5 ゴブリンを倒す
木の影に隠れ、超静かにすること約数分。
俺を見失ったからだろうかゴブリンは周りをキョロキョロしながら、俺がいる方向へと歩いてきた。
そんなゴブリンを静かにじっと見る。
どうすればいいんだ。隠れて、隠れ続けてあのゴブリンがどこかに行くのを待つか?
こういう時にこそ女神、シルテ様から貰ったチート能力とかでこの場をどうにかできるのだろうが、各能力値が『1』だから倒すのは無理だろう。
と言うかその前に、俺はそもそも魔物と戦ったことすらない! それにチート能力とは言ってるものの本当にチートなのかは俺には分からない。これが普通なのかもしれないし。
どうする、どうすればいい!?
必死になって考えまくるが、一向にこの場をどうにかする答えが出ない。
そんなとき、ゴブリンが俺がいる方向とは逆向きの方を向き、見始めた。
これは好機?かと思いつつも俺はどうにか冷静になり、ゴブリンのこの後の行動を静かに続ける。
しばらく続けたが……変化が起きない。
動かないのか?
結果、誰もいないはずの方向を向いたままゴブリンは動かなくなってしまう。
この時俺はチャンスだと思い、木の影に隠れるのをやめて、ゴブリンがいるすぐ近くの後ろの方まで静かに音を立てないように移動を始めた。
ノソノソ、と移動をしていると……ゴブリンが振り返ってきた。
俺はビクッとなってしまい、服が草のようなものに引っかかってしまう。
ただ、ひらひらしている草ならまだしも、運悪くそれは少し硬さがあった木のようなもの。
「うおっ」
そのおかけで俺は声を出してしまうが、本能的に小声になっていた。
ゴブリンが何かを訪ねてくるかのような不気味の悪い声で鳴くと、ゆっくりゆっくり近づいてきた。
そんな状況下に立たされてしまった俺の心臓は今にも飛び出してきそうな勢いでバクバクと早くなり、ヤバそうな感じになってしまう。
そこでふと焦っていた俺の視界の隅に、ものすごく先が尖っている木の枝があった。
勢いよくその木の枝を拾った俺は、唱えるようにして同じ言葉を心の中で言い始める。
覗いたら、喉を刺す。覗いたら、喉を刺す。覗いたら、喉を刺す。覗いたら、喉を刺す。覗いたら、喉を刺す!
そして……ガサガサという音を立てながらゴブリンが覗いてきて、目が合った。俺は一気に草むらから飛び出すと、ゴブリンを地面に向かって叩きつける。
俺とゴブリンは一緒に地面へ倒れていく。叩きつけた衝撃と俺の体重のせいか、ゴブリンは後頭部?らしきところを地面におもいっきりぶつけた。
そこですかさず、手に持っていた木の枝を喉に向かっておもいっきり刺すと、すぐに抜いて、もう一度刺す。
それをしばらく何度も何度も繰り返す。
すると、繰り返している間バタバタとしていたが、一時して動かなくなってしまった。
「死んだ……のか……?」
俺は遂に動かなくなったゴブリンを見ながら呟いた。
生きるか死ぬか、どっちかの境との戦いだった。
正直、必死すぎて記憶が曖昧になっている。
そこで、体がフワッとした感覚を感じてしまう。
それは、体の中で何が変化を起こしたような感覚だった。
ふと思い、
「ステータス」
そう呟き、ステータスを確認してみると、本当に変化が起こっていた。
実際には、凄い変化を起こしていると思うけど。
ーーーーーーーーーー
ナギル=ナツナギ
種族:異世界人
レベル:無し
攻撃:10、防御:10、魔力:10、俊敏:10、器用:5
スキル:『剣術:上級』『火魔法:上級』『水魔法:上級』『風魔法:上級』『土魔法:上級』『光魔法:上級』『闇魔法:上級』
女神恩恵:『女神のいじり』『能力経験値10倍』『神力解放』
ーーーーーーーーーー
神界で見たと時よりも変化を遂げている。各能力値が『1』だったのが一気に『10』になっている。
たぶんこれだけ上がったのも『能力経験値10倍』のおかげだと思える。
しかし、レベルに関して言えば『無し』のままだった。
「ん?」
俺はそこで『剣術:上級』のところにNEWという文字が書いてあることに気がついた。
気になってしまったので、押してみる。
『剣術:上級』に『連続突き』を追加。『連続突き』の効果で『攻撃:5』を追加します。
するとそんな文章が現れた。
「連続突きって、さっきのそのままじゃね?」
ゴブリンとの戦闘を思い出して笑いながらそんなことを口にしてしまった。
「ゴブリンの死骸ってどうなるんだろ?」
立ち上がりながら、ゴブリンの死骸を見つめ、そう思ってしまう。
ここでラノベなのならナイフとかで解体しないといけないのだが、生憎ナイフとかを持っていない。
持っているとするのなら、ゴブリンの血で汚れた木の枝。
「うーん……」
どうするか迷ってしまう。んー、まあ、とりあえず思いつく一つの可能性にかけてみるとするか。
そう思った俺は、しゃがみ込む。
そのまま木の枝を使って、ゴブリンの耳をどうにかしてちぎる。
ハサミもカッターも剣も包丁もないので、汚い形にしかならないな。
まあ、これで解体的なスキルが手に入ればいいのだがなぁ。
しばらくしていると、ステータス画面にあるスキル欄にNEWと書かれたものが追加されていることに気がついた。
まさかなと思いつつそれに視線を移す。
予想通りなのだろうか? 俺は、新たなスキルを取得していた。
解体術・・・魔物の素材などを綺麗に解体できるように補助してくれるスキルです。
「おぉー」
一つの可能性にかけてみた結果、俺は『解体術』を取得することが出来た。
これで、魔物を解体するときは手を予後づことなく解体することが出来る。
「まだ解体できるのかな? 解体術」
そう口にしながらゴブリンのもう片方の耳を解体していくと、ちぎらないと解体できなかったゴブリンの耳がものすごく綺麗に解体……千切ることが出来た。
それから俺は、ゴブリンを解体していった。
結果、耳二つと牙十本程度解体することができた。
「あ」
しかしあることに気がついた。
この解体されたものを入れる袋を持っていないということ。
手で持っていくというのはあまりやりたくないので、今回は諦めて起きていくことにする。
「よし、行くか。ここに残ってたら、何か起きそうな気がするし」
立ち上がった俺はステータス画面を閉じて、この場から去る。進む道は、先程と同じ方向だ。
その後、血の匂いをかぎつけたのか数体のゴブリンがやって来た。落ちていた耳と牙を手に取ると元の道へと戻っていった。
そして俺は、そんなことを知る由もなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます