいないと僕たちは……その…」


「僕がいないと…」


「頼む、聖。一緒にやってくれないか?」


全員が僕の方を見てくる。僕が冗談だと思っていた話は全部本当だったらしい。僕を追いかけてきたのも、7人でバレーをやることも、インターハイを目標にしていることも、全て。思えば智がゼロからインターハイを目指していると蓮に伝えていたことだったり僕のバレー引退宣言を遮ってたり、智が僕を巻き込むためにやっていたことなんだなぁ

みんなと目を合わせてから智を見る

智は何か確信したような笑顔を浮かべて僕の返答を待っていた。この中で一番僕と接していた智にはわかっているんだろう。僕は頼られたら断れないということを

ため息をついてから姿勢を正す


「いいよ、この生神聖。君たちの為に全力を尽くそう。僕の力が君たちの助けになれますように」


6人から歓声が上がった。勉強との両立とか行事とか色々大変なことはあるけれど、この歓声でその不安は全て吹き飛んだ。やはり頼られるというのはいい。今、生きているという感じがする


笑いながら作戦について相談していると7人分の料理が届いた。それぞれのものが美味しそうで少し貰ったりもしたが、チャーハンがいちばん美味しいように感じた。さすが一番人気だ。その後は黄金がクレジットカードで払ってくれてリムジンに乗り込む。そういえば僕練習着持ってないな


「ねぇ僕なんも持ってないんだけどどうする?」


「はぁ!?なんで…って聞かされてなかったんだよな。そりゃ無理か。どーすんだよ智!お前が連れてこようとしたんだろ?」


「あぁ安心してください。ここにいる人たちのサイズにあった練習着一式は揃えておいてもらっています」


「えぇー!僕たちのサイズいつ取ったの?」


「それは僕が頼んで高木に集めてもらった」


「高木さん酷使しすぎだろ」


「僕専属だからいいんだよ。その分の給料は渡してる」


「さて、改めて体育館の設備について説明するよ」


まずはアウトラインについて、インとアウトはカメラで判定する。その場合側面のスクリーンでリプレイを表示することが出来る。またネットタッチやパッシングについても判定することが出来る

強打のレシーブ練習としてバレーボールマシンも3台ある

スパイク練習ではフォームを確認できるカメラがある


なんともまぁ…ハイテクなことで…


「ある程度慣れてきたら観客席に演奏団を招待して大会中の騒がしさにも耐性をつけようと思う。皆全中で慣れているとは思うがやっておいて損は無い」


「ハイハイしつもーん」


「なんだね、猫田」


「スピーカーとかで音楽流してもいいー?」


「……必要ならばスピーカーも設置しよう」


「お前のチョイスちょっとうるさいんだよな。なんというかギラギラしてるというか」


「えーじゃあワンちゃんも流せばいいじゃん」


「はぁ?」


「それなら1人1日でローテーションすれば?」


僕がそう提案すると、ネコに抱きつかれた


「さっすがー聖くん!てんさーい!そうしよそうしよ!ね?」


「僕は別に構わないよ。スピーカーなら…3日以内には取り付けられるだろう」


スピーカーで音楽を流すか…なんの音楽を流そうかその日やる練習でジャンルを変えると面白そうだな。中学のときでは考えられない設備に心を踊らせながら車で揺られる


「月天男子バレーボール部、正式稼動だね」


ポツリと呟いたそれに皆頷く。きっと難しいことばかりだし交代のメンバーもいない、それで大会を戦い抜くなんて大変なんて言葉じゃ足りないくらいだろうが、一つだけ分かることがある。このメンバーと一緒なら楽しいことに違いない!と


「皆様、到着致しました」


現在時刻午後の2時。まだまだ時間はある。練習を積みかさねていこうか





選手情報メモ


鳴瀬 蓮 《ナルセ レン》

15歳 189cm 右利き

ポジションはミドルブロッカー

黒髪の短髪で黒色の瞳を持つ。


全国でも注目されているMBで様々な高校から推薦があったが全て断り生神聖について行った

選抜メンバーとしてチームメイトになってからよりいっそう聖に心酔し聖の世話なら喜んで買ってでる



あとがき

二日投稿を頑張るいい21時に設定した予約投稿。書き終えたのは本日の20時半。自らのだらしなさを実感した日ですね。おかしいな…構想の時は筆が止まらなかったのに…


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