第1話 新生活スタート!と、思いきや

中学最後の大会。都道府県対抗戦。チームメンバーは選ばれなかったけれど僕は静岡県のエースとして選ばれた。慣れない子達とだったけど決勝まで率いることが出来た


そこで負けてしまったが最優秀選手として特別賞を頂けて思わず泣いてしまったのは黒歴史として封印しよう(チームメンバーと監督とで撮った集合写真には写ってるけどね)


桜舞い散る道を鼻歌交じりに歩く青年の銀髪に光が反射し、輝いている

今日は入学式。僕が入学を決めたのは月天げってん高校。東京にある日本有数の進学校だ

この高校にはバレー部はないが僕は勉強とスポーツの両立は出来ない自信があるので、勉強一筋で高校生活を過ごすつもりだ


「ふんふーふふーん♩お、そろそろ着くかなぁ。どうにか詰め込みまくって月天に来れたけど、大事なのはここからだし。中学は行事にあまり参加出来なかったし、文化祭とか楽しみたいなぁ」


そんなことを呟きながら門を潜ると校舎入口から一人の男が歩いてきた


「ふーやっと来たか。生神 聖。久しぶりだな」


「え、き、君は!伊那中の!」


「そう、鳴瀬 蓮だ。お前の記憶に残ってて嬉しいよ」


「そりゃ覚えてるよ…選抜メンバーだったし」


鳴瀬 蓮。静岡県選抜で同じチームでポジションはミドルブロッカー。全国でもトップクラスの実力で、全国常連校から声をかけられたと帰りのバスで嬉しそうに話していたのを覚えている


「でも、確か浜高から声をかけられたんだろ?なんでここにいるの?」


「ん?お前がいるからだが」


「え?」


すると急に両手で右腕を掴まれた。痛みがなく振り払うのが面倒なほどの強さで捕まり、これまた痛めない程度の強さで引っ張られた


「とりあえず、入学式まで時間があるし、教室に行かないか?同じクラスなんだ」


「えっと…?ちょっと急すぎるって!」


「荷物貰うぞ」


「人質取られた!?いや荷質?ちょ、引っ張んないでって力加減すごいな!?」


グイグイ引っ張られてたどり着いた1年2組。腕を掴まれて教室に入ってきた俺たちは教室内の人達に注目された。当たり前なんだよなぁ!なんせ掴んだまんまここに来て、僕の席、窓側の前から2番目の席に案内されているんだから、あぁ荷物もやってくれてる…ありがたいけど少し怖いよ…

僕は席に座って、僕のカバンから筆箱を取りだしている蓮に問いかける


「それで、なんでここにいるか聞いてもいい?」


「ん?お前がいるからだが」


「そっくりそのままさっき聞いたなぁ…そうじゃなくて声かけてもらったんでしょ?そこ行くべきだったんじゃないの?」


「お前も声かけてもらっていただろ?」


「そうだっけ?えーと、ちょっと待ってね」


僕はスマホのメモ帳を取り出し浜松の名前を検索する。何件かヒット、その中には蓮が声をかけられた所があった


「あぁ僕も声をかけられてるね」


「……すごいなメモ帳で管理しているのか。一体幾つあるんだ?」


「数え切れないからメモ帳で管理してるんだよ。智に教えてもらったんだ」


智というのは、東京のベストセッターの東本 智とんでもなく賢い子で僕と違って勉強とスポーツの文武両道を体現している。この子はとても優しい子で一つの事しか上手くできない僕にも物事を丁寧に教えてくれたし、勉強も教えてくれた。そういえばお礼の品を渡せていないな。今度電話して住所を聞こうか。そう考えながら先程から静かにしている蓮の方を見る。蓮は目を輝かせながら口元を手で覆っていた


「そうか…やっぱりお前はすごいな!ここに来たのも0から全国制覇をするためだろう?」


「…はぇ?」


一体何の話をしているんだ?一瞬何を言ってるのかも変わらなかった。僕はバレーを引退するつもりでここへ来たんだが!

高校からは勉強一筋で、文化祭とか体育祭とかに参加して…放課後に友達とカラオケとか行って…

指を立てながらやりたいことリストを呟いているとその手を上から優しく覆われた。さすがMB、手がデカイな。そんなことを考えていたら上から小さな声が聞こえた


「ごめん、なんかいっ」


「お前がバレーから離れるわけが無いだろう?元々俺が喜んでいたのはお前と同じ高校に行けるかもしれないからだ。まぁお前が行きたい高校の体育館が他部活のせいで空いてない高校というのは負荷が高すぎると思うが、まぁお前の判断に間違いは無いだろう。安心しろ、黄金がここからダッシュ25分で着く所に体育館を作ったからな!」


「もっとゆっくり…ってこ、黄金!?なにしてんの!?あの子!」


ノンブレスで告げられた情報を整理しようとしていたのに黄金の衝撃的な行動で全部かき消された。体育館を作ったぁ!?本当に何やってるの…?


財前 黄金。財閥の次男坊で経済の勉強として株を始めたら大成功したらしく、金使いの荒さが目立つが育ちはいい。ポジションはWSで力強いサーブを操る。勝負所でやる気が出る性格でピンチサーバーとしても優秀。都道府県対抗戦では優秀賞を貰っていた


体育館って破産しないか心配になるレベルで使ったな。一体いくらになるんだ…?8桁くらい?いや考えるのはやめよう。世界が違う


「一体どうして」


「それは」


「はーい。席に戻ってくださーい。軽く説明したら入学式しますよ」


「すまん。また後で」


先生が入ってきたから蓮が自分の席に戻って行った。廊下側から2列目の1番目。かなり遠いな。知り合いが遠いと少し寂しい

先生の説明によると、ここから体育館に移動し30分程度の式を行うから水分補給を済ませたら出席番号順に外に並べと、190ちょいが2番目って見えづらさ半端なくない?恥ずかしいんだけど。でも他のクラスを見るとちょくちょく飛び出している人はいるので気にしなくてもいいのかもしれない

さて、体育館入場。僕の高校生活が正式に始まったことを祝う式だ。


たいして興味のない校長先生の話を聞き流し、在校生代表の定型文を聞き、次は新入生代表。これが終わればこの式も終わるはずだ


「新入生代表、1年1組。東本 智」


「はい」


「えっ」


先程話題に出した、智がそこにたっていた。なにか喋っているが正直耳に入ってこない。思わず後ろにいる蓮の方を振り向いてしまった。それに気づいた蓮に前を指さして口パクでちゃんと聞けと怒られてしまったけれど。ごめん智。何言ってるのか聞いてなかった。でもまぁ2人がいるなら授業が楽しくなりそうだ。わかんないところとかすぐに聞けるし!


「新入生代表。東本 智」


あぁ終わっちゃった、結局何も聞いてなかったな…でも智なら後で教えてくれるだろう。それにしても智もここに来ていたなんて…だからあんなに入試対策とか練ってくれてたんだな…後でなにが欲しいのか聞いておこう。蓮に言えば連れてきてくれるだろうし


「申し訳ございません、聖様。貴方の思い通りにする訳には行かないのです。貴方の才能はここで終わらせてはならないのですから」


入学式が終わり、教科書をカバンに閉まったりして解散し始める頃。蓮に声をかけ智を連れてきてもらおうとしたらそれより先に着いてきて欲しいと、カバンを奪われた。パワー自慢なのはいいけれどせめて一言欲しいな。机の上にあるカバンをスッ…と取っていくんだもの。そしてそのまままた腕を掴み引っ張っていく。靴箱を抜け駐車場にあるリムジンに案内される。ん?リムジン?


「え?え?ほんとになに?」


「乗るぞ」


「え?これにぃ!?」


あまりにスムーズに扉を開けて入るから、驚いて動けなくなっていたら後ろから誰かに押された。リムジンの中に倒れ込み後ろを振り向くと智がそこにたっていた


「早く入ってくださいよ、聖様」


「ちょ智!待ってってばこれ本当に乗っていいの?そもそも誰の車なのこれ!」


智に急かされ、席に座るが不安は収まらない。誰のかも分からない車に乗せられているだ。2人がいるけど、早く説明して欲しい

バタバタしながら大きな声を出しながら、聞いていたら運転席側についている小窓から、声がした


「僕のに決まってるだろう?他に誰がいるんだ」


リムジンの助手席からおりこちらに乗ってきた子は財前 黄金。体育館建設事件の犯人だ


「えー!黄金もいるの!?なんだ心機一転と思って来たのに、4人も知り合いがいるなんて、さすが月天だなぁ」


「何を言っているんだい、聖。皆君のために集まったんだよ。これから僕達が選抜したメンバーに会いに行くから楽しみにしてるといい」


「お前が輝けるいいバレーができるようにと、智が考えたメンバーだ。知り合いしかいないから安心しろ」


僕ならバレーをやるだろうと、選抜であった子達に会う度に言われる。僕は辞めるつもりなのに…そういえば何も言わずにここへ来たことを思い出した。


「あーそういえば言ってないね。僕、バレーは」


「黄金、早く出発しましょう。きっともう準備は終わってますよ」


説明しようとした瞬間に、智に言葉を被せられる。急いでいるのか知らないが、人の言葉を遮るのはよくないぞと、抗議の意味も込め智の方を少し睨むが、その返事はウインクで返された


「確かにそうだね。高木!出してくれ」


運転席の方から了解しましたと、声が聞こえ、車が動き出す。車内にゆったりとした洋楽が流れ出し、机の下から飲み物が出てきた。すごーいハイテクだー!とはしゃぎ黄金に車内でできることについて説明してもらっていたら、バレーのことについて説明できていないということは忘れてしまっていた


15分ほど車で揺られ、たどり着いたのは近くの山を登った先、市立の体育館程の大きさがある施設だった


「着いたな。さぁ!聖見ておくれ!ここが僕の作った君専用の体育館さ!もちろんジムとシャワールームも付いている!案内しよう」


入口近くには僕のスパイクする瞬間だったり、オーバーの瞬間だったりと様々な場面が切り取られた銅像が設置されていた


「もしかして、ここはいるの…?」


「これから毎日通うことになるからいつかなれるだろう」


「はぇ?」


3人に連れられた中に入る。そこには中央にバレーボールコートがあり、天井にはいくつものカメラも設置されていて、側面にはスクリーンも設置されていたが何に使うんだろうか。

その他にも千人は入りそうな観客席が設置されており、市民体育館としても利用できるほどの設備だった


「な、なんでこんなところに案内したの…?」


「聖様。頑張りましょうね」


「なにをぉ?」


「全国制覇に決まってるでしょう?目標は18までに全年齢招集ですね」


「え、え、え」


他2人も僕を囲みながら、智に同意していて僕に頑張ろう、と笑顔で言ってくる。あ、あの僕の高校生活は…?いやここで流されるからいけないんだ。ここまでやってくれて心苦しいけれどしっかりと言わないと夢の高校生活はおくれないぞ…よ、よし、深呼吸して…


「さっきは言えなかったけど、僕…」


「あー!やっと来たぁー!」


本当に今日はとことんタイミングが悪いなぁ…




選手情報メモ


生神 聖 《イカミ ヒジリ》

15歳 190cm 両利き

ポジションはオポジットだが基本的にどこでも出来る

銀髪のウルフカット黄金の瞳を持つ。


頼られたら応えようとする性格で、中学のチームメイトに優勝を望まれたから最後の大会で結果を出せた

バレーを辞めると決めているが、嫌いにはなっていない

良い道ではなく楽しい道へと進む悪癖がある




あとがき

オリンピックのバレー見て、書き始めました。処女作かつ場当たり的なものなのでひとまずインターハイまでを目標に書き上げたいです

二日投稿で頑張ろうと思います



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