「3−16」無能勇者、突き出された条件

 家の中に入ってみると、それはそれは丁度いい内装が施されていた。華やかに贅沢でもなく、みすぼらしく貧乏でもなく……平民の中でも少しだけ裕福な自分にとって、これはとても落ち着く空間であった。


「嬢ちゃんはそこに寝かしといてくれるか?」

「あっ、はい。……本当に、ありがとうございます」

「困ったときはお互い様だ。それに、あの化け蜘蛛に気づけなかったのは俺の落ち度、こっちはただ罪滅ぼしをしてるだけだ」


 イグニスさんをふかふかのベッドにそっと寝かしつけ、俺は改めてペパスイトスさんに頭を下げた。彼はそれを、とても嫌そうに……はっきりと表情で表していた。


「やめろって、ほんと」

「その上で、あなたにお願いしたいことがあるんです」

「おう! そうこなくっちゃな! 鍛治師の俺にできることといやぁ数えるぐらいしかねぇがな!」


 この人なら、本物に違いない。俺は覚悟を固め、袋を取り出す。その中には真っ二つに折れた聖剣があった。

 ペパスイトスさんはそれを見て、眉をひそめた。


「……あの坊主の代理か?」

「はい、アーサーたちは石にされました。俺は聖剣と勇者の役割を受け継ぎましたが、実力不足で、聖剣を折ってしまいました」

「いいんだよそんなこと。……お前も大変だな」


 ペパスイトスさんは、折れた聖剣をじっと見つめていた。断られるかもしれないという不安が漂いながら……遂に彼の口が開かれた。


「いいぜ、造ってやるよ。これよりも固くて、曲がったり折れたりもしない……最高のをよ!」


 ただし! 俺が頭を下げるより前に、ペパスイトスさんは声を張り上げた。俺が下げかけた頭を上げると、そこには満面の笑みが広がっていた。


「俺を、お前さんのパーティに入れろ。それが、聖剣を打つ条件だ!」


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