「3−10」赫い流星、蜘蛛を穿つ

微睡んだ意識の中、イグニスはこの森に入ってから、一体何があったのかを回想していた。


そう、あれはガドと森の中に入った瞬間だ。あのとき私は一撃を受けた、霧の中で油断していて防御もできず、そのまま連れ去られたのだ。


「……」

「チッ、目が覚めたか」


その声が聞こえて、私はようやく目を開けた。そこにはなんともおぞましい化け物が……化けた大蜘蛛のような見た目の異形が、今まさに私を喰らおうとしていたじゃないか!


(身動きが取れない……ガドは無事なのか!?)

「本当なら生きたまま喰らうのが習わしだが……お前の場合は俺よりも強い。万が一ということもある」


だから。蜘蛛の口が歪に歪み、なんとなくそれが邪悪な笑みを表していることが察せられた。ーー直後、蜘蛛の口から何か……痺れる紫色の霧が出された。


「かっ……はっ」

「お前はこの毒霧で殺す、死んだあとにゆっくり……味わおうじゃないか」


走馬灯が見える。父の背中、あの人の背中……意識が遠のく、ここまで、なのか?


(……あ)


閉じていく意識の中、私は幻まで見るようになったらしい。突如現れた赫雷が、まるで一条の流星の如く。横薙ぎに蜘蛛へと突っ込んでいったのだ。

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