第75話竜の鱗 終了編
野太い声で「ソイヤー」と、いうとすぐに「エイヤー」と声が返ってくる。
聖都タルタンにほど近い静かな湖畔。
全く同じ状況で文字にするとコピーしたんじゃって感じるが、蜃気楼の古城から俺達は帰る所だ。
まったくもって代わり映えしない。
聖騎士隊6人と俺。そして新たにロープで縛った『竜のウロコ』を引っ張っている水竜たん。
簡単な命令なら自動で動いてくれるのでこうして小舟の後をついてもらっている。
「で……どうなったわけ?」
「ぐったりなクロウベル君、ナイ君との話きいてなかった?」
「一言も」
「あんなに近くにいたのにねー」
アンジェリカはゾルに意見をもとめて、ゾルも「そうですなー」と返事をしている。
聞こえなかったわけではなく、聞いてなかった。
この違いを考えて欲しいもんだ。
「あの城はアンカーみたいのがあってね。あっアンカーってのは……」
「船でいう重り、小舟でいうとその場にとどめるロープみたいなものだろ」
「そうそう。それを置いている限り時間の影響は少ないって。私達が出たら解くとか、まぁそのうちお城は消えるらしいよ……言っていたじゃない。迷惑をかけたかもってまた会う日を楽しみにしてるよってさ」
「永久に消えてくれ」
「またまたークロウベル君少しおかしいよ?」
周りから見たら本当におかしいんだろうな……。
前世の記憶もどってさ、突然昔の……それも自分が嫌な時代の顔が現れてみろ、だれだってこうなるよ。
「はいはい…………そういえば」
「なにかしら?」
「いや……よくアンジェリカが襲って来なかったなって」
あれだけ子種子種言っていたんだ、俺だったらこの遠征で襲う。
「あーアレの事? 友達は襲わないわよ。それにもう……うおっとあぶないあぶない。友達になった人にも襲わない」
「なんで言い直すの……」
「さぁ」
霧が晴れて来た。
対岸に懐かしいっても2日ぶりの陸地が見えてくる。
岸について周りを確認する。
今回の作戦は聖騎士隊の作戦であり準備も凄い質素だ。
見送りはあったが出迎えなどはない。
「体が硬い……まだ船の上にいるみたいだよ」
「そう? 私達は聖王様に報告してくるけど、くる?」
「行かない、これの準備もあるし」
俺は水竜たんを指さした。
じゃぁね。とアンジェリカ達が徒歩で消えていった。
だって……馬車ないもん。
俺も急いで帰りたいが『竜のウロコ』の事がある、まずは水竜たんで水辺に大きな穴をあける。
そこに『竜のウロコ』を隠して土をかけた。
最後に水面が透きとおるまでまって無事に隠れたのならOK。
心配ではあるが、こんな大きい石壁みたいなのを発見した所で持って行く奴もそうそういない。
本当は水竜たんに見張りでも頼めたらいいが俺が離れると消えるからな、あと魔力の消費も激しい。
そもそも湖には立ち入りを禁止されているし盗んだ奴がでたら俺が徹底的に探す。
それでも見つからなければ、もう火炎リザード1万匹でも2万匹でも狩ってやる。またアレに会うとかよりよっぽどいい。
「クウガが師匠をつれてくればマジックボックスで持ち運べるだろうし」
さて……俺も行くか。
湖畔沿いにある道をテクテクと歩いて行く。
――
――――
聖都タルタン。
その出入り口について俺は一息ついた。
何もかも懐かしい……テンション爆上げだ。
湖近くの釣り屋から馬車を乗り継いでの帰還だ。
「さぁ師匠、アリシア達と離れたら一緒にくらしま……ああ、そうか一人だった」
テンションがた落ちである。
「そういえば、純粋な一人旅ってのは屋敷を追放されて以来だな。すぐに師匠に会ったけど……」
………………家から街にでて街はずれの墓場までいくのが旅に入るのか? と、冷静に考えてしまった。
どうみてもお使いレベル。
いやお使いよりも酷い。
「ま、まぁ旅に距離は関係ないしってか街が騒がしいな」
全体的に活気がある。
いや、前から活気がある街であったがお祭りが始まる前みたいだ。
俺は近くにいた青い制服姿の奴に声をかける。
「あのすみません」
「何の御用でしょうか? 傷の手当てなら教会。私も一応回復魔法は使えますが重症でしたらご相談に乗ります。いえ代金は一切頂きません」
「そうじゃなくて。お祭りですか?」
「ああ。なるほど……旅の方でしたか。新しい聖女様が誕生し
巡教、教えを広めるための旅。
いや、それはわかる。
聖女様が誕生し?
「ちょ!」
「な、なんですか! 暴力はいけません。肩が痛いです」
「聖女様って……誰!?」
「アリシア様ですが、どうがなされましたか?」
俺は一言謝って急いで走った。
なんで!? その答えは時間がたっているからだ。
あれから何年、何十年だ。
あのクソ野郎の『何十年、何百年たってるかもね』という言葉がよみがえる。
馬やで馬を駆りて急いでアンジェリカの屋敷に走った。
屋敷全体は変わってない、俺が敷地内に入って来たので驚く顔が何人もみえた。
練習場で大きく手を振るアリシア。
その横で椅子に座って欠伸をしながら俺を見た師匠と目が合った。
アリシアは気持ち背が大きくなった気がするが師匠は変わってない。
うん。さすが何十年、何百年と生きるBBA……もとい20代後半から30代前半の綺麗な姿のままだ、おねー様。おねえたん。
空が一瞬で暗くなると、上空から魔力の気配がわかった。
「んなっ! 『水盾』! いや『水盾・連』!!」
両手を上にあげてウォーターシールドを張る。それも何重にもかな寝かけする。
目の前が真っ白になった。
絶対にこれ師匠の『ライトニングフルバースト』だ。
1枚目の水盾がはじけ飛ぶ。
2枚目の水盾も同じく。
3枚目、4枚目、5枚目も消し飛んだ。
がんばれ6枚目、お前で最後だ!
俺の目の前で師匠のライトニングフルバーストと水盾が相殺された。
「うおおおおおおおおおお……………………はぁはぁはぁ何とかなった……」
俺は馬を降りて、よろよろと師匠の所に歩いて行く。
誰も何も喋らない。
俺はやっと師匠の前つくと倒れ込む。
そっと頭を上げるとボインでお尻もキュッとなっている師匠が俺の目の前で足を組押した。
これがスカートであれば最高なのに……。
「し、師匠……」
「なんじゃ。本物じゃったか……一瞬BBAって聞こえたきがしての」
「一言も言ってませんけど!? それより今のは酷い。俺が死ぬ」
言っただけでライトニングフルバーストを撃つとか非常識だよ。
「ん、本物ならかわすと思ったのじゃがまさか受けきるとはなのじゃ。今度はもう少し大きいのを使うのじゃ」
「辞めて……」
俺の体が突然光りだす。
「フルヒール!」
「ア、アリシア!?」
「おかえりクロウ君!」
「これは回復魔法……」
さっきまでの疲労が、嘘のように『回復しない』
「アリシアよ。それは外傷専門じゃ……」
「あっごめーん」
「うん。やっぱアリシアだ……何がどうなってるの?」
「何が……ってクロウ君が消えてから丁度1年だよ!?」
は?
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