「4−4」鍛冶師、王城へ
工房に籠もっていた彼は、勢いのままに王城へと向かった。私はフードを被っているが、彼は素顔のままで表を歩いている。彼と勇者との関係性はまだそこまで周知されていないとは思うが、万が一に備えて、私は離れて歩いた。
私はその度胸がひどく羨ましかった。付いていくと決めた心を曲げずに、彼の仲間であることに胸を張りながら、堂々と歩くその精神が。
入り交じる視線に手汗を握りながら歩いていると、やがて私は王城の門の前にいた。感心しながら頷くペパスイトスとの会話のなさに耐えきれず、私はとりあえず尋ねた。
「何故神に会いに行くというのに、この城に? そもそも神なんて、そんなに簡単に話せるものなのですか?」
「この城に用があるわけじゃねぇよ。ここの宝物庫に、行きたい場所にひとっ飛びのアイテムがあるんだ」
そうでもしないと間に合わない。と、ペパスイトスは言う。この妖精国からその場所に行くためには、今からでは一年以上かかるとのことである。
ノックが大きな音を立てて、やがて門が開かれた。本来は美しいはずなのだが、抉れた城壁など、生々しい傷跡がここにも影響していた。
「……」
そこには、未だに卵から出てこない妖精王アベロン。そしてその娘であるルファースが、玉座に座っている。彼女の顔はとても曇っており、失望と悲しみ……何よりも、疲れ切ったその表情が目に見えた。
「お疲れのとこ申し訳ねぇが、ちっと貸してほしいアイテムがあるんだ」
「……ええ、はい。どうぞ」
頭が回っていないのか、目線がとても虚ろだった。私はなにかしたほうがいいんじゃないか、と思って駆け寄ろうとしたが、それは現実逃避でしかないことを察した。
「行くぞ」
堂々とした背中に、私は吸い寄せられていく。勇者という拠り所を失って、何をどうすればいいのかが、みんなわからないのだろう。
無論私も、その一人だ。
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