「4-3」無能勇者、助けを求められる
己の選択が正しかったのか、薄暗い牢屋の中で苦悩を続けていた。
この永遠にも思える思考も、俺自身に同情を引くためのポーズに過ぎないのかもしれない。事実、俺は今回の選択を最善にして最良のものだと思っているし、そう信じている。
それでも、勇者に縋るすべての人々を裏切ってしまった。
俺にもっと力があれば、俺がもっと怒っていたら? あのアルカという男を粉塵と化すことぐらいはできたのかもしれない。いいや、そもそも勇者に敗北は許されないのだ。たとえ今回の結果が「相討ちによる死」だったとしても、世界は変わらずに石を投げてくるだろう。
事実上、俺は今捕まっている。ここがどこなのかも、地上なのか地下なのかもわからない。ただ、時折見張りに来る魔物たちの風格から、ある程度の察しはついていた。ここは、恐らくーー。
「よぉ、生きてるか?」
「ッ!」
顔を上げるとそこには、アルカがいた。全くの警戒も、敵に対する最低限の敬意もない。こいつは俺のことを敵だと思っていない、今なら、こいつだけでも。
「死ぬ前に、確認するべきことがあるんじゃぁねぇのか?」
聞いたところで、それが真実かどうかはわからない。嘘の可能性だってある、いいや、嘘じゃないわけがなかった。けど。
「イグニスさんと、ペパスイトスさんは、無事か?」
「ああ、俺の回復魔法でバッチリ治してやった」
心底面白いものを見るかのような顔で、アルカは俺を見下してきた。その時改めて、自分はこいつに負けたんだと自覚した。
「まぁ、これでお前はいつでもこの『魔王城』で自爆心中ができるってぇことだが、そいつをやる前に俺の話を聞かねぇか?」
今更、なんだ? 拷問なら、今すぐにでも舌を噛み切ってやる。これ以上、勇者としての恥を晒すわけにはいかない。
俺が自らの舌を歯ではさみ、いつでも絶命できる準備を整えていると、アルカは自らに指先を向けた。
「なぁ勇者サマ、俺の事助けてくれねぇか?」
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