第70話 シスターフレイ。姉のための時間稼ぎ
夕食を食べるとフリータイムだ。
フリータイムっても特にする事はない、アンジェリカ含む女性陣7人はお風呂タイム。
イフの温泉と違って混浴ってわけでもないので男性陣は待機だ。
結局イフの温泉でも一緒のお風呂には入らなかったけど。
俺とクウガは男性用の寝室でベッドに寝転んでる。
昨日今日初めて一緒になったパーティーでも無いんだし、今さら自己紹介などもないので会話も別にない。
俺は棚にあった本を数冊取るとその中身を確認。
男のたぶらかし方。
女性の感じる場所。
男性を物理的に元気にさせる本。
どれもこれも本のタイトルがアレである、絶対アンジェリカの趣味だろう。
読むこともなく本を閉じると控えめなノックが聞こえた。
「失礼します。クロウベルさんいますでしょうか?」
顔を出すのは頭にタオルを巻いたシスターフレイ。先ほど見た修道服ではなく普段着の様だ。
「はいはい、今すよ」
「あの少しいいでしょうか?」
俺はちらっとクウガをみる、クウガの顔がちょっと不満気だ。
「それとクウガさん、姉さんが用事あるようなので部屋で待っていてもらいますか?」
「え? 僕が……な、なんだろ」
「昼間のお仲間の方が暴れた事で話があるとか……詳しくは姉に」
クウガの顔が若干落ち込む。
なるほど……説教タイムか。
いくらアンジェリカが大丈夫といっても再犯したらこまるもんな。
「じゃ、ちょっと用事言ってくるから」
「は、早く帰ってきてくださいね」
「帰るも何もまだ、何をするか……」
シスターフレイをみると、綺麗なに微笑む。
「魔術の事で相談したい事がありまして、メル様に訪ねた所クロウベルさん本人に聞くのじゃ。と申されて」
「あー師匠からそう言われたのなら付き合うよ」
あんまり変な事だったら断るつもりだったが、それであれば仕方がない。
階段を降りて小さい部屋に入る、中は明るくあちこちに医療器具……と思いたいのが並んでいる。
部屋の中央にはベッドがあるし、棚のあちこちには小瓶が並んでいた。
「そこの椅子にお願いします」
「はぁ……」
丸椅子に座ってぐるっと回る。
ぐるっと回る。
ぐるっと回ると、シスターフレイに足で止められた。
足で。
「クロウベルさん?」
「はい、すみません!」
「べ、別に怒っているわけでは……その体調が悪いとかないですか?」
突然なんだ。
「無いよ?」
「では、息切れや目まい」
「無いよ?」
「…………では便秘などは、尿のキレなどは?」
年寄りかっていうの。
「無いって! なんの!?」
「でははっきり言います。クロウベルさん何で生きているんですか?」
辛らつだ。
最近のイジメでもこんなに言わないぞ。
顔がちょっと……いやかなりかわいい部類に入るがそれはない。
「ああ、申し訳ありません! クロウベルさんの魔力がおかしいんです」
「俺の?」
シスターフレイは俺の体をゆっくりとさわる、腕。足。胸を触って頬を染めた。
「はい。専門的な事は省きますが魔力が量が多すぎるんです。アリシアさんも多すぎて外部にもれてました。しかしパッと見る限りクロウベルさんの魔力は体内で回っています……あの研究に協力してくれないでしょうか!」
「お、おう?」
「もちろん……研究費。その……一晩でしたら」
シスターフレイは衣服を脱ぐ。
お風呂上がりのツヤのある髪がばさっと前にはだける。
「あっ服着てね、寒いでしょ」
「…………」
シスターフレイはもう一度服を着る。
俺の目の前にすわると無言でにらんで来た。
「ええっと……怒ってる?」
「はい。怒っています、なんなんですか……美人に一晩好きにしていいといわれ服を着ろ。とは」
「ええっと、まず綺麗なのは認める。でもその」
「もしかして不能ですか! 安心してください不能にも効く紋があります!」
シスターなくせにドエロじゃねえか。
と、思ったけどあの性騎士アンジェリカの妹だ。それもそうか。
「わるいが元気いっぱいだ」
「証拠を」
「できるかああああああああ! 何なのもう。痴女なの!? 俺よりクウガを狙った方がいいよ、あっちはハーレムの呪いだし。絶対に絶倫だから」
「いいんですかっ!?」
「……………………俺の名前出さないでね」
シスターフレイが静かに頷く。
「話を戻しますね。本当にクロウベルさんの体内の魔力がおかしいのです。私は姉と少し違って目と手先が器用なんですが、クロウベルさんからは死んだ人が最後に放つ魔力に似てるんです……」
俺は黙って自分に指をさすと、シスターフレイも頷く。
「あー…………」
本来死んでるはずの人間が、努力して死なないようにしたからか。
スゴウベル、サンドベルが生きている。
アンジュも子供が生まれた。そのへんの辻妻か。
それともちょっと頑張ったら予想以上に強くなった事か。
アリシアを狙っていたはずなのにアリシアを譲って師匠を狙っている事か。
色々と思い当たる節がある。
「このままいたら体に悪いとか? そのへんだけ教えて欲しい」
「どうなんでしょう。前例がありません……魔力の流れを正常に戻す事は出来ますが治療をしますでしょうか? むしろ紋を彫らせて! 実験です実験!」
本音はそこか!
この研究エロエロシスターめ!
「ことわる! 大事な体に入れ墨なんていれたくありません!」
「入れ墨じゃないです! マジックタトゥーで医療行為です!! …………承認されてませんけど」
「いーやーでーすー」
「で、でももしかしたら長寿になる可能性もあるんですよ!」
「え?」
俺はもう少しシスターフレイの言う話を聞く事になる。
「長寿?」
「はい! 魔力が多い種族は長生きなんですよ、あの魔女と呼ばれる者も一説には魔力が多いだけの種族とも」
「詳しく」
――
――――
「――――と、言う事です!」
「ごめん、全然わからん」
専門的な言葉ばっかりで俺はまったくわからない。
魔女の単語からはじまり、魔力ブースト、魔力の破壊。マジックグラフ3型から発生するマイナス2型Cなどまったくだ。
「俺が理解したのは魔力を生命力に変える事」
「…………そこだけわかればいいです。クロウベルさんの沸き上がる魔力を生命力に変えるんです。きっと寿命が何十年も伸びると思うんですよね」
「じゃっそれで。本当に痛くない?」
「ええ、大丈夫です」
どうするか。シスターフレイを見ると突然に「たぶん」と言い出す。
「たぶん?」
「何でもないですよ。で、ではこの筆で」
俺と年齢が近そうなシスターフレアは手袋をはいて指を見せつける。
言われるままにベッドに寝転がって上半身裸の状態。
これで師匠並みに長寿になれるなら、すべてを知っていたらしい占い師マリンダの手紙にも聖女ってキーワードあったし。
俺は両腕から心臓にかけて模様を書いてもらう、透明な液体で粘り気がある。
これって……ローショ……いや考えるのよそう。
シスターフレイは俺の胸にある乳首に一生懸命筆を走らせているけど俺はその手には乗らないからね!?
暫くやっても俺がその気にならないと分かったとたんに違う場所に筆が行く。
乾くとサラサラで塗った感じも何もない。
水魔法をかけて貰った感じに近いな。直ぐに蒸発する水、毛先がくすぐったい。
「終わりました……」
「あ、もう終わり?」
「はい、実験段階の液体を使いました1年は大丈夫と思います。その間お風呂なども大丈夫ですね」
「どうも……帰っていい?」
「ええ、時間的にもう大丈夫ですね」
「時間?」
「いえ、何でもありません。所で〇〇くれませんか?」
ん?
俺はもう一度シスターフレイの顔を視る。
「ですから〇〇です。この小瓶に出してもらえれば……手伝いますけど」
ああ、やっぱ〇〇か。
子種のほうがまだ可愛く言ってる。
あまりにもドストレートで俺の脳が間違えたかと思った。
「絶対に必要じゃないんだろ?」
「はい。最近人体実験の方も興味がありまして趣味ですかね」
そんな趣味辞めてしまえ! と思うだけ思って部屋から出た。
俺が男子部屋に戻ってくると、クウガが窓を閉めている。
「お、おお、おかえりなさい!」
「うん。ただいま? 暑かったか」
「は、はい! その空気の入れ替えをと思いまして」
「蒸し暑いからな……そういえばアンジェリカの用事って何だった? 誓約書とか罰金?」
「え? ええっと……訓練。そう後日訓練に付き合ってくれって話でした」
なんだ?
クウガの様子が変なきもするが、まぁ何時も変か。
「アンジェリカは強い奴が好きらしいからな……まっがんばって」
「クロウベルさんの方はな、なんでした?」
「不老の研究」
「は?」
別にクウガであれば隠す事もないからな、これが全然知らない奴であれば言わない。
「その……おめでとうございます?」
「まだ研究段階1年後に死ななければ続行だそうな」
「そうなんですね」
そうなんです。
不老不死も楽じゃない、死んだら終わりだなんて。
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