第54話 セントVSセバスチャン④
セバスチャンは「歴戦の
(宿命の対決……というわけだ。だが、アシュリーは返してもらうぞ、セバスチャン!)
俺は決意した。
セバスチャンの帯の左には、
念でできていると言っても、ほぼ物質化しているように見える。
審判団は、それを見て見ぬフリをしている。やはり、セバスチャンはこのトーナメントの最高責任者であり、
セバスチャンは俺をじっと見る。
(う、うおおおっ……、こ、この感覚は!)
こ、これが
「くくくっ……。素手の君が、
セバスチャンはクスクス笑った。
カチャリ
セバスチャンは、反物質化した
スッ
最初はそんな音がしたと思った。
ブアアアアッ
本当に
「うおおっ!」
俺は思わず前転して、それを
「秘剣――
カチャッ
セバスチャンは
俺は立ち上がり、横に移動する。
その瞬間、セバスチャンは素早く
俺は、今度は後ろに飛んで、それをかわす!
「ゼント君、血まみれになる前に、『まいった』をしてもよかろう」
セバスチャンはまた笑う。
「そうすれば、命は助けてやる。私としてはもっと闘いを楽しみたいが」
誰が、「まいった」なんか、するもんか! 俺は勝つ!
またセバスチャンは
ガスウッ
俺の左ジャブ!
セバスチャンの
「
セバスチャンは構わず、今度は何と、素早く
そ、それはうまいこと外れた。
しかし、続けてセバスチャンの上段斬り!
バサッ
俺の
「何! かわすとは!」
セバスチャンは声を上げた。そして――俺は素早く踏み込み――。
ドボオッ
セバスチャンの腹に、左ボディーブローを入れた!
「ぐへ」
続けて、左フック!
ガスッ
彼は
セバスチャンはフラつき、立っているだけで精一杯だった。
しかし、彼の手には
「
セバスチャンは怒り狂った目で、俺をにらみつけている。
「ふうっ」
俺は息が切れてきた。この緊張感の中だ、体力の消費が速い!
しかし、セバスチャンにも打撃は効いている。
セバスチャンは
ここしかない!
「ゆるさん! 斬られた痛みで、
セバスチャンは本性を表した。
上段から斬る――と見せかけて、何と、
だが、俺はその前に、素早く接近していたのだ。
パシッ
「まさか!」
セバスチャンが声を上げた時、俺は――。
ガッシイッ
セバスチャンのアゴに、左ストレートを決めていた。
セバスチャンは
「ううっ?」
セバスチャンは驚きの声を上げる。
そしてそのまま、
「あ、う、う」
セバスチャンは俺を見て、一歩後退する。
俺は前進して、左ジャブ! セバスチャンの
そして、セバスチャンの上から振り下ろすような、変形右フック! 軌道が独特だ! こんなパンチを隠し持っていたのか?
ガシイッ
俺は、左アッパーを、セバスチャンのアゴに決めていた。逆に俺は、セバスチャンの変形右フックをよけていた。
セバスチャンはフラつきながら、笑う。彼は倒れない。
「さ、す、が、ですね」
ゆらり
セバスチャンが横に移動する。
カッ
セバスチャンは目を見開き、力を振り絞って――今度は上からの変形左フック!
ここだ――俺は、それを待っていた。
俺は一歩踏み込み、全身全霊の力を込め――。
彼のアゴに、右手の平の下部を使った打撃――!
グワシイイイイッ
「ガフ」
そんな声とともに、セバスチャンのアゴに俺の
完全なカウンター攻撃……! セバスチャンのアゴをとらえていた。
「そ、そんな……。まさか……この私が」
彼はそうつぶやきながら、フラつき、
そして……リング上の全身を突っ伏した。
「ああ……」
「ついに」
「ど、どうなった?」
観客たちが静かにざわめく。
リング
カンカンカン
乾いた金属音――試合終了のゴングの音がした。そして――。
『16分20秒! KO勝ちで、ゼント・ラージェントの勝ち!』
スタジアム全体に、放送が――審判長の声が響き渡った。
『ゼント・ラージェント選手の優勝です!」
ドオオオオオオオオッ
「きたあああああああーっ!」
「完全決着だああああ!」
「ゼント、すげええええ!」
「やりやがったあ!」
「すげえ試合を観たああ!」
あまりの歓声に、スタジアムが
「やったあああ!」
エルサがリング上に上がってきて、俺に抱きつく。
「ゼント、おめでとう!」
一方、セバスチャンは座り込んで、呆然としている。まあ、そっとしておこう。
おや? スタジアムの奥……花道の方から大勢の軍人がやってきた。
「ええっ? あれは、国王
エルサが声を上げた。
20名はいるだろうか? 軍隊の正装をしている。彼らはリングサイドに近づいた。そして彼ら20名をかきわけて、一人の少女が前に進み出た。
「ゼントさん!」
アシュリ―だ!
ほおおお……っ! 俺とエルサは、やっと息をついた。無事だったかぁ……。
俺はエルサとともにリング下に降りて、アシュリーに聞いた。
「アシュリー! 怪我はないか?」
「平気だよ。国王
「どこにいたんだ?」
「二階の
アシュリ―が言うと、エルサがうなった。
「そうか……。
「赤鬼さんが、お菓子を一杯くれたんですよ」
アシュリ―が小声で言う。
一応、アレキダロスや赤鬼たちは、アシュリーを
すると、国王
「私は副
俺は戸惑ったが、うなずいた。
「おい、やれ」
マリウ副
「あああっ!」
俺とエルサは、同時に声を上げた。
アレキダロスは……! アレキダロスの正体は、俺の、俺たちの知っている人物だったからだ。
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