第32話 サユリと話してみた
俺――ゼント・ラージェントは昨日、1回戦を勝利で終えた。
今日は、「ミランダ
そこで、1週間後のトーナメント第2回戦にそなえる。
「つーか、でけぇな」
ローフェンが、「ミランダ
広さはルーゼリック村支部の10倍。
練習用
◇ ◇ ◇
さて――
ドガッ
「ぐへ!」
俺は練習用リングの上で、サユリに投げつけられた。
サユリがトレーニングに参加してくれたのだ。彼女の所属はグランバーン最大の
余裕だな……。
練習なので、俺も力を抜いていたが、な、なんという素早い投げなんだ……。
「大丈夫ですか?」
サユリは俺のことを心配して、倒れた俺を上からのぞきこんだ。受け身はとっているから大丈夫だ。
それはともかく、サユリの黒髪が
うーむ、やっぱりかわいい……。
「ゼント、お前はパンチは得意だけど、投げ技に対応したほうが良いんじゃねーかぁ?」
ローフェンは俺とサユリの練習を、リングのコーナーポスト前で見ながら言った。
「では、ローフェンさん、こちらへ」
サユリはニコッと笑って、ローフェンの手を握った。
「え? 俺?」
するとサユリは、ローフェンを横に押し出すようにして――。
シュッ
そのまま、いとも簡単に投げてしまった!
ドダン!
「うげっ!」
ローフェンが背中から落ちた。
サユリの投げ――
「なんだローフェン! お前だって簡単に投げられてんじゃないか」
今度は俺が笑ってやった。
「う、うるせーな。油断しただけだ」
ドスツ
サユリはニコニコしながら、ローフェンに足をかけて簡単に倒してしまった。
「ず、ずるいぞ、サユリ! 油断していたところを」
ローフェンはブーブー叫ぶ。
一方、サユリはいたずらっ子のように、クスクス笑っている。
「
◇ ◇ ◇
サユリとの和気あいあいとした練習は、1時間半で終了した。
「私はセバスチャン先生のところでトレーニングがありますので、これで」
サユリはそう言うと、
ひえ~、まだトレーニングを続けるのか?
俺たちがリング下に降りてベンチで休んでいると、エルサと社長のミランダさんが練習場に入ってきた。
「練習、ご苦労様。ゼント、ローフェン」
エルサは俺の汗を、タオルでふいてくれた。
まだ
「1週間後のゼントの相手を調べたよ。君の相手は、ライダム・シュライナー。
「セバスチャンの弟子?」
俺は驚いて聞き返した。
俺はトーナメントが始まる前、スタジアムの廊下で見た、セバスチャンの
「セバスチャンの弟子が、次の相手か?」
「そうなるね。シュライナーの身長は171センチ、体重73キロの中量級。だけど、拳闘士として相当な力がある」
エルサが言うと、今度はローフェンがミランダ先生の方を見た。
「セバスチャンって大勇者の執事だろ。そのセバスチャン自身って、どれくらい強いんだ? ミランダ先生、昨日だっけ、セバスチャンと話をしてきたんだろ?」
「ええ、色々理解したわ。彼の裏の顔もね」
ミランダ先生はつぶやいた。
俺とローフェンは顔を見合わせる。ど、どういう意味だ?
セバスチャンの裏の顔だって? 昨日の話し合いで、何かあったのか?
「それでローフェン、あなたの次の相手は、怪我により欠場となったわ」
「ど、どういうことッスか?」
ローフェンはミランダ先生に向かって声を上げた。
ミランダ先生は静かにうなずく。
「代わりに、そのセバスチャン本人が、試合に出場するらしいわ」
な、なんだって?
ローフェンが首を
「ど、どういうことだ、ミランダさん。ローフェンの相手は、ドワーフ族のゴンギーじゃなかったか?」
「違うわ」
ミランダ先生は眼鏡をすり上げて言った。
「ゴンギー選手は、1回戦の試合で足を負傷。……と表面上ではなっているけど、セバスチャンに大金を渡されて、試合を辞退した。だからローフェン、あなたの相手は、ゲルドンの執事、セバスチャンよ」
「ど、どうなってんだよ、そりゃあ」
ローフェンは再び首を
「……まあ、そのうちセバスチャンの正体がわかるわ。もし、セバスチャンのことを知りたいのなら、サユリの次の試合にも注目しなさい」
ミランダ先生は言った。
ど、どういうことだ?
「彼女の次の相手は、『G&Sトライアード』から出ていった、マーク・ギスタン。セバスチャンと意見が合わなくなって、出ていってしまった選手よ。この試合――サユリの本性……心の
あのかわいらしい女の子、サユリの心の
それによく考えると、もしセバスチャンがローフェンに勝ち、サユリが勝ち上がれば、セバスチャンとサユリの対戦になるはずだ。師弟対決ってことか?
一体、どうなるんだ? このゲルドン杯格闘トーナメントは?
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