第8話 謎の国ジャパン
「エアがやったのか?」
「テクノパシーは多少回復していたから。NIS本部に監視カメラの映像を強制的に中継させた」
ハッキング関連なら何でもありだな。とはいえ今回は助かった。おかげで本部の迅速な支援が得られたわけだ。
どうにか岸辺まで泳ぐと、一休みできた。
「全く。この稀少にして高貴なるエルドラド人の私を拉致しようとは、いい度胸です」
エアはそんなことを言ってむくれる。
「本当にエルドラド人なのか?俺にはただのコスプレ少女にしか見えん」
貫頭衣といい、水色の髪の毛といい、バンドデシネのキャラクターのようだ。
「何を言うかと思えば! 私のこの水色の髪こそエルドラド人の証! って! 勝手に触るな!」
俺がエアの頭を掴み、上に引っ張ると、案の定すっぽりと抜けた。湖に飛び込んだ後、ちょっとズレていたのでカツラであることは分かっていた。
「ウィッグのようだが?」
裏返し、タグを確認する。見たことのない文字列が並んでいた。これがエルドラドの言葉なのだろうか。ただ、【Made In Japan】の表記は読み取れた。
「ジャパン?」
聞いたことのない国名だ。あるいは地域の名前なのか?
そんなことを話していると、迎えの車が来た。
「カリーム。よくやった。マスターキーをBSSから守り抜いたこと、賞賛に値する」
車内から声が聞こえるマスターキーを回収できたのか。しかしあれだけの機銃掃射の残骸の中からどうやって回収したのだろうか。
「その少女がマスターキーだな?」
「いや、マスターキーは具体的な形を持った道具のようです」
俺が知っている情報を話すと、相手からは困惑の色が感じて取れた。しかし、なぜ誰も車か
ら降りてこない?
「これは直接話した方が良さそうだな。カーナビを見ろ」
車に近づくと、中は無人だった。カーナビだけが発光している。まさか、これもテクノパシ
ー?
「いや、違うって」
俺が疑いの目を向けると、エアは否定した。では誰がこの車を操っているんだ?
「プラネットDOSのプレミアアカウントを出品する不届き者がいると思えば! こんなハッカー少女と出会えるとはな! 僥倖僥倖!」
そんな音声が聞こえてくる。
「例のオークションの参加者か?」
「いいや。私はプラネットDOSの開発者。ジム・クウェルとでも言えば通じるかな?」
ジム・クウェル。義賊を名乗るハッカーだ。
正義のためと称して数々の不正や汚職を暴き、果てにはプラネットDOSなんて代物まで作り上げた。エアの存在を除けば、世界最強のハッカーだろう。
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