10 狩りを見る

 シルルテ村を出てからシルルの森へとやって来た、俺とミドルさん達、計四人。

 ここに来るまでの間に、俺はとりあえずの説明を聞いた。


 まず、シルルの森に入ったら、全方位を警戒しながら、モンスターと遭遇しないようにする。全方位を警戒といっても、俺達以外の音をしっかりと聞いておく、みたいなことである。

 もし遭遇した場合は、急いでそのモンスターから見えないところまで逃げるか、分かれて逃げてモンスターと出会わないように森から抜け出す。


 ……まあ、気をつけることとすればそれだけだった。


 「ミドルさん、シルルの森ってどんな動物がいるんです?」


 この世界に来て、この森に入ってから(転移してから)ゴブリンとしか遭遇していない俺にとって、このシルルの森にいるという動物に少し興味を持ってしまっていた。


 まあ、今の俺が想像出来る範囲の動物といえば、そしてなにより森に関している動物といえば……シカやウサギやイノシシといったところだろうか。他にあるとすれば、凶暴な動物である……クマや熊や熊、熊しか出てこなかった。


 だが、ここは異世界だ。そんな人間に優しい動物とか凶暴を超えてくる動物とかがいるかもしれない。


 だから、俺の予想を超える程の動物の名前をミドルさんは口にするのではないだろうか。


「どんなのってー、ウサギとかが主に生息してるかな。まあ、最近はゴブリンの繁殖のせいでウサギとかを狩れなくなってるんだよ」


 手に持っている手作りの槍で道の端から生えてきている葉っぱなどをどかしながら、ミドルさんは答えてきた。


 それよりも俺が想像していた通りの動物の名前がミドルさんの口から出てきてしまった。


 いや、別に出てきちゃいけないというわけではないのだけれど、せっかく異世界に来たのだから少しだけ期待をしてしまっていた。


 ま、これからもっと期待をすることもあるだろうし、今回はどうでもいいということにしておこうと思う。


「んー、あんまりいないな」


 同じくミドルさんと同じようなことをしていたオーンさんがそう言ってきた。


「そうだな」


 フォンさんもそう言う。


をんー、このまま行ってもウサギは見つからないだろうし、場所を大きく変えるとするか」


 シルルの森にいるウサギを探すのを止めたミドルさんは俺達にそう言ってくる。


「「そうするか」」


「分かりました」


 俺とオーンさんとフォンさんはそう言って、ミドルさんの後を付いて行くのだった。




 場所を大きく変えるためにしばらく歩いていると、ミドルさんが止まるように指示を出してきた。


「待て」


 右手を挙げて俺達の動きを静止させる。


「ウサギがいたのか?」


 静止させてきた理由をフォンさんが静かに問うと、


「ああ。二匹いるから、作戦はいつも通りで行くぞ。ナギル君はここで見ていてくれ」


「あ、はい。分かりました」


 俺には待機の指示をしてくる。当たり前だろうな、当然のように思いながら俺は返事をしたのだった。


 すると、同時に三人がここから静かに移動を開始した。ウサギを狩るためだろうな。


 俺はその行動を静かに守ることにした。物陰の先で楽しそうに草を食べている?二匹のウサギを観察しながらミドルさん達も同時に観察しながら。


 ちなみにウサギがいる場所を言葉にして言ってみると、周りが円のような形で出来ている物陰のような場所である。


 ミドルさんとフォンさんが移動をした場所は、俺が待機をしている場所から見て左右の場所。


 オーンさんが移動をした場所は、俺が待機している場所から見て反対側の場所。


 移動を完了したミドルさん達。


 まず初めに行動をしたのは、オーンさんだった。


 オーンさんは手に持っている槍をウサギに向かって構えながら、気づいていないウサギの方へ静かに凄く静かに足音一つ立てずに近づいて行く。


 ウサギと距離を縮めることの出来たオーンさんは瞬間、ウサギに向けていた槍を一気に投げた。


 投げられた槍はオーンの手から消え、二匹のウサギのすぐ真横の地面に突き刺さった。素早かったのでウサギは気づくのに遅れ、地面に突き刺さった槍を見て、その場所から逃げ始めた。


 二匹のウサギが逃げた先は、ウサギ自分達が隠れるために使うだろうと思われていた物陰。まあ、草や葉っぱなどがある場所だ。


 五秒を数え終えるうちにウサギ達は逃げるために使う物陰へと、入る瞬間にぴょんっと飛んで入って行く。


 しかしその行動は、ミドルさんとフォンさんに読まれていた。


 そしてその理由はすぐに分かる。


「「捕まえたぞ」」


 物陰にウサギが隠れるのと同時にミドルさんとフォンさんの声が聞こえてきた。


「今回も完璧だったな」


 その声を聞いたオーンさんもそう言ってくる。


「おつかれさまです」


 俺も一応そう口にしておく。


 見事ウサギ二匹を狩ることが出来たミドルさんとフォンさんが俺が待機している左右の場所の物陰から姿を現した。


 姿を現してきたミドルさん達の手には狩りに使う道具以外に一匹づつ仕留めたウサギが掴まれていた。


 掴まれているウサギを見てみて、俺はこう思ってしまった。


 凄く普通のウサギだな。


 そう、俺が見たものは転移する前の世界でも何度も見てきた普通のウサギだった。


 異世界だから、もっとこう、少し変わった感じのウサギを脳内にて想像させていたのだが、異世界のウサギは普通に俺の想像の逆を行ってしまったみたいだ。


 だが、そんなことはないのかもしれない。もしかすると、ウサギだけがこんな普通で他の動物は違うのかもしれない。


 そんなものが脳内にて勝手に想像されてしまったのだが、さすがにウサギがこんな普通だったのだがらということで、そんな期待は記憶の隅っこへと追いやった。


「あと二匹くらいは狩りたいな」

 

「せっかくだし、だな」

  

「じゃあ、見つけに行きますか」


 二匹のウサギを狩ったミルドさん達はそう言って賛成すると、


「ナギル君、行くよー」


 場所を変えるということを俺に伝えてきてくれた。


「分かりました」


 俺はそう言って、移動を始めたミルドさん達の後をトボトボ付いて行くのであった。


 しばらく歩いて行くと、再び二匹一緒になっているウサギを見つけることが出来た。

 その前にと、


「「これ持っててね」」


「あ、はい」


 ミルドさんとフォンさんの狩ったウサギ二匹を渡された。


 そこからミルドさん達は先程のウサギ二匹を狩った時のような同じ手順にて、新たに発見することの出来たウサギ二匹を狩ることが出来たのだった。


 その後、四匹ウサギを狩ることの出来たミルドさん達は、これ以上シルルの森にいると危ないということだったので、シルルテ村に戻ることになった。


 戻る途中、珍しい植物などがあったのでミルドさん達に質問しまくっていた自分がいた事については言わないことにさせてもらいます。


 しかし質問しまくっていたのにミルドさん達はめんどくさがらずに答えてくれたので、凄くありがたかった。


 こういうのって普通嫌われたりめんどくさがられたりするものだと俺は思っていたのだが、異世界が良いのかミドルさん達が良いのかわからないが、凄くありがたく思っている。


 それと、異世界最高でした!

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