6 シルルテ村
ゴブリンとの戦いに最強チートな能力無しで無事に勝利をもぎ取った俺は、しばらく歩いた所で休憩していた。
「俺の能力値ってどのくらいの強さなんだろ……」
実際のところ高いのか低いのか分からないが、高くないとは思っている。
どちらにせよ、マイペースに異世界生活を送れるならそれで良い。それと変なことや面倒なことに巻き込まれないなら尚更良い。
それが異世界生活を送る上での俺の考え。
肌に風の気持ちよさが伝わってくる。マイペースな人種にとっては気持ちよく眠りにつけるくらいの作用が含まれているかも知れない。
「っん」
カクンッと一瞬意識が飛びかけてしまう。眠りにでもついた時にはゴブリンに見つかってしまいゲームオーバーな未来しか見えないので、危なかった。
「んぅ〜。そろそろ行こうかな」
背伸びをしながら立ち上がると、俺は道なりに沿って歩みを再開させた。
しばらく歩いていると、奥の方から光が見えてくるのが分かった。俺の歩く速度が若干上がる。
「おおぉ〜」
遂に森から出ることが叶い、景色が森林から草原へと切り替わる。緑なのは変わらないけど。
しかしながら、広大に広がる草原の景色は日本住まいだった俺からすれば新鮮で心地良く感じるものがあるなと思ってしまう。日本じゃ田舎に住んだらしない限り自然に触れ合う機会は無いから。
草原の辺りをくまなく見渡すと、一箇所だけ村のような雰囲気を出している場所を見つけた。
ここから分かるのは村があるということだけ。相当な距離があり離れている為、全容は分からない。
正直、村なんて初めて見たのでよく分からないのも事実だ。
ただ、日本にあった某有名アトラクション遊園地等と比べると確実に小さく感じるのは確かだと思う。
もしかすると、あの村がシルテ様が言っていた村かも知れない。
森から出てしばらく歩いていた俺に、声がかかる。
「そこの君! ちょっとこっちに来てくれないか!」
呼び声がした方向を振り向いて見ると(元から正面に居ました)、六十代ほどの男性三人組が居た。白髪混じりのようだ。
「え? 分かりました」
二つ返事で俺は急足で男性達の下へ向かう。
「どうかされました?」
男性達のところに着いた俺は、呼ばれた理由について尋ねた。
「恥ずかしい話なんだが、こいつをあの村まで持っていってくれんかな? どうも歳のせいで、足腰がキツいんよ」
「あー、そういうことですね。それじゃあ、俺はこれを待てばいいんですか?」
「お、持っていってくれるのか! そうだなー……ワシらはギリギリ一つずつ持てるくらいだから、残りを頼んでもいいか?」
「分かりました」
話しはトントン進んでいった。まあ、話を簡単にまとめるとこうだ。
目の前にある男性達は、村で使う薪の元となる木や食料などを俺が先ほどまでいた森ーーシルルの森に取りに行っていたとか。
その途中、ゴブリンの声が聞こえてきたため切った木だけを持って、村に帰っていた。
ただ、歳のせいで帰っている途中に足腰を痛めてしまい、帰れるのだが時間がかかってしまうとか。
なので、ちょうど森の方から出てきた俺は話しかけ、了承が出たら手伝ってもらおうと考えていたらしい。
というわけなので、人助けと自身の強化的なものも兼ねて俺は手伝うことにする。
「よっこいしょ」
そんな掛け声と共に、俺は二本の派手に切られている木を担ぐ。
現在世界でこんなことをしてしまえば、一発で体を壊してしまいそうだが、この異世界ならどうなるのだろうか。
それにBP:25もある。もしかすると、筋力も関係してくるかもしれないから、ひ弱な俺でも担ぐことが簡単になっているかも知らない。
少なからずそんな可能性を胸に、俺は二本目を担いだ。
「……重くない……な」
少なからずの可能性を胸に持った結果、担ぐことは出来た。
ただ、重くないとはいったものの、二本持っているから若干重い。それでも担げないっていうわけじゃないので、村まで持っていくことにする。
「お? 重くないのか?」
二本の木を普通に担ぐ俺の姿を見た三人うちの一人が、話しかけてきた。
「まあ、重いですけど、担げないってわけじゃないですよ」
「マジかい!? 今時の子がこんなことを言うなんてな」
「うちの村の男共とは、大違いだな」
「だな」
男性たちはそんな会話をしながら、そして地味に俺が少し混ざって、男性たちはガハハハと笑っている。
そこから俺は質問ばかりされていた。どこからきたのかとか、何歳なんだとか、魔物と戦ったことがあるのかとか、色々。
というか、話が絶えなかったので結構楽しかった思いをしてる。
質問ばかりされたあと、男性三人組の武勇伝を聞かされた。
そして気がついたときには村に到着しているという状況になっていた。
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