第77話 翌日のクロウベル
俺はベッドの上で色々考える。
あの後アンジェリカが帰ってくると、今度は蜃気楼の古城がいかに恐ろしかったか。
新しい魔物。
古城の主の話。
最後に俺がもって来た、竜のウロコの話になって終わった。
明日にでも皆で取りに行くと決まった所でフレイの赤ん坊、であるアクアマリンが泣き出したので解散だ。
アリシア達は巡礼と言う事で、クウガを探す旅にでるそうだ。
メンバーはアリシア、ミーティア、クィルと何とノラ。
俺が死んで……死んでないけど。
1年もたったと言う事で何時までも師匠の世話になるのは駄目と思っての事らしい。
俺が「師匠にイジメられたんだな」って言ったら師匠に蹴られた。
ノラは笑って「そんな事はないよメル姉さんは優しかった」と言わされていた。
うん。あれは言わされていたに違いない。
とまぁ1年ぶりの皆の状況はこんなもんだ。
クウガ探しに俺もいこっか? と提案した所アリシアに断れた。
師匠も別にドアホウがついて行く事もないのじゃ。と言ってたし。
「と、言う事はだ。いよいよ俺と師匠のラブラブ錬金術編が始まると思っていいよね……錬金術一切知らないけど……」
独り言なので誰からもツッコミがない。
それはそれで寂しいので毛布を体に巻き付けて寝る事にした。
――
――――
静かな湖畔の森の影から俺と、アンジェリカ、師匠やアリシア、ノラとミーティアが現れた。
というわけで馬車を借りて湖畔まで戻って来た。
目的は『竜のウロコ』の回収とその活用方法。
俺が水竜たんを魔法で出すと、水中の土の中にある『竜のウロコ』を岸辺に立たせる。
「ドアホウこれ本当に貰って来たのじゃ?」
「くれるって言うから貰って来たけど不味かったですかね?」
「これほどのモノ、ワラワは久々に見たのじゃ」
「よくわからないけど師匠が嬉しそうでよかったです」
俺が感想を言うとアリシアも師匠の方に顔を向ける。
「うわ、すごい大きい。立てかけると大きな壁みたいだね」
「持ち運びに面倒だった……」
「私が皆で狩った魔物から手に入れた『竜のウロコ』は手のひらサイズだったよ?」
「砂漠リザードだったらそんなもんだろうね」
アリシアにそう説明すると既にミーティアが『竜のウロコ』をぺたぺたとさわっている。
ノラもそっと近寄ってその表面を触りだす。
「ねぇねぇノラちゃん、これって物凄い高かったりする?」
「そうですね……メル姉さん達と採取した砂漠リザード。その皮膚から取れるレア素材の『竜のウロコ』はミーティアさんが鑑定に出した結果買取金額200ゴールドでした。それを考えると何十…………」
そうはならんでしょ。
「これも200枚じゃないの? 同じウロコだし」
「クウ兄さん……本気で言ってる?」
髪を長くしたノラは少しお怒りのようだ。
本気で言ったんだけど、使い古した剣でも新品の剣でもゲームプレイしてた時は買取金額変わらなかったし。
なんだったらさ。
アリシアが長く着用した布の服。
新品で買った布の服。
どちらも買い取り金額は一緒だ。
「これ全部ミーティアちゃん貰っていい!?」
「なわけあるか! 今日来たのはこれの使い道って奴」
「だから、ミーティアちゃんが全部使うからちょーだい! ねぇちょーだいって!」
うるさ。
「俺は聖都タルタンに買取してもらおうとアンジェリカを連れて来たの! あと師匠とアリシアに見せたくて。ミーティアはおまけ、知ってる? 見たい見たい見たいっていうから……」
アンジェリカはメジャーを使ってウロコの大きさをはかってメモしていく。
「やっぱりだめ、んーーこれを買うと国が傾きそう……聖王様から色んな権限は貰ってきてるけど、加工して売るまでの事考えると……無理かも」
「売れるのに?」
「すぐ売れるわけじゃないわよ。武具を作っても買う人間がいないと」
買う人間か。
ゲームであれば『ドラゴンキラー』とか10本でも100本でもしいれて、初期の街の道具屋で売ったりもした。
プレイ中にこんな『木の棒』が金貨1枚で売ってる店が買い取り金額何千ゴールドもする『ドラゴンキラー』を何十本も買い取れるの凄いなって思っていたが。
……現実では無理よね。
俺の実家でさえ貴族といえど、売り切れば儲かると言われるアイテムを何万ゴールドで買い取ってと持って来られても無理がある。
それの国家版だ。
「ええっと、師匠どうしましょう。要ります?」
俺は師匠を見ると、師匠は竜のウロコを触っていて色々呟いていた。俺の質問でこちらに向きなおってくれた。
「元々ドアホウがもって来たものじゃ、ワラワが意見を言う事もない……1つ言わせてもらうするのじゃが、ワラワは要らんのじゃ、高価すぎるのじゃ」
「借金まみれなのに?」
「………………利子がある借金でもないしの」
「ね。ミーティアちゃんは気にしないからー!」
「ええい! ミーティアに渡すわけないだろ!
師匠は高価すぎて要らない。
アンジェリカも高価すぎて買い取れない。
ミーティアにあげる。これは論外。
アリシアは、すごいすごいしかいわない。
頭の良いノラは、今は何も答えてはくれない。
アンジェリカに全部渡してもいいけど、アンジェリカも国で買い取れないのを貰っても困りそうだしな。
俺としては少しでもお金にしてアリシアに餞別として渡したかったんだけど。
「ええっと捨てる?」
「えええええええ! も、もったいないよ! あっでもそれをミーティアちゃんが拾えばミーティアちゃんの物になる!?」
「やっぱだめか、誰かに拾われてもなぁ。師匠のマジックボックスはどうです?」
ミーティアが「まさかの聞こえないふり!」って騒いでいるけど別に声は聞こえている、反応しないだけだ。
「容量の問題でこれ入れると他の物が入らないのじゃ」
「俺の力じゃ斬った所で素材が失われるし」
「本当に斬ったのじゃ?」
師匠の顔が疑わしい顔で俺を視る。
「私も見ていたけど凄かったよ!? 一刀両断っていうの十字斬りで四角にさ。いやーナイ君も驚いていたよ」
「結果は魔力反発が起きて力のなくなった乾燥昆布もどきが出来たわけですけど」
「ふむ…………ドアホウ。価値は下がるのじゃがこれを小さく斬ってもいいのじゃ?」
「え。師匠が?」
師匠が頷く。
「師匠の剣は見た事ないけど、俺が切れたから負け惜しみで……はっ心の声が!」
「絶対にわざとじゃろ……まぁたまにはドアホウがワラワを持ち上げるのじゃ、それ相応の事をな、なのじゃ」
師匠は果物ナイフぐらいの刃を取り出すと、そっと竜のウロコに押し当てる。
刀身が光っており、あれだけ硬い竜のウロコがチーズの様に斬れていった。
「ええ…………なにその剣」
俺の不満が聞こえたのだろう、師匠がむっとする。
「別に剣はちょっといい奴じゃ。ほれドアホウも試してみろ」
俺が師匠から小さいナイフを受け取り竜のウロコに突き刺した。
カッキンっと音がして弾かれる。
…………もう一度、ナイフを竜のウロコに突き刺す。
「ぐ! 刺さらない!」
「それ以上やるとナイフが壊れるのじゃ。貸すのじゃ!」
師匠がやると、やっぱりチーズのように細かく分かれていく。
「どうじゃ!」
「素直に関心しました。普段乳尻でか、直ぐにライトニング撃つ借金まみれの婚期遅れの師匠とは思えません」
「そうじゃろそうじゃろ、普段ストーカーすぎて一周回って何度殺そうかと思ったのじゃが、化けて出てくると面倒なので弟子あつかいしてるドアホウに認めめて貰って嬉しいのじゃ」
俺がいいたい事を言ったら100倍になって帰って来た。
「そんな師匠酷い!」
「ドアホウのほう酷いわボケなのじゃ!」
師匠が興奮するとノラが師匠を抑え込んだ。
「メル姉さん落ち着いて」
「ふん」
「ええっと、じゃぁ小さく切って貰ったのでアンジェリカ。ここから買い取れる分だけ買い取ってくれないか? 相場よりも安めでいい」
「え!? いいの? 買いたたくよ?」
「それでいい、1年以上世話になってたみたいだし……」
「気にしてないのに。じゃぁ計算するわ」
「アリシア全員に1枚つづ。でミーティアだけは3枚もっていっていいから」
「さすが変態ちゃんふとっぱら!」
これであれば話もまとまるだろう。
それでも残ったやつは湖に沈める。
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