Act.10:断罪の足音




 ─LAST DAY─


 雨季の前の暑い夏の、黄昏に暮れる暗黒街。一人の女が、屋根を借りているモーテルの門をふらりと出て、思い惑うかのようにのろのろと橋の方へと歩いていた。


 蒸した温室のような熱気が、潮風に乗ってジワリと纏わりつき、海鳥の鳴く声さえもが胸の内をささくれ立たせる。当て所ない苛つきと焦燥感が喉から潤いを奪い去り、もはや何度目なのかも分からない電話先の不在信号ビジーシグナルが、無情にも鼓膜を揺らし続けていた。


 寄る辺もよすがも絶え果てて、ひたすらの孤独が西日のように心に照り付ける。もはや取り返しのつかない過ちに苛まれながら、女はただ橋の方へと歩き続けた。その道程はまるで、墓標を背負いながら自らが入る墓穴を目指すかのような、一片の希望もない旅路だ。一歩踏み占めるごとに後悔が押し寄せて、涙が滂沱ぼうだと溢れ出てくる。しかしこの局面で、彼女に真に懺悔ざんげの心があったのなら、あるいは彼女に待ち受けていた結末はもっと違っていたのかもしれない。彼女にとっての最大の瑕疵かしは、そう言った後悔のすべてを、次の拍子には他者への怒りに転嫁してしまう無責任さだった。


「あいつのせいだ……あいつの」


 そう、全部──全部あいつのせいなのだ。あいつが、あの男が、シャムロック・ザイドリッツが、あの時余計な真似をしなければこうはならなかった。


 殺してやる──殺してやる──殺してやる──


「殺してやるッ! 使いっ走りのクソデュールが!」


 湿った空の彼方に、女の魂を切るような叫びがこだますら残さず消えていく。

 しかしそこにただ一人、その言葉を聞き届ける影があった。


「おいおい、そいつはテメエの逆恨みってもんだろ。ええ?」


 女が振り向いたその先。陽炎揺らめく橋の向こうから、真っ黒なコート姿が死神もかくやとにじり寄る。コツリ、コツリと。血溜りとうしおの匂いをまとわせながら、男は迷うことなくその銃把じゅうはに手をかける。

 その姿はまるで、死と断罪を司る地獄の判事のようだった。


「よう、はじめましてだな。カレン・ニンフェア」


 仰々しくもそううそぶくのは、シボラ難民キャンプにて彼女が出し抜いてみせた便利屋の一味、その筆頭である銃使いガンスリンガーデュールこと、シャムロック・ザイドリッツであった。


「なんで……どうしてお前がここにいる!?」

「なんでって、そりゃあアレだよ」


 カレンの問いにさして感慨を見せるでもなく、デュールは背後の虚空を指差す。するとそれを待ち構えていたかのように、遠い黄昏の彼方から風切り音を上げながら何かが近づいて来た。


「あれは……」


 その正体を悟ったカレンは、この異常事態の顛末てんまつをついに知った。

 アジトの位置を特定されたことも、他のアジトが根こそぎ潰されたのも、FLPEが一向に電話に出ないのも、やはりこいつらだ。こいつらが全ての根回しをしていたのだ。


「AC-101──グラシャラボロス……エルドラ人民解放戦線のガンシップ!?」


 それは黒鉄くろがねの機体で空を舞う局地制圧攻撃ヘリ。形式こそレムリア空軍から払い下げられた旧式ではあるが、FLPE独自のチューンナップが施された機体性能は、とりわけ市街地における対地攻撃において悪魔の如き戦闘能力を発揮する、北方ゲリラの主力戦闘ヘリであった。


「ま、見ての通りだ。俺達はあの後すぐに解放戦線の本拠地まで行き、連中のボスと直接交渉をした。FLPE、アンヘル〝ジャッカル〟ロドリゲス司令官と水入らずでな」

「それで連中のヘリをタクシー代わりに使ったっていうの……?」


 FLPEの本拠地はメイザースに勝るとも劣らない修羅の地だ。そんな場所に何のアポも取らず、正面から堂々と押し入って五体満足でいられるはずがない。それこそカレンがこれまでしてきたように、慎重に距離を図りながら信用を得なければ、門戸を叩く前に全身を蜂の巣にされるのがオチだ。

 だが、現実はこれだ。彼らは何の代償を払うこともなく、現地の協力を得て数百キロ離れた北の果てからこうして舞い戻ってきている。


「ふん、分からねえか。連中は俺達を同志として迎えてくれたぜ? 流石にシャンパンにハイヤーとまではいかなかったが、お前にしてやられた爆傷の手当くらいはしてくれたもんさ。どこかの誰かさんが、人の名前を使って宣誓書にサインしてくれていたお陰でな」

「──!?」


 それは、カレンがノウェムとデュールの個人取引に介入し、FLPE宛の上納金を送る際に使用した連名書類。カレンが作戦を遂行するにあたって障害となる人物を戦線のシンパに仕立て上げることで、シンジケートに潔白を要求されることを見越した工作だ。


 やくざ者の彼らが信奉するのは、書き割りの御託などではなく、より立体的で明確な成果のみ。本質的に信頼関係の存在しない綱渡りの間柄において、必要なのは何よりも行動による証明だ。


 それがどれだけ理不尽で不条理なものであっても、彼らは自らの潔白を証明するために火中の栗を拾わざるを得ない。ノウェムが彼らに事態収束の任を与えるのは確定事項だった。


 デュールはその立場を利用し、自身をFLPEの同志と偽ることで司令官との交渉を実現した。自薦ではなく他薦カレンの太鼓判を押された者であれば、尚の事司令官たちはデュールを信用しただろう。

 自身が仕掛けた罠をこんな形で利用されるとは思っても見なかったカレンの背中に、氷柱が刺し込まれたかのような寒気が走った。


 もちろんこんなのは推測だ。しかしそう考えなければこの奇天烈な状況に合理的な説明がつけられない。

そして交渉の過程でデュールたちはカレンの謀略を暴露し、自身に着せられた濡れ衣を晴らすと同時に、彼女を戦線に迎えることで発生するリスクを仄めかした。結果、司令官はカレンとの約束を反故にし、全てをなかったものとして彼女の存在を黙殺したのである。


「正直危なかったぜ。お前が複製の術式を扱う魔術師であると気づいた時点では、俺達にはもう打つ手がなかった。だが、こっちにはお前に勝るとも劣らない、筋金入りの負けず嫌いがいたもんでな」


 デュールが視線を向けた先、FLPEのヘリに登場していた黒いローブ姿が目に入る。

 この作戦において、カレン・ニンフェアが最大の警戒心を持って対処した天敵。天網のダンテ──サン=フリッツ・マルクスだ。


「お前と複製体、どちらが行動していてもその行動に矛盾が起きたことは一度もなかった。それは複製体の活動が停止する際、その記憶と経験が本体のお前に還元されるからだ。複製体は魔力を持たない通常の人間として振る舞い、お前はその特性を利用して周囲を欺き続けた」

「…………」


 カレンの沈黙を肯定と受け取ったデュールが、更に続ける。


「だが、完璧に思えた偽装工作も、ただ一点だけ綻びがあった。それは複製体が死亡した時だ」

「あの状況で、そんな余裕がお前たちにあったというの?」

「ほんのちょっとしたきっかけさ。成長真っ盛りのうちのアンがこう言ったんだ。マナが変化して出来た体が活動を停止したら、その後この体はどうなるのか? ってな」


 あの時、完全に出し抜かれる形となったデュール達が見出した最後の希望。いかに本物の人間と見分けのつかないコピーであれ、それが魔術によって構築されたものであれば、そこには必ずそのためのプロセスが存在する。

 当たり前過ぎて誰も考えもしなかった前提条件に、未熟なアンの素朴な疑問が彼らを立ち返らせたのだ。


「複製体が死に、その情報が本体に還元されるのなら、そこには必ず魔術的なプロセスが挟まれる。しかもその作業は絶対に中断が出来ない。そこまで分かれば、後はダンテの術式の出番だ。複製と本体の並列化処理に割り込みをかけ、その足跡を辿ることで、お前の居場所を特定する。まさか墓場の地下に隠れ潜んでるとは思いもしなかったがな」


 心の底からの侮蔑を込めながらデュールが真相を暴き立てる。銃把に伸ばした手は一点の淀みもなく、いついかなるタイミングにおいても神速の抜き撃ちを放てる絶好の位置と角度で空間に固定されていた。ここまで長く喋っておきながら、凄まじい集中力だ。


「さて、答え合わせはここまでだ。なにか質問は?」

「一つだけ……残りのアジトはどうやって突き止めたの?」

「ああ、その事があったな。あんまり自分の功績をひけらかすのは好きじゃねえんだが」


 今更知ったところでと言いたげな顔でデュールは鼻白む。


「複製体の活動中、本体であるお前の肉体は飲まず食わずだ。一人でケツも拭けねえその体の世話をするのは、一体誰なのかと思ってな」

「…………」

「術式の秘匿性を担保する以上、シモの世話を第三者に任せるわけにはいかない。そこで俺は気がついた。活動停止中のお前は、誰にも見つからないような場所で、何かしら機械的な手段で生命活動を維持してるんじゃないかってな」


 まるで見てきたかのような言い方で、デュールは淡々と自らの推理を明かす。

 反論の余地もないその理論に、カレンはただ固唾をのんで聞き入る他に術を持たなかった。


「そこまでくれば後は単純な物理の問題だ。隠れ家に置かれた生命維持装置の電力消費を誤魔化すのにも限界がある。定期的にメーターが動き、電気以外のライフラインが通っておらず、なおかつ書類上は誰も住んでいない場所。この三つの条件を満たす場所にお前のアジトがあると、電話でイービスとノウェムに助言したのさ」


 カレンの偽装工作を成立させる上で、決して外すことの出来ないもう一つの綻び。

 複製体が稼働中の間、本人が身を潜めている間に使用する設備の維持コスト。長期間同じ拠点を使用するリスクを回避するため、カレン複数のアジトに分散して保険をかけていた。


 しかしその行為は、定期的にアジトを変えることで使用時と未使用時の電力消費のパターンを生み、その時と全く同じパターンを示している拠点の存在を明るみにする。


 結果、同一の電力消費パターンを示す複数の拠点が一網打尽にされたというわけだ。通常そういった情報は外部には漏れないが、カルテルやシンジケートであれば、電力会社に圧力をかけて情報を得るのは容易い。とりわけ各界とのつながりの深いシンジケートの人脈を持ってすれば、この程度のデータなど井戸端会議いどばたかいぎ感覚で引き出せたことだろう。


 カレン自身、そのリスクが頭になかったわけではない。しかしそのリスクは、いくつものブラフと陽動の重ねがけで無視してもいいレベルにまで低減された事柄だった。

 それを、よもやこんなチンピラにピンポイントで暴かれることになるとは……


「天はわれに味方せず……ね」

「そいつは違うぜ、カレン・ニンフェア」


 完膚なきまでに破綻した計画。僅かな間隙に運悪くも付け込まれてしまった不幸を嘆くカレンの言を、しかしデュールは真っ向から否定した。


「お前の失敗の最大の要因は、自己利益の追求のために虎の尾を踏み続けたことだ。ボスを踏み台にし、組織を踏み台にし、俺達を踏み台にし、死者を踏み台にし、挙げ句複製とはいえ自分自身すら踏み台にした。その上でお前だけがぬくぬくと安全なカプセルの中で頬被りを決めていた。そうやって何もかもを踏み躙って、その度に怒りを蓄積させ、この街に渦巻く執念を呼び起こした。要するにナメ過ぎなんだよ、人間を」


 決然と喝破かっぱするデュールの双眸そうぼうは、憎悪と怒り以上に、カレンに対する哀れみが込められていた。

 誰一人として味方するものもなく、誰一人として受け入れることの出来なかった彼女の愚かしさ。それはともすれば同じ孤独を原点とするデュールが辿っていたかもしれない、彼自身のもう一つの可能性に他ならなかった。

 デュールとて自身を正しいなどとは微塵も思っていない。彼だけではない。この街に生きる人間は、みな等しく自己利益のために他者を踏みつけにして息をしている咎人の群れだ。

 本質的に彼らも彼女も何も変わらない。


 ではなぜ、両者はここまで違ってしまっていたのか。それは先のデュールの言葉が全てだ。義にもとり、道理につばし、己の犯した行為の責任から逃げ続ける不埒者に対してこの街が下す沙汰は、絶対的な破滅以外に有り得ないのだ。


 それを示すかのように、黒鉄に彩られた断罪の銃口がカレンに突きつけられる。


「お前がこれから死ぬのはな、カレン。お前の計算に誤りがあったからじゃない。お前がただクソ野郎だったからだ。お前の犯した罪は、お前だけのもんだ。運にも天にもおっ被せることは許されねえ」


 撃鉄が降ろされる。薬室の弾が撃発の瞬間を待ち構える。あとほんの僅かな重みが銃爪ひきがねに乗れば、9mm弾の礫が咎人の額目掛けて牙を剥く。もはや術式も意味はない。どれだけ速く身を翻そうと、あの銃弾から身を守る術はない。

 彼女はもう、どこにも逃げられない。


「お前に……何が分かる」

「ああ?」

「お前に何が分かる! シャムロック・ザイドリッツ。私の何が分かるんだ? 才能に恵まれたお前に、いい気になってホムンクルスを侍らせているお前に! 何も持ち得なかった私の何が分かる。私の屈辱の、絶望の何を理解できるというの!? 所詮この世は奪うか奪われるか。何も持ち得なかった私には、奪う以外の選択肢なんてなかった。そのために必要なことをしてきただけ。それの一体、何が悪いって言うのよ!」


 激情のままに怨嗟を撒き散らすカレンの言葉を、しかしデュールは一欠片の憐憫を見せることもなくすがめる。呆れや怒りではない。シンプルに理解できなかったのだ。彼女が何を言っているのかを──まさかこの女は、この期に及んでなお


「何言ってんだ? お前」

「なんですって?」

「お前、難民キャンプで見せたあの大立ち回りは何だ? 化け物レベルの身体能力を持つホムンクルス相手に、術式なしの素の体術だけで完封したあの格闘技術は何だ? 俺達を完全に欺き、あと一歩のところまで計画を押し進めた知略は誰かの入れ知恵なのか? あのノウェム相手に、十五年も秘書をやってのけた根性は嘘だったのか? それはお前が、誰からも奪うことなく、血の滲むような努力の果てに勝ち取ったもんじゃねえのか?」


 まるで罪を諭す牧師のように、デュールが静かな語り口でカレンの認識を改めさせる。

 そう、誰かを踏み台にしているだけでは、彼女はここまでたどり着けなかった。彼女自身に確固たる才覚がなければ、この計画は机上の空論に終わっていたのだ。それを実行に移した事実そのものが、カレン・ニンフェアが獲得した才能の証左にほかならなかった。


 己の認識すら誤っていたという現実を突きつけられたカレンは、もはやその場にいることさえ耐えられないほどの自己憐憫じこれんびんに打ちのめされていた。

 そのあまりのいたたまれなさに、彼女の視線は無意識に橋下の水面へと向けられていた。


 死にたい──そう、もう死にたいのだ。哀れすぎて、惨めすぎて。


 しかし、そんなカレンの逃避を、足元に撃ち込まれた一発の銃声が容赦なく阻む。


「あんまり俺を失望させないでくれよ。お前がどんな人生歩いてきたのかなんざ、こちとら知ったこっちゃねえのさ。身の丈に合わねえ勝負にオール・インして、お前はその盤上にこの街の全てを乗せた。それで十分じゃねえか。生きるの死ぬのは大した問題じゃねえ、肝心なのはその一手に己の人生全てを賭けた。その事実だけだろうが。なのにそのザマは何だ? 手前てめえで勝手にレイズ仕掛けて、手札が悪いと見りゃショーダウンも待たずにボードごとひっくり返そうなんざ、虫がいいにも程があんだよ」

「だったら、私はどうすればいいのよ。これ以上何をどうすればいいのよ……」


 かくも惨めに取り乱すカレンの姿は、まるで聞き分けのない餓鬼のそれであった。

 そう、これが彼女本来の姿。全ての欺瞞を暴かれ、剥き出しの本性を露わにした、弱く脆い人間の姿だった。

 それを察してなお、デュールは氷点に至った眼差しでただ一言発するのみだった。


 ──戦え、と。


「俺と戦え、カレン・ニンフェア。今お前にできるのはそれしかない。お前の持ちうる全てを賭けて、もう一度ここで勝負しろ」


 そう言うと、デュールは手持ちの呪符を全て空中に放り上げる。バラバラに宙を舞う呪符が、やがて空力を無視した軌道で旋回を始め、二人が対峙するメイザース大橋の一画を囲うように広がっていった。


「──術式展開」


 それは、これまで彼が武器召喚のために運用してきた符術のそれではない。呪符から発せられたマナの光が、それぞれ互い合わせに繋がるように展開し、やがてドーム状の結界となって二人の周囲を覆う、符術本来の使用用途からなる純粋な結界術であった。


「拒絶結界だぜ、カレン。もうここには誰の邪魔も入らない。俺とお前だけだ。今の展開で俺の魔力も空っぽだ。術式なしの正面対決で相手してやる。その上で、俺はお前の全てを否定する」


 デュールの言葉に感化されたカレンの体が、不意に軽くなるのを感じた。彼の展開した拒絶結界の仕様が本当なら、今この瞬間においてのみ、彼女は自身を苛んでいたメイザースの恐怖から完全に解き放たれたことを意味していた。


 だが、その後は?


「私が勝ったらどうなるの? 今は誰の邪魔も入らないとはいえ、私がお前を殺せば結界は解けて元の木阿弥もくあみよ。こんなことに意味なんてないわ」

「意味ならあるさ。そのためにわざわざ連中のヘリに乗ってここまで来たんじゃねえか。お前が無事にここを切り抜けたら、今度こそ俺達の負けだ。あのヘリに乗ってFLPE本部まで行けばいい。お望み通り、この街は地獄と同義語となり、それと引き換えにお前は全てを手に入れる」

「忘れてないわよね。私はお前のところの人形をボコボコにしたのよ?」

「そっちこそ忘れてねえか? 俺はその人形の主だ」


 この千載一遇の好機を前に、カレンの瞳に消えかけていた闘志の火が再び灯る。

 そうだ。この男の言う通りだ。彼女自身が自らの執念で積み上げてきたものが確かにある。研ぎ澄ました技と、あらゆる状況を想定する知力、決して諦めない不屈の心。何もないと否定し続けてきた自分の中にも、こんなにも明確で強靭な感触があったのを、カレンはようやく理解したのだ。


 ──穏やかな夜に身を委ねるな。

 消えゆく光に向かって、怒れ、怒れ。


「感謝するわ……シャムロック・ザイドリッツ」

「気にすんな。こいつは俺のワガママだ」


 結局、この街の人間は押し並べてこの、これだ。

 己のエゴのために、他人を踏みにじるか、己を研ぎ澄ますか、そこにしか違いがない。この街に渦巻く絶対の法則が、カレン・ニンフェアの脳裏に高らかと掲げられる。


汝、力に随えSequere,potentiam,tu』と。


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