第74話 竜の鱗 本気編
アンジェリカとナイの話が続いて行く。
俺としてはもう勝手にやってくれ。と、言う感じだ。
いやだめか、竜のウロコ……結果的にコイツのウロコだけは貰っていかないと俺が来た意味がない。
攻略本でも古龍のシルエットと黒い竜のデザインはあったが、人間に化けれるなんて一文字も書いてなかったぞ。
なんだったら『この攻略ページは最後まで安心』って文字も見た記憶がある。
アンジェリカの先祖、アーカス。
そのアーカスの幼馴染が転生前の俺と同じ顔? いまだに信じられないな。
「君。おーい! クロウベルくーん!」
「え。ああ……何?」
「クロウベル君、なんだが何時もと違って怖いよ? ほら友達も増えたんだし笑おうよ」
「…………で、話は終わったのか?」
全く笑えない状況だ。
「自分と友達だよ? 光栄におもったほうがいい」
「俺は友達になったつもりはない」
「じゃぁ斬り合うかい?」
「のぞぶぶぶぶ」
俺はアンジェリカの手で言いたい事を防がれる。
「友達同士が斬り合うのは見たくないよ。それにクロウベル君にはやる事あるんでしょ?」
「…………まぁ」
「へえ! 古龍である自分に斬りかかっているくせに用があるとか、本当に勝つつもりだったのかな」
ああ、本当に勝つつもりだったよ。
どっちも急所を狙った攻撃をしたが、アンデッドなど頭を投げて攻撃してくるし、よく考えて攻撃すればよかった。
「で、ナイ君のうろこ。もらっていいって、この先にあるから好きにどうぞって」
「この場で剥いでくれればいいのに」
「人間の姿だからね、元に戻らないととれないよ」
ナイの言葉を無視して、この先。と、言う場所に向かった。
黒い壁が何重にも刺さっていてまるで迷路の様。
「で、どこ?」
「いやあるだろ?」
「どこに……騙してる?」
「クロウベルと言ったな、なんでもかんでも怒る癖やめた方がいいよ?」
「ナイ君……黒い壁しかないよ?」
は?
ウソだろ?
「まさかこの3メートルはあるカベ。これがウロコ?」
「ああ、そうだよ」
「小さいのは?」
「脱皮じゃないけど、大きい奴から落ちるんだ。小さい奴なんてないよ。結構処理に困っていてね、何枚でももっていってよ」
俺は深呼吸をして思いっきり剣をふるった。
甲高い音と共に剣が弾かれる。
斬れないか……。
「斬ろうとした人間は初めて見た……」
師匠かクウガを連れてくるか……。
「運ぶ人間を連れてくる……」
「それはいいけど、また同じ場所にいるとは限らないからね」
「は?」
「これでも人間の事詳しいんだ。世界中を勝手に動いているからね、あと友人だから忠告しておくけど、時間流れも違うまぁこれは君達みたいな命知らずなら別に気にしない事か」
「おい!」
ちっ。俺は思わず舌打ちしアンジェリカを視る。
「ナイ君! ここで一晩過ごしたら戻った時の時間は?」
「さぁ? 一晩からもしれないし100日後、無いとは思うけど100年後って事も?」
「冗談じゃない」
師匠と会えなくな……師匠なら100年ぐらいなら生きてそうだな。
流石に1000年はきついかもだが、100年後に師匠を探して、俺は当然見つけてさ、その隣には耳の長い子がいるの。
俺が師匠その子は? って聞くとするじゃん。
そうしあら。師匠は似てるのじゃろ? あのクウガとの子じゃっていうの。
「うあああああああああああああああああ!!!」
俺は目の前のウロコを強引に剣で叩く。
叩く。
叩く!!
「お、落ち着いて! どうしたのよ!」
「落ち着いてられるかー!」
聞き覚える声で「あの彼はどうしたんだい?」って聞こえてくる。
どうせナイだ無視だ無視。
「彼たまにああなるのよね」
「それは人間として正常なのかい?」
「どうだろう」
「うおおおおおお、キレろキレろキレろ」
全然小さくなる気配がない。
「彼のほうが先にキレてるねぇ」
「あっうまい」
はぁはぁはぁはぁはぁ!
俺は後ろを振り返る。
「外野うるさい!」
「怒られてしまった。ウロコが欲しいっていうから上げるっていうのにこれは酷い」
「本当ねぇ」
「そもそも自分を斬った時の気合と剣筋があれば斬れると思うんだけどね」
「え、本当?」
俺は肩で息を切らしながらまた振り返る。
「ああ”? アンジェリカ達は何でそんなに落ち着けるんだよ。何年や何百年もたつかもって」
「…………聖騎士隊だもの? 死ぬ覚悟ぐらいはしてるわよ。死にたくはないけどね」
…………さすが聖騎士だ。
もしかしてアンジェリカが子種を欲しいってのはそう言うのもあるのか?
さすが未来で魔物の大群を抑えただけある。
あっ。
待て、本来このクエスト名は『消えた聖騎士』
クエスト内容は、蜃気楼の古城に消えた聖騎士の謎を追え。
…………蜃気楼の古城に狂った竜がいて……俺はナイをみると、ナイは俺に向かってなぜか頷いている。
「ちっ狂った竜ってナイかよ」
「アンジェ君、聞いたかい!? 彼はこちらの事を狂ってるって……これほど低姿勢なのに狂ってるのはどう見ても彼のほうだろう!」
「クロウベル君さぁ……」
「あーもう2人とも黙ってくれ、サッサっと終わらせる」
魔法はイメージ力。
原作や様々なアニメ、ゲームをした俺にイメージ力は問題ない。
後は気合と根性。
「水竜」
俺は小さく指を動かして水竜たんを出す。
ネッシータイプの水竜が水球から出てきた。
そのまま剣を一振りすると水竜の体が霧のようになり俺の持っている剣に吸収される。
もちろんイメージだ。
「彼はあの若さで水竜を出せるのかい?」
「話には聞いていたけど初めてみた……さすが子種が欲しいって思った男ね」
「…………………………」
俺は全神経を集中させ、一言も喋らずに手を動かした。
ウロコの真ん中をひし形になるように手を動かすと剣を鞘に戻す。
静寂が周りを支配すると、俺が切った場所がコトンと手前に落ちた。
「斬った……か……」
力が一気に抜けていく。
膝から落ちそうな俺をアンジェリカが受け止めてくれた。
「すご……私どんびきよ……竜のウロコって専門の職人がやっと加工できる品物よ」
「そ、そりゃどうも……」
返事するのもやっとだ。
俺の視界にナイが入ってくると、切り落としたウロコを手に取って見ている。
「ナイ。どうよ……お前のうろこなんて俺にかかれば……」
「いや、本当に斬るとは人間の進化もすごいね……でもこれを持って行くの?」
ナイが俺に苦労して斬った竜のうろこをもって来た。
アンジェリカに肩を借りて受け取ると、乾燥昆布の様にしなっている。
さっきまで黒曜石のように硬かったのに。
「す、すり替え……」
「こちらにメリットが何一つないよ? 君の魔力とウロコに残った魔力が反発してこうなったんだよ?」
ナイは突然に手を叩く。
「わかった! 君は狂ってるって思ったけどただの馬鹿なんだ。まだ生きていれば、この世界に博識な魔女がいると思うから聞いてみたほうがいいだろう」
「ま……じょ?」
俺が疑問を言いたいが力が出なくなっている。肩を貸してくれるアンジェリカがナイに口を開いた。
「ナイ君。お願いどうしてもこのウロコを持って帰りたいの、何か方法ナイ? なんちゃって」
俺が困惑していると、アンジェリカがウインクしながらクソナイに訪ねている。
「………………その顔でお願いされると自分は弱いなぁ。そうだなぁ……どうせアンジェ君よりそこの彼が欲しいんだろ? 君達5人出来てるんだしロープで運んでもいいし、さっきだした水竜に運ばせればいいんじゃないの?」
……………………。
うあああああああああああああああああああああああああああ。殺したい! 本当に昔の俺の顔で得意げになって喋り、そのせいで大事な者も守れなかったくせに。
「だってクロウベル君」
「そうする。ごめんアンジェリカ先に帰ってくれ、ここにいる時間が長いほど帰った時の時間差が怖い。俺は魔力が回復したら帰るから」
「まだ誰も死んでないわ。どうせ時間旅行するなら全員で、それにクロウベル君残して帰ったら、ナイ君に向かって暴れるわよね?」
「ソンナコトナイ」
せめて一発殴ってから帰りたい。
俺はかろうじてそう言うと、突然にナイが笑い出す。
「そんなことナイ。自分の名前にかけたわけだ! 安心しなよ、今はその魔法は止めているから」
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