Act.11:因果落着



 潮風が絡みつく、海鳥の鳴き声が、静寂の橋の上でこだまする。

 信じられるのはひたすら磨き上げた己自身。それ以外には、もう何もいらない。


 胸の内から湧き上がる衝動が血管を通って全身をめぐり、指先にまでそれが達した瞬間、カレンは全速の疾走で駆け出した。


「──速い」


 想像していた以上の速度。彼女と交戦したアンの報告で認識していた体感速度を明らかに上回っている。足運びに全く迷いがなかった。


「そうか、靴か。本体ならそりゃ履き慣れたもん使ってくるよな」


 やはりあの時、複製体が履いていた新品の靴は、彼女本来の動きに幾ばくかの制限をかけていたのだ。それはほんの僅かな差なのかもしれない。しかし逆を言えば、カレンは本当の全力を出さないままに、ホムンクルスであるアンの速度と拮抗していたのである。


 デュールの照準から逃れるように、左右に大きく移動しながら接近するカレンを制すべく、移動先を予測したデュールの銃口が閃く。しかし相手はひっきりなしに移動する上、的の小さい目標だ。この距離で照準を左右に振られると命中はおろか足止めにもならない。


 弾雨を掻い潜りながらなおも移動を続けるカレンは、慎重にデュールの行動を見ていた。彼の扱う銃、エストレージャXK-9の装弾数は十六。軽い取り回しと装弾数の多さは近接での撃ち合いと防衛において有効。リロードの隙を突こうにも、サブアームを含めた全弾を撃ち尽くすまで、ひたすら逃げに徹するのはあまり現実的ではない。

 

 それにこれは、デュールの魔力が結界の維持で枯渇していることを前提にした話だ。

 術式なしの正面対決などと嘯いてはいたが、所詮はヤクザ者同士の口約束。いざともなれば術式に頼るだろうし、カレンとてそれは同じだった。この戦いにおける真の絶対的ルールは、勝利か死、それ以外の全てはただの幻想だ。


 その場合、デュールには符術による実質的なリロード時間の短縮がある。撃ち尽くした先から次の銃を補充し、即座に攻撃に転じられるのが、デュールと通常のガンマンの決定的な差だ。

 

 だが、結界の維持のために術式が制限されていることだけは確実。常に圧力をかけて銃弾を消費させ続け、飛び道具を失ったのを見計らって一気に畳み掛ける。


 しかしそれだけでは足りない。敵は当然リロードの隙を警戒するだろうし、そこに無策で突っ込んでもリスクの方が大きい。


 ならば、そもそも撃たない状態にしてしまうのが最善。カレンは左右の揺さぶりから一転、不意に直線コースでデュールの間合いを侵略する。

 虚を突かれたデュールが再度銃を構え直すも、すでに銃口の手前にまで侵入していたカレンの前には意味をなさなかった。


「クソッ!」


 迂闊だった。リロードに入るまでは突っ込んでこないと踏んでいたが、その意に反してカレンは正面から切り込んできたのだ。


 瞬く間に懐への侵入を果たしたカレンは銃把を握るデュールの手を抑える。デュールも負けじと体を引こうとするが、カレンは踏み込みのついでにデュールの足の甲を踏みつけ、その後退を許さない。


「クッ……」


 腕と足を抑えられ、デュールは硬直を余儀なくされる。そして次の瞬間、唐突にマガジンが落とされる。銃把を抑えていたカレンがリリースボタンを押したのだ。


「てめえっ、この──」


 瞠目するデュールに対し、カレンの口角が僅かに上がる。これでこの銃に残った弾丸は薬室チャンバー内の一発のみ。すかさずカレンは空いていた手で銃の遊底スライドを掴んで押し込み、薬室に残っていた弾丸を排莢しつつ、その動作に連動して渾身の肘打ちをデュールの顎に打ち込んだ。


 瞬間、デュールの視界がぐらりと揺れた。肉薄されてから時間にして二秒弱だろうか。徹底的に無駄を削いだ連結した動きで、打撃と搦手を両立させるカレンの近接格闘術には、驚愕以外の念が浮かばない。


 だがカレンの攻撃はそれだけでは終わらなかった。カレンは肘打ちの直後、押し込んだスライドを今度は力任せに引き抜くと、抜き取ったスライドのパーツをデュールの肩口目掛けて突き立てたのだ。


「グァッ……」


 血飛沫と共にバレルとスプリングが弾け飛ぶ。デュールの手に残されていたのは、もはや銃としての体裁を完全に喪失した鉄くずだけだった。


っ……テメエこの野郎、調子に乗んじゃねえぞ」


 普通なら痛みで前後不覚になってもおかしくはない。しかしデュールは逆にそれをトリガーに怒りを増大させ、肩口に突き立てられたスライドを握るカレンの腕を掴み取る。


「おめえも一発もらっとけや」


 鬼の形相でカレンを睨み据えたデュールは掴み取った腕ごとカレンの体を引き寄せる。カレンは反射的に体を引こうと半歩下がるが、踏みつけていた足がデュールの足から離れた瞬間、今度はデュールが意趣返しとばかりにその足を踏み付け返した。


「しまっ──」


 カレンが瞠目に目を見開いた次の瞬間、顔面にデュールの頭突きがめり込む。衝撃が脳を揺らし、意識が撹拌される。一見ストリート仕込みの喧嘩殺法のようでいて、直前に足を踏んで退路を塞ぎ、空いた手で重心を崩しながら確実にダメージをねじ込む布石をデュールは張っていた。

 技術に裏打ちされた大胆かつ繊細な打撃。そういう手札もあるのかと、揺れる思考の間でカレンが歯噛みしながらも強引に距離を空けた。


「よう、男前になったじゃねえか。ええ? カレン・ニンフェア」

「それ、セクハラよ」

「今更ハラスメントもクソもあるかよ。こんなゴミ溜めみてえな街で」


 鼻骨を砕かれ、大量の鼻血を流すカレンをデュールが挑発するが。カレンはため息一つなく眼光のみで応じる。大丈夫だ、激情はない。あくまでも思考はクリアだった。先の反撃には驚いたが、今のやり取りで銃一挺と右肩を潰した。もう先程のような早撃ちは出来ないだろう。


 とはいえ、先の反撃による負傷で鼻腔内の動脈が切れた。失血で死ぬほどではないが、絶えず喉に流れ込んでくる血液に煩わされて判断が鈍る。


 一方、デュールの方は改めて目の前の敵の脅威を思い知っていた。さすがはホムンクルスと正面から渡り合うだけの技量。洗練された動きは見た目以上の速度と滑らかさで襲いかかってくる。これは実際に体験して見なければその凄まじさを実感することは出来ないだろう。


 やはり近接戦闘ではこちらが圧倒的に不利。挑発して頭に血が上ってくれれば御の字だが、鼻血で気付けが効いているのか、いまいち効果は見込めない。これ以上はただの無駄口だ。


 両者共に距離を取りつつ睨み合う。互いにとっての最適解がどこなのかを探り、蒸した静寂の中で次手を組み立てる。


 近接と銃撃、互いの間合いが食い違っているこのマッチアップで、戦いの趨勢を決めるのは脚力の差。しかしカレンとデュールとでは、その速度の差に天地ほどの開きがあった。それを埋めるためには、デュールはどうあっても射撃による牽制で接近を食い止めるしかない。


 だが、そのためには手持ちのリソースが心もとなかった。メインアームを喪失し、残る武装はサブアームのオートマグ一挺にナイフが二本。マガジンの予備は一つ。そして虎の子の呪符が一枚。仮に結界を解いたところで、展開のために消費した魔力はもう戻ってこない。であれば、あくまでも決闘という体裁をあちらに信じ込ませるためにも、結界の術式は解除するべきではない。


 無論、デュールは敵が馬鹿正直に術式なしの縛りを真に受けているなどとは考えていなかった。必ずどこか、思いもしないタイミングでカレンは複製の術式を使ってくる。

 だが逆に言えば、それが尽きれば勝機はこちらにある。そのためにも、デュールはまずカレンに鬼札を切らせる必要があった。


 瞬き一つの隙が致命に至るほどの緊張感の中、静寂を突き破って駆け出したのはデュールだった。しかし向かう先は後方ではなく、むしろ逆。デュールは距離の有利を捨ててカレンに突っ込んでいったのである。


 迎え撃つカレンが正眼に構え、敵の出方を見極める。果たしてデュールが取り出したのは、曇り一つなく磨き上げられた殺意の閃く一本のナイフであった。


「私相手にあえて近接戦を選ぶとはね」


 もう驚きはない。カレンの研ぎ澄まされた理性が、完全に感情を凌駕していた。意識の全ては眼の前の情報全てを拾うために動員されている。それ以外のノイズは湧き上がった先から意識の慮外に放逐していく。

 自身を一個の戦闘機械キリングマシーンへと昇華させたカレンの目が捉えたのは、これ見よがしにナイフを突き出すデュールの袖口に隠れていた一枚の呪符であった。


「甘いのよ!」


 カレンが吠える。ギリギリまで引き付けたデュールの突進をいなし、武器を持つ手を掴み上げると同時に、袖口の呪符を引き抜いた。しかしデュールも無策で突っ込んだわけでは決してない。カレンが投げのモーションに入るのを感じ取るや否や、即座に脱力して力の流れをぐ。


 唐突なベクトルの乱れを察知したカレンが投げを諦めて打撃戦に切り替える──まさにその時だった。デュールの腕を掴むカレンの手が緩んだ瞬間を見計らい、再度デュールは全身に力を込め、手にしていたナイフに全体重を乗せて振り下ろす。

 

 カレンの格闘術はスピードと技を軸に、相手の行動に合わせた最適な動きでカウンターを合わせるせんを旨とするもの。他のカウンター主体の拳士と違うのは、自らも積極的に仕掛けつつ、相手の行動を誘発する点であり、恐るべきはその見極めの速さと正確さである。


 柔と剛、力と技、陰陽相克おんみょうそうこくして円環と成す。その源流を司るのは両者の間を絶えず巡る力の循環。カレン・ニンフェアはその流れを読み取ることに長けていた。

 だが、一度ひとたびその循環を乱し、力の押し合いにまで持っていけば、体格で勝るデュールに軍配が上がる。密着状態の今この瞬間が、それを狙える絶好の機械であった。


 咄嗟に両腕をクロスさせて振り下ろされたナイフを凌いだカレンであったが、無理な体勢で受けたために次手を封じられていた。強引に組み伏せられ、なおも万力のように力を乗せられたナイフの切っ先が、カレンの頬を舐めずるように刻む。


「よう、どうだ。カレン・ニンフェア。感じるか? 命に手が届く瞬間を。複製体任せの身の上じゃ、決して味わうことのない死の温度を。」

「クッ……」


 狂気に口角を吊り上げながら、覆いかぶさるように顔を近づけるデュールの問いが、カレンの脳裏をこだまする。常に安全な場所から事を動かしていた彼女が、寄る辺も縁も失って初めて至った境地。決してやり直しの効かない生死の交錯が、カレンの魂を震わせる


「うおおおぉぁぁぁッ!!」


 裂帛の気合と共に両者吠え猛る。迫りくる死の重みに骨を軋ませながら、肩口から噴き出す血飛沫に喘ぎながら、耐えるか押し切るかの攻防が絶叫の中でせめぎ合う。


 突きつけられた切っ先がまさに喉元にまで届こうとしていた時、カレンの逆襲が始まる。額も重ならんばかりの至近距離にまで迫っていたデュールの顔面を目掛け、カレンが口の中に溜まっていた血を吹き付けたのだ。


 思わぬ奇襲にデュールが一瞬の狼狽ろうばいを見せ、それを好機と見たカレンは体を捻りつつ脱力し、ナイフの軌道から一挙に逃れた。

 全体重を乗せたまま地面に突き立てられたナイフが根本から折れ、つんざくような金属音を上げて宙に舞う。

 さらにカレンは流れるように身を翻してデュールの左腕を絡め取り、上腕を両脚で挟み込んで固定するや否や、腰を反らせて一気に関節を極めた。目にも止まらぬ速さで決まった腕ひしぎ十字固めにデュールの顔が苦悶に歪む。


 しかし、痛みの中でかろうじて回っていた思考が、デュールに疑問符を投げかけた。

 ここに来て寝技グランドに持ち込むのはどう考えても悪手だ。確かに近接戦においてはカレンが一枚も二枚も上手だが、関節を極めている間はカレン自身も動きが取れない。それは飛び道具を持つデュールにとってはチャンスでしかなかった。先の攻防で右肩を負傷してはいるが、このような密着状態であれば照準の必要すらなく、銃口を押し当てて銃爪ひきがねを引くだけで勝負は決する。


 これ以上ない好機。痛みに神経を蹂躙されながら、もうまともに動かない右手で銃を取り出したデュールが照準を向ける──しかしそれは、さながら食虫植物が花弁を広げるが如き甘い罠だった。


 瞬間、デュールはほとんど直感で照準をカレンの体から上方へと向け直した。するとそこには、今まさにデュールの頭を蹴り潰そうと襲い来る裸体の女があった。

 関節技を決めてデュールを拘束し、互いに身動きが取れない膠着状態。それはデュールにとってのチャンスであると同時に、カレンが術式を発動する上でも都合の良いタイミングだったのだ。


「クソが、エグいタイミングで切り札出しやがって」


 想定はしていた。彼女が術式に打って出てくることは常に頭の中に入っていた。であればその時間を作らせないことが何よりも優先される。


 であれば、カレンはそれに抗して自ら隙を作りに来る。相手に勝ち筋を匂わせて油断を誘う。ここに至るまでにデュールがその身を持って思い知ってきたことだ。


 だからこそ、デュールもまたこの瞬間を狙っていた。


「──我が血の元に集えsprung,von,meinem,blut


 残り少ない魔力を振り絞り、紡がれた詠唱が呪符に刻まれたコードを実行する。

 直前の攻防でカレンが打ち払った呪符が、狙いすましたこの機に起動したのである。


 次の瞬間、強烈な光と耳をつんざく爆発音が両者を包む。仕掛けたデュールはすでに防御の体勢を完了していたが、完全な意識外から奇襲を食らったカレンはそうもいかない。デュールが符術によって召喚したのは一個の閃光手榴弾スタングレネード。浄化の光もかくやとほとばしる閃光と轟音が、情け容赦なくカレンの視覚と聴覚を焼き果たす。


「……クソッタレファック


 真っ白に焼けた視界、耳鳴りさえ遠い無音のさなか、臓腑ぞうふを焼き裂く鉛の感触だけが、カレン・ニンフェアの五感にいつまでも響いていた。







 かろうじてまだ息はあった。閃光弾で前後不覚になった隙に、本体腹部へと撃ち込まれたデュールの弾丸は、内臓を完膚なきまでに破壊して致命の傷へと至らしめ、今はもう呼吸さえもままならない。


 仰向けに倒れ伏したカレンの視界には暮れなず薄明はくめいの空が広がり、背中から伝わるアスファルトの熱が、かろうじて彼女の意識を現実に繋ぎ止めていた。


「……負けたのね、私」

「ああ、お前の負けだ。分かるか? これが教訓だ。複製体に修羅場を押し付け、痛みからも死からも逃げてきたお前が、ついぞ勝ち取ることのなかった教訓だ」

「──何を言ってるのか……聞こえないわ」

「聞こえてんじゃねえか」


 空一色だった視界にデュールの顔が映り込む。どうやら最後の最後まで、この男はあくまでも彼女の「逃げる」という選択肢を許さないつもりらしい。


「どうして、お前はこんな馬鹿げた勝負に私を乗せたの?」

「別に、ただの気まぐれだ。あのままナメられっぱなしで事件を終わらせたくなかった。それだけだ」

「そう……それで」


 明滅する意識の中で、カレンの中に残されていた最後の疑問にようやく得心つく答えが出た。全てのアジトを潰され、もはや逃げる場所などどこにもなかったカレンの周囲には、常にイコノクラスィアの追跡がかかっていた。


 しかし、待てど暮らせど彼らの凶弾が彼女に向けられることはなく、生殺し同然の状況の中で彼女はこの橋まで辿り着いた。あくまでもこの男の手で事件に幕を引くために、彼らは逃げ惑うカレンと付かず離れず、しかし決して逃さない位置取りで張り付いていたのだ。


 そう、この男もまた、この街の運命を盤上に乗せたゲームに、自身の魂を賭けて臨んでいたのである。


「負けていたらどうするつもりだったの?」

「そん時ゃもう死んでんだろうが。その後の事なんか知らねえよ。そんな事考えて戦ってる奴から死ぬんだ。お前がそうであったようにな」


 あくまでも冷徹にデュールは言い放った。この男に、生にも死にも大した差はない。過去も現在も、未来でさえ、この男には流転する時間の中で佇む一つの状態に過ぎないのだ。


 強いわけだ。術式も体術も並の上、少し頭の回転が速い程度のチンピラに過ぎない男が、ここまでカレンに拮抗したのも、この男の常軌を逸した死生観故だった。


 この男は、自分の死を全く恐れていない。いや、恐れていないのではなく、受け入れているのだ。己の行いの果てに降りかかる全ての結末を、この男は誰にも委ねない。それはまさに罪と罰の本質を体現し、因果応報の深奥に達した者だけが持ちうる強さ。そんな人間に、自身の因果から逃げ続けてきたカレンが勝てる道理などあるはずもなかった。


 彼女にとっての真の天敵とは、身体能力で自身を凌駕するアンでも、術式相性の悪いダンテでもない。このデュールという男こそが、彼女にとっての最大最悪の天敵だったのだ。


「悔しいわ……この日のために全てを賭けてきたつもりだった。完璧な計画のはずだった。だけど、お前に粉をかけてしまったがばかりに……。けれど、それも私の因果……私は届かなかったのね、彼女に……」


 呼吸が、脈が、冷たく凍りついていく。黄昏が宵闇に移ろうように、カレンの意識もまた闇へと解けていく。

 もう、焼け付くようなアスファルトの熱さも感じない。何もかもが、冷たい夜の中で時を止めていく。


「そうだ、今回の件についてノウェムからお前に伝言だ」

「…………なに?」


 最後の最後まで、どこまでも容赦がない。一体どんな罵声を浴びせられることやら。

 でもまあ、それもまた因果。どうせ逃げられないのなら、せめて最後くらいはそれに向き合おう。

 その覚悟については、ついさっきこの男との戦いで学んだばかりだ。


「お前は死ななければならない。けれど、初めて書いた脚本にしては、なかなか上出来だった。とさ」

「…………そう」


 それっきり、カレンは二度と目を開けることはなかった。彼女が今際の際に何を思い、何を抱いて死んだのか。それはデュールには知る由もない。

 彼女が憧れ、憎み、ひたすら追いかけ続けてきた黄金の夢は、縁もゆかりも無い一人の天敵によって打ち砕かれた。


 しかし少なくとも、彼女がその死に際に浮かべた最後の表情は、憎悪とは程遠い、実に満ち足りたものであった。

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