2 異世界転移する

 後から気付いたのだが、クラスメイト達が居なかった理由は、俺だけ何故か取り残されてしまったとのこと。不明だが、クラスメイト達はすでに召喚主にいるとのこと。


 しかし我ながら本当に落ち着きがあると思ってしまう。昔から落ち着きがあるよねと家族から良く言われていた。なんで焦らないんだろうかと不思議なくらいだ。


 けど異世界に生きるってなったら何事にも落ち着いて対処していくのが一番だろうなと思う。


 一回一回反応してたら疲れそうだし。


 そしてひと段落した後、今後のことについてシルテ様と話をすることにした。


「それで、俺ってこれからどうなるんですか。魂ごとあの世行きとかだったり?」


「そのことなんだけど、今から『召喚の儀式』が行われたところに転移させても遅いんだよね。だからこれから私は、ナギル君には選択をしてもらいたいと思いますっ!」


 テンションアゲアゲシルテ様になってる。


「まず、近くに村がある森に転移させて、その村に移動をする。これに関しては私は超賛成、だよ!」


 アゲアゲからのテンションマックスになったシルテ様は、俺に凄く勧めながら体をどんどん近づけながら言ってくる。


 どこのセールスマンだよって思ってしまうな、この状況。


「んー。これくらいかな」


「俺の選択肢は、一つだけなんですか」


「他にも欲しいの? 欲張りさんだね」


「いや、一つだけなんですかとしか言ってないじゃないですか!」


「欲張りさんかと。他の選択肢として候補を出すなら、成仏しかないかな」


 ふふっと笑うシルテ様を前に俺は、


「あ、それだけで嬉しいです」


 即答した。


 とりあえず、選択肢について話を聞くことにする。シルテ様は女神なのだ、知らないことはないはず。


 それに、『召喚』という単語が使われる異世界モノには良い話はライトノベルなどを読んできてほとんどなかった、面倒ごとに巻き込まれるものばかりだ。


「選択肢について聞きたいんですけど、詳しい説明ってできますか? 『召喚の儀式』と近くの村についての」


 俺の質問に対してシルテ様は、目を逸らして考え始める。


「いいよー。本当は教えちゃいけないんだけど、これからの事を考えたいって人には特別に教えちゃうよー」


 気前よく、そしてテンション高くしてシルテ様は説明を始めた。


「『召喚の儀式』ってのは魔王討伐と戦争の為。だから、その勇者達を召喚した国にとって戦うことになるの。それに戦争とかに勝てたとしても、それからどうなるかはこの世界の廻り方次第。また戦争が起こるかかもだし、起こらないかも。次に私のおすすめシルルテ村は、ナギルくんが自由に生きてける証拠でもあるんだ。戦争に巻き込まれることもないし、魔王と戦うことをない。まあ、マイペースなナギルくんには凄く良いと思うの!!!」


 最後の方めっちゃテンション良くないですか? というか、最後だけ今まで以上に凄いテンションで言っていた気がする。


 でも、話を聞いてみただけでも選択しやすくなったと思う。


 まあ、その『召喚の儀式式』をしたところには絶対に行かない方が良いという事だけは理解することは出来た。


 ああ、ありがとうありがとう、シルテ様。


 俺は心の中で、膝を地面に置き感謝の気持ちを連呼した。


「いえいえ、どういたしまして」


 あ、


「シルテ様は心の声が聞こえちゃうんでしたか」


「そうだよ」


「で、どうする?」


 少しだけ悩んでいた俺にシルテ様は聞いてきた。が、距離感が近いんよ! もっと、自分を大事にしようよ!


 まあ、シルテ様の説明のおかげで決めることができたと思う。


「シルテ様が言ってた通りにしようと思います」


 自分で話を聞いてみて、今までの異世界モノのラノベを参考にしてみて、そして最後にシルテ様が凄く押してきたから、それを選んだ。


 シルテ様が言う事だから、信じないといけないと思う。


 何故俺が信じようと思ったのかは分からないが、感覚というやつかわからんが、体がそうしろと言っているように感じたからだ。


 ぶっちゃけ、シルテ様が女神だからっていう理由もあるけど。だから、俺は女神を信じてシルテ様を信じた。


「オッケー! それじゃあ、転移する準備を始めるね」


 シルテ様はそう口にすると、どこからともなくボードを取り出した。そのボードには、一枚の白い紙が挟まれている。そしてペンもどこからともなく取り出す。


「それじゃあ、ここに異世界でのナギルくんの情報もといステータスについて書いてくね」


 ペンを持った手がスラスラと動いて行く。


「レベルは制限なしでいいかな。各能力値はレベルが上がる原理で上がればいいしー、あとスキルはあるもの全部覚えれるようにしてーっと。あ、勇者しか使えないもの以外は使えるようにしておこうかな。あと、んー、こんな感じかなっと。それと、この辺をいじってー」


 何をしているのか分からないと言えば、嘘になる。


 異世界系のラノベを読んでいたためそこら辺の知識はあるので、何をしているのかが大体理解はできた。


 しばらく待っていると、


「よし、出来た! 手を出してみて」


「こうですか?」


 言われるままに利き手の右手を突き出すと、シルテ様が先程書き終わった紙を俺の右手の甲の上に乗せる。


 瞬間、紙は俺の手に吸い込まれるかのように手の中に入って行く。


「!?」


 俺は言葉にならない声を上げて、普通にビビっている。


 だって、紙が手の中に入ったのだ。 これをビビらない人はどうかしてるよ。


「あ、大丈夫なやつだからね。これはステータス紙というやつで〜、面倒な説明は省くけどね。とりあえずステータスって口に出して言ってみてよ」


「なるほど。……ステータス」


 目の前にゲームのようなウインド画面が突然現れた。


ーーーーーーーーーー

ナギル=ナツナギ

種族:異世界人

レベル:無し

攻撃:1、防御:1、魔力:1、俊敏:1、器用:1

スキル:「剣術:上級」「火魔法:上級」「水魔法:上級」「風魔法:上級」「土魔法:上級」「光魔法:上級」「闇魔法:上級」

恩恵:「女神のいじり」「ステータス経験値10倍」「神力解放」

ーーーーーーーーーー


 正直、まだ現実味が無いが、目の前で起こていることが本物の為信じることにした。


 すると、近くでステータスを一緒に見ていたシルテ様が覗いてきた。


「って、何なのこれっ!? 【女神のいじり】って名前おかしくない?」


「いいんじゃないですか」


 俺は少し面白み半分を含んだ笑いをしながら言い返す。


「笑うなってー!」


 シルテ様は少し小馬鹿にされてしまったことを勘づき、俺をポカポカと殴ってきたが、すぐにやめた。


 シルテ様は俺から距離をとって、一度深呼吸をした。


「まあ、これで転移の準備も出来たし。いってらっしゃい、ナギル君」


「え?」


 行ってきます、と言いたかったのだがその前に意識が消えかける。


「おやすみなさい。がんばってね」


 意識が完璧に消える前にシルテ様のそんな言葉を聞いて意識がなくなってしまった。


 この日を境に、異世界へ足を踏み入れた。シルテ様とのお別れが若干納得いってないけど。

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