第12話 男の娘の宿命
まさかダンジョンで四十九院財閥のお嬢様に巡り合おうとは、誰が予想しようか。四十九院と言えばダンジョン飛来後のダンジョン装備開発で財を成した新興財閥であり、現状アジア最大の資本グループと呼ばれるほどの巨大さを誇る。
お姉様だけでも正直僕如きの手には余るというのに、お嬢様までとなると少しきついような気がする。ここは一度撤退するべきだろう。彼女の仲間の死体も回収せねばならない。
「お姉様、ここは一度帰りましょう。」
「む? ……まぁそうだな。彼らを弔ってやらねば。」
「い、良いのですか? そこまでして頂いて……。」
「旅は道連れ世は情け、で御座いますよ、お嬢様。」
そう言って、僕は戦斧の長柄に死体を掛けていく。4体くらいは軽々と置けるものだ。なにせ、僕よりも大きいからね、うん。……哀しくなんてない。決して哀しくなんてないのだ。
「そういえば、
む、お嬢様、あんな死地で先程まで泣いていたというのに、復活が異様に早い。流石にそこまで設定はすり合わせていないから、ここはお姉様に期待するしかない……。
「瑠々は元々私の執事の息子でな。執事とその妻が交通事故で死んだとき、うちが養子として引き取ったんだが、本人たっての希望で給仕として働かせているんだ。」
「なるほど……。」
流石はお姉様。機転の利く……ん?
「あれ、息子?」
……お姉様?
「……やらかしたな。」
「え、男の…子?」
「あ、あはは……。」
「…………。」
作り笑いを返すや否や、荷物がもう1つ増えてしまった。
「殿下! まじで何を口走られているのですか!」
「いや…済まない。性別の認識は流石に変えられなかった……うむ……。」
この後、めちゃくちゃ説教した。
「と、とにかく、本当にありがとうございました!」
黒服たちに取り囲まれた御嬢様はそう仰ってこちらへ近づいて来る。
「ほ、本当に男の子なのですか?」
「え、ええ。お姉様がどうしてもメイド服を着て欲しいと仰るので……。」
「……かわいい。」
「はい?」
「いえ、何も。では、改めて後日、お礼に参りますので、住所をお教えいただいても?」
「それには及ばない。こちらから出向こう。……というのも、少々厄介な身分でな。ダンジョンで出会った客人だと説明するわけにもいかない。」
「でしたら、明日にでも四十九院ホールディングスの本社にお越しくださいませ。お待ちしておりますね!」
酔狂殿下は漕ぎ穿つ 鹿 @HerrHirsch
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