第三章  終



 総本山真神楽寺院で八部衆の七人が協力する事となった同時刻。


 夕方を迎える頃。


 茨城県大河市の川田かわた町の町から少し離れた森林の中にある広い空地に、凛と大和がいた。


 凛は白い半袖シャツにショートパンツ姿で、大和から離れた地面の上に座り、黒シャツにデニムズボンの大和を見ていた。


 大和は、草むらの地面に立ち目を瞑っていた。


 大和は、頭の中で映画館の銀幕を強く想像した。銀幕をはっきり想像できたら、次に銀幕の中に三角や四角といった形を想像する。

 次に、三角や四角の形に赤色や青色といった色を染めていく。


 それを鮮明にイメージする。


 大学の超能力を研究する変わり者の教授に教わった超能力の基本練習。

 大和は、この練習を毎日続けていた。


 やがて、大和は目を開き三メートル先の地面に四才積まれた大きな石を見る。


 大和は、鼻から深く息を吸い、ゆっくり口から息を吐くと、意識を集中し目に力を込める。


「うううう······」


 唸り始め、更に集中力を高めると、大和の足元に生えている草が風を受けているかの様に揺れ始めた。


「うううああああ······」


 大和の目がギラリと光る。


「あああああ!!!」


 大和が気合と共に声を上げると、三メートル離れた大きな石にヒビが入る。


「はあ!!!」


 大和が叫ぶと、大きな石は粉々に砕け散った。


 それを見ていた凛は立ち上がり、


「凄い······あんな大きな石を······」


 大和は息を荒くして地面に膝を付き座り込んだ。


「や······やった······砕けた。破壊できた······」


 大和は身体中に痛みを感じ、酷く気持ち悪くなり片手で口をおさえ、座り込んだ状態から動けずにいた。


 凛が大和に駆け寄り心配して声をかけた。


「大和君! 大丈夫? やっぱり超能力を使うと気分が悪くなっちゃうんだね」


 大和は、胃液を吐きそうな口を片手でおさえ吐くのをこらえていた。


 凛が、座り込んでいる大和の隣に座り心配した表情で大和の横顔を見ていた。


 暫くして、大和の体調はだいぶ良くなり、凛に話しかけた。


「もう、大丈夫だ。でも、強い力を使うと俺の身体にも強い負担がかかる······」


 大和は、ふらつきながら立ち上がり、


「一撃だ······一撃で倒さないといけない。幽霊に超能力を使うのは始めてだけど、念力だから幽霊にもダメージを与えられると、俺は考えている。それに、今使った超能力より、もっと強い力を俺は出せるはずだ」


 凛が心配そうな表情をした。


「でも、そんなに強い力を使ったら、大和君の身体の方が壊れちゃいそうだよ」


 「かまわない······美咲さんを救えるなら。俺は、美咲さんを救う為なら······」


「死んでもいいなんて言わないでよ」


 凛が、真剣な表情で大和に言うと、大和は黙り込んだ。


「大和君、まだ高校生なんだよ。まだまだ未来があるんだから、高校生がそんな事を思ったら駄目だよ」


 大和は、中学二年生の凛に説教されて、目を細めて軽く微笑んだ。


「美咲さんにも未来がある······お前にもだ、凛」


「うん。そうだね。でもね、あたし時々考えるんだよね」


「何を考えるんだ?」


「あたしも大人になって、誰かと恋愛できたとして、結婚して、子供を産んで、母親になる······でも、今のあたしには想像できないんだ。母親になる事や子供を育てる事······」


 凛は、細い顎に人差し指を当てて空を見上げている。


「凛は、まだ中学生じゃないか。そんな事を考えているなんて真面目なんだな。見かけによらず······」 


「うん。見かけによらず······って、どう言う意味なの? それ」


「凛はさ、今はめいっぱい遊んで、部活して、勉強して、それで良いんじゃないか? 先の事なんて分からない。考えるのはいいけど、あまり深く考え過ぎると未来に不安しか感じられなくなるんじゃないかな」


「おお! 言いますねぇ大和君」


「ははっ、まぁな。痛た······まだ、少し身体が痛むな······」


「今日は、もうここまでにして家に帰って、ゆっくり休んだ方がいいよ」


 凛は大和の顔を下から覗き込む様に見た。


 大和は胸の辺りを片手で擦りながら、


「なぁ······凛。やっぱり神社には、俺一人で行こうと思うんだ。凛に何かあったら、俺は美咲さんに顔向けできないし、それに······そうなったら俺は自分を許せない」


「やだ、だめ。あたしも行く。それに人に呪いをかけてる悪い霊に、やりたい事があるんだ」


「何だ? やりたい事って?」


 凛は、拳を作り前に突き出した。


「パンチだよ。パンチ。そんな悪い霊にはパンチだよ」


 大和は、一瞬キョトンとしたが、すぐにクスクスと胸の痛みに耐えながら笑い出した。


「そうだな。パンチだな。パンチ」


「うん!」


 大和は真剣な顔になり、


「明日だ。津原市の浜高町に行く。神社の場所は地元の人に聞く事になるな」


「うん。邪眼の巫女が出る神社だね」


「美咲さんを必ず救う。救って見せる。邪眼の巫女をぶっ倒す」


「あたしは、邪眼の巫女にパンチするよ」



 明日。



 凛と大和と八部衆、そして邪眼の巫女。


 運命が交差する。





 第三章 完




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