第11話 同盟成立
「物流のクラウド化に、異空間へのアクセス権限付与できる代物か。ハッカーとしては聞き逃せないね!」
ジムはカーナビ越しに呑気なことを言っている。
「そう! あんたみたいな奴こそが問題なのよ! 先進技術にすぐ飛び付いて、後先のリスクを考えない!」
エアは怒りを露にして俺からカツラを奪い取った。
「おかげでこのエルドラド人の証したる黒髪を衆目に晒すことも叶わない!」
さっきと言っていることが逆だが、カツラだった以上、今の言葉が真実なのだろう。エルドラド人は黒髪だったのか。
「リスク? そんなものは考えるだけ無駄だ」
「本当に向こう見ずな性格ね」
「いいや、未来なら見えている。俺の開発したプラネットDOSを扱いきれず、自滅する人類の未来がね」
ジムは破滅願望を抱く異常者だったのか? さっきから既得権益を破壊するとかなんとか言っているし、関わらない方がいい気がしてきた。
「そうですか。地球人類のことなど知りません。ただ私は、エルドラドの技術が汚されるのを止めたいだけです」
それがエアの切実な願いなのだろう。真剣な面持ちだ。
「なら協力しよう。俺は自分の腕を証明したくてね。エルドラドとやらの技術を用いずとも世界を変えられると示したい」
歪んだ願望であることは間違いないが、正直心強い。
「あなたのことは嫌いですが、そう言って頂けると助かります。どうかよろしくお願いします」
エアはペコリと頭を下げた。そこは素直なんだな。だが、頭が震えている。エアの奴、本当はジムにお願いをするなんて嫌なようだ。
「では、同盟成立だな。俺は在宅でしか仕事しないんでよろしく。それと、目下の敵はBSSだが、それ以上に厄介な敵もいる。オヴェスタ連邦だ」
ジムは大物の名前を出してきた。
「サリファスタンに駐留しているオヴェスタ軍がこっちに迫っている。マスターキーが狙いだろうな」
これだけの騒ぎを起こせばオヴェスタも気付くか。隣国サリファスタンはオヴェスタと同盟を結んでいるので、当然軍も駐留している。
「じゃ、さっさと逃げるか。体を洗うのはそれからだな」
俺たちはずぶ濡れのまま車に乗り込み、その場を去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます