8 女神様面談
「えっとー、どうしたの?」
俺に抱きつき、俺の目をじっと見つめている少女に問いた。
見た感じだと、小学一年生くらいだろう。すると抱きついたまま少女が口を開いた。
「……リーナ」
自己紹介をすると再び口を閉じて少女、リーナは俺の腰より上の部分にしっかり抱きついてくる。
「この子はこの村の村長と生活してる子なんだよ。でも、村長の子どもでも孫娘でもないのさ」
すると、倉庫から出てきたミドルさんがそう話してきた。
「それって……」
「親を早くに亡くしちまってるんだよ。それもこの村の生まれではないんだ」
「え……」
異世界に来てまさかの出来事に俺は驚いてしまう。
日本にいるときにはニュースなどでそういった話題が出ていたが、まさか異世界にも似たようなことがあるとは思っていなかった。
リーナは、俗に言う親亡き子というわけのようだでも、村長と一緒に生活出来ているのなら問題は無いのかもしれない。
「ん? リーナちゃんがくっ付いてるのか? そんな珍しいことがあるもんなんだな」
「本当だ。もしかしたら、ナギル君のこと父親って思ってるかもな」
ミドルさんの後ろから現れたオーンさんとフォンさんが口にする。
「えっ? 急に何言ってるんですか」
「なんというかなー。この子が村長と暮らしてるって事はミドルから聞いたよな?」
「はい。今さっき」
「でも、暮らしてても村長はまだ指で数えられるくらいしか話してないんだよ。それも初めて話すようになるまでに、たしかー、一ヶ月くらいはかかったと思う」
この話で分かることは……俺は何故か出会ってばっかりのリーナに懐かれてしまったという事。その理由はまだ不明。
「とまあ、こんなところに突っ立ててもナギル君が使う家には着かないし、まずはそこまで向かおうか」
倉庫の前で話すのもダメだと思ったのかフォンさんが言ってきた。
俺たちはそれに賛成して、俺が使うことになる家に向かって歩き出すのであった。
その間、リーナはしっかりと俺の腰より上のの部分に抱きついており、とても歩きづらかった。
しばらく歩くこと数分。
俺がこれから使うことになる家に着いた。
「結構しっかりしているんですね」
家を見た俺の第一声はそれだった。でも、そう思うのが普通だと思える。
内装はまだ見てないから分からないのだが、外装は木を素材に建てているということが見て取れる。
それに雨が降っても大丈夫なようにか、木の表面に何かが塗ってあった。
現実世界でよく見る水対策のような塗り物を使っているのだろう。
「まあ、そうだな。いつだれが使ってもいいようにと作っておいた家なんだが、今まで使ったことが無くてな。まあ、ナギル君が来てくれたおかげで、この家も使うことが出来るしな」
俺の質問にオーンさんが答えた。しかし、今まで誰も使ったことがないのか。それでも、新品とかの匂いはなさそうだな。
そう思いつつ、俺は内装を見る為に中へ入って行く。
「あ、そういえば、靴って脱がなくていいんですか?」
現実世界にいる頃は毎回脱ぐのが当たり前だったため、この世界でどうするのかはまだ知らない。なので、俺はそう質問したのだ。
「ん? 靴か? そりゃあ、脱ぐに決まってるだろ。汚れちまうからなぁ」
ミドルさんはそう言って、俺の肩を叩いてきた。木をを担いでるから、地味に痛い。
「ですよね」
苦笑いしながら俺は靴を脱ぎ、家の中へ入っていく。その際、リーナも靴を脱いで家の中に入ってきた。
うーん、子どもに懐かれるのいつぶりだろうか。俺はリーナを見ながらそう思ってしまう。
家の中に入ってみて最初に俺が感じたのは、しっかりした作りになっていてちゃんとした家になっているという事だった。
そもそも、村っていうイメージが頭の中に固定されてしまっていたせいで、家の作りは簡易的なものばかりだと思っていた。
「中もしっかりしているんですね」
俺は感心しながら、右手にある空いた場所へ歩いて行く。
俺の視界に入ったのは、特に家具などが置かれていない部屋だった。
「ここは王国や王都などにある部屋をまねて作っているからね。この部屋は、たしか、リビングだった気がするよ」
リビングと言われた場所の中に入ってきたミドルが教えてくれる。
その後、トイレをする場所など見た。トイレに関して言えば、昔の現実世界と似たような感じの作りになっていて、トイレをする際には蓋が付いているのでそれを外してするそうだ。
すると、結構深く掘ってある穴があるのでそこに入っていく。臭いがキツイかもしれないがどうにか方法を探すまでは辛抱しなくてはならない。
「ありがとうございます。ミドルさん、オーンさん、フォンさん」
「いやいや、手伝ってもらったこっちが感謝するよ」
「本当にありがとな。ナギル君」
「それじゃあ、近いうちに歓迎会的なものがあると思うから」
「あ、はい。分かりました」
最後に俺はそんな会話して、ミドルさんたちと別れた。
そして現在俺はリビングで横になっている。
それとリーナはというと、ミドルさんたちが帰っていってしばらくしてから家から出ていってしまった。
リビングにて横になっている俺は、窓らしき空間から見える外の景色を見て呟いた。
外は知らないうちに夕焼け色の空に変化しており、俺は知らないうちに一日を過ごそうとしていた。
普通に学校にいると思ったら、神界という知らない場所にいて、女神であるシルテに出会って、色々した後に異世界に転移して、ゴブリンと戦ってーー。
本当に今日一日だけでも凄い量をこなしたと思う。
それに、俺の脳みそは今にもキャパオーバーしそうである。
でも、まあ、眠いおかげかあまり考えなくて済むからキャパオーバーしなくて済む。
そんなことを考えているうちに、眠いだけだったはずなのにウトウトし始めた。
ヤバイ。もう寝そうだ。
意識が消えかける中、俺は最後にそう思って、眠りの中へと入っていくのであった。
◇
「ローーーーン」
寝たはずなのにそんな声が聞こえてきた。
「おーい。起きーーーよ、ローーーーンーーーー」
時間が経つことに何て言っているのかが聞こえてくるようになってくる。
「おーい。起きなよ、ロリコンナギル」
そんなしっかりとした声が聞こえる同時に俺は飛び起きた。
「誰だよ! 俺、ロリコンじゃないんだけど!?」
目を開くと、視界に映っているのはシルルテ村の家ではなく一度見たことある光景だった。
あれ? ここどこかで……。
そんなことを考えていると、
「やっと起きたよ。ロリコンナギル」
俺の事を呼んでいる声が聞こえた。だが、この声はどこかで聞いた声だったのだ。
記憶を辿りながら声の聞こえた方を見る。するとそこには、見知った顔触れのシルテ様が立っていた。
「え? なんでシルテ様がここにいるの?」
シルテ様を前にして俺はそう口にしていた。けれど誰だって、いや人それぞれかもしれないが、もう会わない人にまた会ってしまったら誰でもそう口にしてしまうんじゃないんだろうか。だって、それが当たり前だろうから。
「私がここにいるんじゃないよ。ロリコンのナギルを私がここに呼んだんだよ。まあ、ここはいわば夢の中みたいなものさ」
「夢の中ね……。てか、ロリコンってなんだよ!」
「ロリコンはロリコンだよ! リーナちゃんだっけ? あんな少女に抱きつかれちゃって!」
え? 女神ってそんなことまで知ってるの?
「知ってるに決まってるじゃん。私の担当は、異世界に送られる人たちの整理。それに、一日にやるべき仕事のノルマは少ないんだから終わったら見てるんだよ!」
「見てたんだ」
俺がそう言うと、シルテ様が口元を隠して恥ずかしそうなそぶりを見せた。
だがすぐに、
「暇だったから見てたんだよ」
そう言ってそっぽを向いた。
「そうなんだ」
俺は特に気にすることのないような反応をする。ま、全く気にしてはないが。
しかし、また戻ってきたのか。夢の中って言われても現実味が全くないな。周りに広がっている白い世界、初めてここに来たときに思った、どこまでも続いていそうな世界を改めて感じてそう思う。
「でも、どうして俺をここに呼んだんだ?」
そう、シルテ様がここに俺を呼んだ理由が全くわからんのだ。
異世界転移するためにここに呼ぶならまだしも、俺は既に異世界転移している。
なら、シルテ様は何のために俺をここに呼んだのか?
俺がそんなことを考えていると、
「別にぃ〜。特に理由なんてないよ。しいて言うなら、暇だったからかなぁ〜〜〜」
シルテ様は振り返ると、そう口にしてきた。
んー、シルテ様の言ったことからすると……暇だったからではなく、寂しかったことになるのでは?
「っ違うよ! 寂しくなんてなかったもん!」
てんぱりながら必死に否定してくるシルテ様。やはり、寂しかったのだろう。このてんぱりようから。
そんなシルテ様の姿を見ながら俺は心の中でそう思った。
「ナギルが考えてることは全部分かるから、女神に対してあまり変なことは考えない方が良いよー」
「……え、あ、はい」
シルテ様の優しさ溢れる?忠告に静かに俺は返事をした。
そこで何かを思い出したのかシルテ様はあっ!っと何かを思い出したかのう様子だ。
「そういえば、異世界に行ってみてどうだった? 楽しかった?」
異世界についての質問をしてくる。
「んー。今はまだかな。まあ、マイペースに楽しんでこうかなって思います」
「そうだね」
今はまだ、こんな解答しかできないが、もう少ししたら少し変わった解答が出来るかもしれない。
そう思いつつ解答シルテ様の質問に対して答えた。シルテ様もまた、そうだよね、といった表情をしている。
「もうそろそろ起きる時間だね」
「え? そうなんですか?」
どうやらこの夢の中から俺は覚めないといけないようだ。
シルテ様と話せて楽しかった。と、そんなことを思っている自分が俺の中に潜んでいる。
「それじゃあ、また次の機会にね」
その言葉を最後に俺は夢から目を覚めることになった。
ただ、シルテ様の表情はどこか暗そうな雰囲気をしていた。
最後にそんなことを思いながら、俺はこの夢の中で意識をなくした。
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