第11話 お姉様とお嬢様
心臓マッサージをすること数分。女性は意識を取り戻した。
「瑠々、普通に女性の裸体を見るんだな。」
「命が関わっている状況で羞恥心なんて持ってられませんよ。」
女性の服を留め直しつつ、お姉様のお茶化しを跳ねのけさせて頂く。
「大丈夫ですか?」
「あ……はい……。」
改めて見直せば、女性は中々に異常な出で立ちであった。金目銀目、つまりは黄色と青色のオッドアイ、そしてお姉様ほどでは無いにしろ透き通った白い肌に、対比するような長い黒髪。容姿だけでも、およそ欧米系の人種とのハーフであろうことは想像に難くない。
「まずは本来参戦を確認すべきところを無断で乱入した非礼をお詫びさせて下さい。」
そう言って、僕は再びカーテシーを綺麗な所作で実行した。今度はお姉様の分も込めて非礼を詫びるよう目を閉じ口を結び深く頭を下げます。
「あ、いえいえ! おかげで助かりました……私だけですが……。」
そう口にした途端、堰を切ったように涙を流す女性。僕は、優しく彼女を抱きしめる。こうするのが適当だと、悲しくも女生徒との付き合いの多かった青春で学んだ。
「う…うぅ…うぁあ……ひっく……。」
静かに嗚咽する女性。僕の胸に顔を埋めて腰に手を回してくる。僕が立ち膝の姿勢なのにこれだ。この人はかなり長身なのだろう。うーむ、なんかそう思うと悔しくなってきた。いやいや、だがそんな人に胸を貸しているのだ。もっと悦に浸ってしかるべきだろう。
「……やはり瑠々はメイドであって然るべきだな。」
「お姉様……。」
ジト目を向ければ、お下手な口笛を吹かれるお姉様。何ともよくできたお方だと、呆れのため息を吐けば、女性がゆっくりと離れる。
ごしごしと目元を袖で擦ると、地面に置いていた日本刀を鞘へ納めて、女性が改めて向き直る。
「この度は助けてくださり、本当にありがとうございました。」
そう言って、丁寧な所作で土下座を敢行される。そのあまりの綺麗さに面食らっていると、お姉様が代わるようにして前へ出られる。
「面を上げ給え。私は
お姉様が片膝をつかれて尋ねられる。優しい笑顔を湛えているが、この方がつい先刻まで自転車で爆走しながら槍でゴブリンを串刺しにしていたと言われれば幾人かは卒倒するだろう。
「
……つるし、いん?
「四十九院と仰いますと、四十九院財閥の……?」
「はい、一人娘で御座います。」
……これが、世に聞く波瀾万丈?
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