第5話 テクノパシー
にしても妙だ。PCの類を持っているように見えない。スマホも最近は高性能な機種があるが、ここまでのハッキングを連続で実行可能なスペックではないはずだ。
「マスターキーは、あなたたちのような悪の手に渡ってはいけないもの。絶対に取り返さないといけないの」
「マスターキーとはなんだ? セキュリティ突破ツールか? お前が作ったプログラムか何かか?」
少女は呆れたような視線を投げかけてきた。
「違いますけど。私はツールもハードもなくても電子機器くらい支配下に置ける」
狂人の戯言と切り捨てても良かったが、現実に起きていることを鑑みるに、そうとも言い切れない。実際、大した装備も無しにエレベーター管制システムを支配していたんだからな。
「ではどんな手を使った?」
「テクノパシー」
「は?」
「だから、テクノパシー。テレパシーの対機械バージョンとでも言えば伝わる?」
少女は腹立たし気に答えた。そんな一般的とも言えない単語を急に分かれと言われても無理がある。だが、テレパシーのような真似を機械相手にできるとなると、相当色んなことができる。回線接続の有無に関わらず、例えば近くにある俺のスマホにハッキングを仕掛けるくらい造作もないということか。だが。
「無制限に乱発できるというわけでもなさそうだな」
俺は努めて冷静に分析を続ける。へたり込んでいたところを見るに、テクノパシーの使用はかなり体力を消耗すると見える。それに、まだテクノパシーが使えるのなら、とっくに俺たちのスマホを乗っ取り、『解除してほしければ解放しろ』と言ってくるはずだ。つまり、無敵の能力ではない。
ファンタジックな超能力が出てきて困惑しているのが本音だが、そんな弱みを見せるわけにはいかない。こいつが危険な敵である可能性は明らかなんだからな。
「そうね。でもね、カリーム・アル・ナブーさんに、ライラ・アミーンさん。あなた達が機密情報を勝手に売って儲けていることは、さっき読み取り済みよ?」
「……しくじったな。ライラ」
「もう勝負はついたってわけね。こんな少女に弱みを握られるなんて」
ライラはハンドガンを腰にしまった。少女は両手を掲げる。
「早く手錠を解いて。それと私に協力しなさい」
「なんでお前なんかに……」
「NISの追っ手を撒くのは相当大変でしょうね?」
俺たちの裏切りを本部に告発することくらい、当然してくるか。どうやら、追い詰められたのは俺たちのようだ。
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