望まれた神様

@hbk3i

プロローグ 神話の始まり

「きめたー!決めました!最後はやっぱりこの男!!生神聖!!オリンピック初出場で大エース!大きな咆哮をあげて日本に金メダルを届けました!!」


「いま、チームメイトが生神に集まります。高校の時からの盟友、鳴瀬が生神を抱え上げました!日本!世界ランク一位を破りオリンピック優勝!!」


「よくやった!よくやった!まさしく大金星です!!」


「若き世代たちで決めたオリンピック優勝!半数が初出場という異例のチームで戦いよくぞここまで勝ち抜いてきました!会場からも、日本からも拍手が聞こえてきます!」


テレビの向こうでは一時間前の試合の振り返りをしていた。そこには後にバレーボールの神様と呼ばれるようになる青年が映っている。彼の白髪と汗に光が反射しまぶしいくらいに輝いていた。そんな彼に、日本バレーを託した者たちは画面越しから彼のことを見つめていた


一般人の自分では値段が想像もつかないような家具に囲まれながらソファーに腰掛ける。斜め前にある一人用のソファーには持ち主ではない男が座っている。男は足をバタバタと動かしクッションにあててバフバフとまぁまぁ大きな音が鳴っていた。そこから器用に手すりだけで浮き上がり入り口付近にいる男に声をかけた


「おーい早くしろって!もうインタビューはじまっぞ!」


「なぜ君は家主でもないのにそれに腰かけているんだ?まったく…」


「あなたの代わりに持ってきてくれたんですよ、何か言うことは?」


「おーさんきゅ。あ!始まった!あいつは…映ってねぇか。あいつもいねぇし今回は二人だけみたいだな」


テレビに映る二人の青年は日の丸のついた赤いジャージを羽織り、金メダルを手に持ち微笑んでいる。黒髪の青年の眼には涙が浮かんでいた。彼らの下には


日本の二大エース!オリンピックで大金星!


という文字が表示されていた。


「お疲れさまでした。決勝戦素晴らしかったです!そしてMVPおめでとうございます!ずばり、日本を優勝させることができた理由を教えていただきたいです!」


二人は目線を合わせ、少し相談した後白髪の青年が一歩前に出た


「えーと、日本を引っ張ってこれた理由ですよね?」


質問者は頷き、他のカメラもマイクも彼に近づいていった


「まぁ一つしかないですね。世界で一番楽しんだからです!」


と輝く笑顔で返答した。その様子に黒髪の青年はあきれたように小さく笑い、白髪の青年と肩を組んだ


「まぁお前ならそういうだろうな!さすがは俺の神様だ」


そこからは赤いメッシュを入れた男の笑い声で何も聞こえなくなった。音声は聞こえないがインタビュアーはまだ質問を続けており、青年は終始笑顔で答え、もう一人の青年は軽くヤジを入れているようだった。数分は話していたが男はそれでも笑いが止まっていなかった。もともとの声量が大きいので本人は抑えようとしていてもよく響くのだ。とうとう我慢できなくなったようで隣に座っている家主は手元にあったクッションをつかみ男に投げつける


「うるさいぞ、そろそろ黙れ」


「わりーわりーはは!変わんねぇなあいつらは」


「…君も変わってないでしょう」


「そうかぁ?…ま、そういうことにしておくか…」


少し重くなった空気をよそに画面の奥では、いつの間にかインタビューが終わっていたようでハイライトを放送していた。そこからは三人ともまるで小学生のころに還ったかのように一つ一つのプレーにはしゃいでいた。ハイライト集が終わると先ほどの白髪の青年が一人で立っていた


「えーと、うん。これ読めばいいの?あ、やべ。ん“ん”日本バレーの二大エース、その高校時代に迫る!といっても一年前の出来事だけどね。ま、ありがたいことに僕たちだけの特別番組を設定してもらいました。よかったら見てね~」


両手で手を振りながら青年はフェードアウトする。そのあと画面に表示された日数は二週間後、その間にも日本バレーの特集は出るようで、青年たちにいたってはバラエティーの出演も決まっている。もちろんそれらの予約は完璧だ


「この日絶対集まろうな」


「そうですね。といっても予定を合わせるのは私だけですけど」


「そうだな、まぁその時はいい肉でも仕入れてやろう」


三人で笑いあい、どこが一番いいプレーだったのか、自分だったらあの場面はどう動いたのか、話し合った。方や大学、方や仕事があるにもかかわらず朝まで話し合ってしまい、その日は散々だったのは言うまでもない。メッシュの入った青年は野垂れ死んでいる二人の写真を撮りとあるグループラインに送り付けた


それを受け取った青年は楽屋でソファーに転がる形で笑い崩れる


「うぉ、あっぶな。何してんの?」


「聖くん、フフッちょっとこれ見て」


「ん?ん???ナニコレ!あはは、ちょっと僕この後高校はいる前の話ビデオにとらないといけないんだけどーこんなの見せないでよ面白すぎ!」


三人で笑い転げていると入口が開きインタビューに一緒に出たいた黒髪の青年が入ってきた


「聖、お前の番だぞ、ってなにしてんだお前ら。とりあえず聖。椅子に転がるな汚いぞ」


「だ、だって~アハハッヒ~…よし、行ってくるよ」


ドアを開き録音室まで歩く。この撮影が終わったら今度は番組の撮影。正直バレー以外やりたくないけど、発展のためだ仕方ない。高校でバレーをやめた彼らも元気そうで何よりだ。はぁこっから撮影か。…見たいって言われてるし頑張るか

録音室の扉の前に立つ


「こんにちは~よろしくおねがいしま~す」


緩く挨拶してから中に入る。一生の思い出だな。金メダリストってこんなに忙しいんだね。高校時代の気楽な日々と比べながらマイクの前に立ち口を開いた



あとがき

そういえばプロローグ書いてないなってのと最終的な着地点が決まってきたのでその映像を文字で書き残すつもりで書きました


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