第69話 クウガ君のヤンデレ感

 燃え尽き待ったぜ何もかも。

 と、どこかのボクサーをマネしていると馬車が入ってくる。

 窓から見えた顔は師匠の顔が見えた。



「お?」



 馬車が止まると、シスター服の女性。クウガ。アリシア。師匠が降りて来た。

 俺は師匠の腰にダイブする。



「ぬあああああああ!」

「お久しぶりです師匠。さぞお疲れでしょう。あっちに冷たい物があるのでぜひ飲んでください」

「離すのじゃああ、行動と言葉があってぬああ! 密着しすぎて魔法もっ打てんのじゃ! 離せえ!」



 っと、マジで怒られたので離れる事にした。

 俺が離れると、師匠ははぁはぁと息が荒い。




「クロウ君!?」

「クロウベルさんなんでここに……あれ、あっちにミーティアにクィル。ノラさんもいますね」



 アリシアとクウガが俺をみて質問するのでそれに答えないと、ええっと……短くそして現在の事をいうには。



「ええっと……捕まった?」



 俺が簡単に言うと全員が白目だ。

 背後から足音が聞こえ振り向くとアンジェリカだ。



「なるほど、君達がこの男の仲間か……おや中々にいい男だね。これから伸びる力が見える……」

「ええっと……あの誰でしょうか?」



 クウガがそう言うのも納得だ。

 誰一人自己紹介をしてないから。



「さん! ええっと皆様、こちらが私の姉にあたるアンジェリカです……聖騎士隊副隊長とアンジェリカ。と言った方がわかりやすいと」



 シスターフレイと思われる女性がアンジェリカを紹介する。



「では姉の私からもシスターフレイ。孤児院で働いていて魔法医術に詳しい出来の良い妹」

「ね、姉さん」



 仲のよさそうな姉妹でほっこりする。

 シスターフレイのほうもアンジェリカと顔が似ていて綺麗である。

 なるほどクウガが好きそうなタイプだ。



「お互いにつもる話もありそうね。館に戻って話しましょう」

「そうですね……アリシアさんクウガさん。メル様よろしいでしょうか?」



 アリシアもクウガも頷く。

 なるほど師匠はここでもメル様なのか、どんだけ偉いんだ。



「何じゃ?」

「いや、師匠って様付けで呼ばれて偉いのかなって」

「周りが勝手につけるのじゃ……色々聞きたいのじゃが聞かせてくれるんじゃろうな」

「ええまぁ」



 屋敷に戻って客間に戻ってくる。

 俺の前には本日6回目のケーキと紅茶が並べられてきた。


 ミーティア、クィル、ノラを見ると普通に食べ始めた。ウソだろ……若干胸やけしてる俺はそっと師匠の方に皿を動かす。



「お、くれるのじゃ?」

「ええ、良かったら」



 師匠はうむうむ。と嬉しそうにケーキを平らげる。

 それを見たクウガが慌ててアリシアにケーキを差し出しているがアリシアからそっと戻された。


 クウガが俺に助けを求めた目をしているが俺からは何も出来ない……すまんな、それに経緯をまだ説明してないし。



「まずは俺達かな……師匠に置いて行かれて暇を持て余した俺達は街に行くんだけど……突然にこの人に声をかけられ……こっちのちっこいのとおっきい奴が暴れまくってと」



 割と簡潔に事の経緯を説明する。

 ミーティアとクィルは『暴れてないしー』と言っていたがアンジェリカが「あれは駄目よ本来なら禁固刑ね」と言うと大人しくなった。



「では僕ですね。シスターフレイさんによってアリシアは治療をしたんですが、数日の様子見がいるので最低でも今日1日できれば4日ほどはこちらで。宿には連絡を入れるように伝えておきました」

「ねーみてみてクロウ君これ、かっこいいでしょ!」

「ぶっ!」



 アリシアはお腹の部分をめくるとお腹から下に模様が施されている。『陰紋じゃん』と、は口に出す事は出来なくお茶を吹き出した。

 俺がせき込むとクウガが「アリシア!?」と叫ぶ。



「なーに? クウガ君」

「え。い、いやなんでもない」



 そこはちゃんと言った方がいいぞ……。



「と、まぁこんな感じだ。クロウベル君達の力量は図らせてもらったかな、客人として迎え入れてる」

「そうですか……」

「おや。フレイは納得いかない?」



 シスターフレイは俺の方をチラチラとみている感じだ。

 嫌われているのか。

 それであれば仕方がない、師匠の顔をみる。という第一段階は終わった。



「あーこうして師匠の顔も見れましたし、俺がいて邪魔なら帰りますけど」

「本当にドアホウは何をしにきたんじゃ……」

「絶対にいてください! っ! す、すみませんアンジェリカ姉さんのお客様に」



 シスターフレイは立ち上がって叫ぶとすぐに座りなおした。



「よかったねクロウベル君、フレイにここまで言わせるだなんて嫉妬すらするよ」

「いいのか悪いのか……」



 俺は紅茶を一口含む。



「フレイ、これでもこの人は私の求婚を断るぐらいだ、そこのメル様が好きらしい結婚相手ならあきらめた方がいいよ」

「ぶっは!」



 今飲んだのを吐き出す。



「な、なにを言っているんだ! 別に求婚なんてされてないし! 誤解です師匠!」

「んあ? ドアホウがワラワに好意があるのはその百歩譲って認めるのじゃが、別に……ドアホウだって人と結婚したほうがええじゃろ」

「先生なんだが自分が人じゃないみたいですけど」



 アリシアが際どい所を突っ込む。

 そもそもアリシアは師匠が魔女で多分エルフって事知ってるのか、俺だけなのか、その辺がわからない。

 下手に聞けないし。



「おっとなのじゃ、まぁこんなBBAより若いほうがいいじゃろって話じゃ」

「師匠は垂れてませんしまだまだ大丈夫です!」

「ぬかせドアホウ! 当たり前じゃ垂れてないのじゃ! 毎回毎回ドアホウはワラワの見た事もないじゃろ!」

「見せてくれるんですか!?」

「死ね」



 直球である。



「これで本当に俺が死んだらどうする気で」

「死なんじゃろ。と思っていうておるのじゃ……」

「あの、私も結婚など考えてません」




 事実を言ったのに怒られてしまった。

 フレイも別に考えて無いっていうし、あれ? じゃぁ何で呼び止めたんだ。

 席にすわりなおすと、アンジェリカがゴホンと咳払いをする。



「なるほど性格にちょっと問題ありね。でも強いのよね」

「そう、変態ちゃん強かったんだよ! 試合で周りの人をばったんぎったんむふー」

「馬鹿ミーティア」



 ミーティアは俺が練習試合したのを得意げに話す。

 あと、何でミーティアが自慢気なんだ。



「ほう、ドアホウが試合を珍しいのじゃ」

「そうなの? 聖騎士隊……私の補佐をしてる子と私の攻撃、2対1で受けても余裕顔よ。あまりに余裕でこっちの戦意がなくなるぐらい強かった……思わず濡れたわね」



 どこを!? とはか突っ込まないぞ!

 火傷しそうだし。



「へ、変な事言わないで欲しいかなーあのままやっていたら俺が負けてたよ。俺の攻撃型は先行型、アンジェリカや聖騎士隊って基本防御型でしょ? こっちがスタミナ切れる前に終わらせないとって……」



 って調子乗って喋っていた俺は、心配をしていたクウガを視る。



「いいですね皆さん。僕なんてクロウベルさんから一度も本気で戦って貰った事ないです。先行型ですか? なんですかそれ? 僕との試合は全部負け宣言して勝ちを譲られたんです……」



 そう、俺がミーティアを止めたのはクウガが病むからだ。

 ことある事に俺と勝負をしようとするし、それを毎回断ったり手を抜いたりしていたら最近はやっと誘われなくなったのだ。


 なんでも『もっと強くなってからじゃないとダメなんですね!』と一人意気込んでいた。



「ク、クウガその。俺はお前を買っている、クウガの秘められた素質が怖いからしないだけなんだよ」

「素質……僕にあるんでしょうか」

「あるに決まってるだろ、こないだもホーリーソード光の剣を使えるようになったんだろ?」

「え! まだだれにも言ってないのに!」



 うおっと。

 ホーリーソード。

 名前だけは凄い技で、たんに聖の魔力を剣に乗せるだけ。

 ファイヤーソードとかアイスソードなどそういう系統の技で普段斬撃が聞きにくい幽霊系などに効果抜群だ。



「言ってなくても気配がしたというか、ちょっと隠れて練習してるのを見て、俺だってあんな高位技使えない、仮に俺が今強くても直ぐに追い抜かれる、だからこそ! 俺はクウガとは戦いたく無いんだ」

「そこまで僕の事を……感激です!」



 普通はイフの街に来る前に覚えてる技だ。

 見た事無かったけど、覚えてるだろうとカマかけたが最近だったとは……あぶないあぶない。

 師匠が優雅に飲んでいた紅茶をテーブルに置く、それを見ていたら目が合った。



「よく喋る口じゃな」

「な、なにか?」

「何もじゃ。さてフレイにアンジェリカ、招いてくれた事に感謝するがちゃんと飯はでるんじゃろうな?」

「もちろんよ。精のつくのをたっぷりよういするわ」



 別に深い意味は無いんだろうけどアンジェリカの言葉に俺は半笑いする。

 …………本当に深い意味ないよな。

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