「3−15」無能勇者、招かれる
ペパスイトスを名乗るこの男、俺ははじめこそ疑っていたが、どうやら本人らしい。その証拠に両掌がゴツゴツしていて、腰の玄翁も古めかしい感じだった。
彼は俺たちに応急処置を施し、その場で毒を治療してくれたのだ。治療の腕はとても高く、先程まで自分たちが死にかけていたことを忘れてしまう程に、気分が良くなっていた。イグニスさんはまだ目を覚まさないが、息はしているし、恩人相手に贅沢は言えまい。
「さぁ着いた……ってなんだぁこりゃ!?」
そこは先程まで、自分が蜘蛛と戦っていた場所だった。ペパスイトスは飛び散った血飛沫よりも、瓦礫の山に絶句しているようだが。
「すみません、それは俺が壊しました。事情があって……助けてもらったのに、本当にごめんなさい!」
「ん? 何だお前が犯人か。……ならいい、丁度建て直そうと思ってたからな」
そう言って彼は、膝をついて地面に手を付けた。何かをブツブツと呟き続け……変化は急に、そして迅速に顕れた。
瓦礫の山が、ふわりふわりと宙を舞う。そして変化し、原型を留めていなかったものが立派な丸太へ、丸太は形を変えながら地面に突き刺さり……大の男が何十人も集まって作るような、立派な木造建築に早変わりした。
「……まぁ、妥協点だな」
ペパスイトスは満足行かなそうにそれを眺めた後に、俺を出来立てほやほやの家の中に招待した。俺はイグニスさんを背負い直し、そのまま家の中に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます