突然のドラ◯エ
次の日、俺はマンションのエントランスで拓磨と美咲を待っていた。
二人と同じマンションに住んでいるので、毎朝エントランスで集合し通学している。
「おっす、大吉」
「おはよう拓磨」
挨拶を交わしているとすぐに美咲もパタパタと近付いてきた。
「二人ともおはよう」
「おはよう、美咲」
「遅いぞー」
「拓磨も今来たばっかじゃん」
そんな軽口を言い合いながら高校へ向かって足を進める。
「マーフィーさん、マーフィーさん。今日はどんなマーフィーを見せてくれますか?」
「拓磨さん、拓磨さん。俺はマーフィーさんでなく大吉さんです。それにあなたの為にマーフィーしてるわけではありません」
「何もない日常の唯一の刺激なんだからそんな事を言わずに頑張ってくれよ」
「また意味が分からないことを言ってるし」と美咲は呆れ顔だ。
「昨日失敗談は笑ってもらえると嬉しいとは言ったけど積極的に起こすつもりもないよ」
「そりゃそうよね。仮に積極的になられたら、いよいよ収拾がつかなそうだし」
「それに俺は別の刺激を求めてる!」
強く言った俺に拓磨は興味を持ったようだ。
「おっ、なんだなんだ?」
体を少し前のめりにして聞いてくる。
「普通に青春したい!」
力強く言い切った俺に対して拓磨と美咲は可哀想なものを見る目で見てくる。
視線だけで、無理と思ってる事が理解出来るほどだが、それで諦めるわけにはいかない。
「俺達も高校二年生になったし、一番青春できる時期だろ? もう四月も半ば。作戦を練り始めないとあっという間に受験だぞ!」
そう力強く言い切ると拓磨が突然立ち止まった。
どうしたんだろうと俺と美咲も立ち止まると拓磨は目を伏せながら切り出した。
「そうか、大吉はそんな強く青春したいって思ってたんだな。それなのにマーフィー、マーフィー言って悪かったな」
「お、おう」
突然のシリアスモードに驚きながらなんとか返す。
どうしたんだ、拓磨。
いつものおちゃらけたお前はどこにいったんだ。
そう心配していると拓磨が重そうに再び口を開いていた。
「正直、大吉には普通の青春が無理だと思ってたんだ。いや、正直今でもそう思っている」
「無理だと思ってたんだ!?」
「だが、大吉の切実さに心打たれた! 応援するぞ、大吉!」
「でも、応援してくれるんだ!? ありがとう!」
「拓磨の大吉への弄り方のレパートリーが増えてる……」
俺の気持ちは拓磨への感謝で一杯だが、美咲の表情は暗い。
「どうした、美咲?」
俺がそう問い掛けると美咲は言いにくそうに口を開いた。
「応援するのは良いけど大吉の場合、すごく厳しいと思うよ?」
「それでも俺も拓磨と美咲みたいにモテたいんだよ……」
拓磨も美咲も明るい性格で分け隔てなく周りと接しているので人気がある。
俺も是非あやかりたいところだ。
「大吉の場合、モテるモテないの前の段階というか……」
「そうね、大吉はモテるとは思うけど……」
二人とも言いにくそうだ。
「何か理由があるの?」
「それはだな……」
拓磨が口を開こうとした瞬間だった。
「すみませーん!」
遠くから声が聞こえて来て、何事だろうと声の聞こえた方を見ると同じ高校の制服を来た少女が走って来るところだった。
その顔には見覚えがあった。
昨日体育準備室に入って来た女子だ。
わざわざ声を掛けて来てくれたことに青春の香りを感じる。
女子が近くに来て息を整えるのを待つ。
落ち着いたのか、口を開こうとした瞬間だった。
近くの林からガサガサと音が聞こえると何かが出てきた。
野良犬があらわれた!
カラスがあらわれた!
カラスは野良犬に向かって威嚇した!
野良犬は驚いて大吉と女子高生に方に走ってくる!!
野良犬のこうげき!
大吉は女子高生を庇った。
大吉の腹部に甚大なダメージ!!
女子高生はおどろいて逃げ出した!!
野良犬とカラスも逃げ出した!!
「まぁ、分かったとは思うが、大吉の場合はまず他人とそう簡単には接触出来ないんだ……」
大吉達は全滅した!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます