第62話 悪役貴族の簡単なやり方
なに簡単な事だ。
アリシアの実家であるスニーツ家が聖王に頼んでアリシアを捕まえる、そして師匠を投獄しようとしてるんだ。
おのれ俺の師匠を捕まえてナニをさせる気だ!
と、まぁ冗談は置いておいてだ。
聖王は政治的問題から来たと思うんだけど、ああいうのは解決策が出るまでが長い。
お互いに落とし所を作って交渉したりするんだけどさ、お互いにちゃんとした正義があればいいよ? 俺だって努力するし我慢もする。
今回はどうだ。
師匠とアリシアが偽名で入国。
それなのに襲ってきた青服。
負けたら聖王に泣きつく。
中身はアリシアを捕まえろ&師匠の極刑。
そっちが力で来るならこっちも力で言って問題ないよね。
「問題は俺が勝てるかどうがなんだけどっと昨夜の襲ってきた奴らを見る限りは……あっ、おやっさん」
俺は宿の店主に声をかけた。
店主こと、おやっさんは興奮してるようだ。そりゃ聖王が自分の店に来たら興奮もするか……。
「な、なにかな? 実は君達は凄い人だったんだな……あの聖王が密会するだなんて……」
「え? ま、まぁ」
全然違うんだけど説明が面倒なのでそのまま流す。
「所で……ちょっとトイレ」
「トイレですか……外に」
「ああ、うん知ってる」
幸い今日の宿はトイレは外にある。
俺とて本当にトイレに行きたいわけじゃない、こっちからスニーツ家を襲撃だ。
代表とかにあってアリシアと師匠を諦めました。と証拠付で貰えればそれでいい。
アリシアの実家の場所だって聖都タルタンの中央の教会からみて右上のはじに大きな家がある。そこの2階に爺さんがいて『アリシアよ、良く戻って来た』しか喋らないNPCがいるのまで覚えてる。
顔グラは無くて爺さんのアイコンであったけど……まぁなんだ。少しだけで分かった気がする。
宿を出て聖王が乗って来た馬車から馬を拝借するために器具を外す。
「クロー兄さんどこに行くの?」
「…………その声は、ノラか」
振り向くとノラが細い目をして俺を見ていた。
「トイレ」
「…………馬に乗って?」
「そう馬に乗って」
別にノラになら隠す事もないと思うんだけど、師匠にトイレって言って出て来たんだ。トイレっていったほうがいいのかな。
「ええっと会議は?」
「クロー兄さんがトイレから戻ってこないからメル姉さんが薬持って行けって……トイレにいないし」
「あー……ええっと……トイレにいくのに迷っちゃったー……」
言い張るしかない。
小さいトイレじゃゆっくりできないから大きいトイレに行く。運、もうこれで行こう。
「はぁわかったよ。メル姉さん達にはトイレって言っておくからボクは何も見てないし何も聞いてない。その代わりお土産欲しいな……」
「お土産?」
トイレでお土産と言えば、クソをしたときに下から跳ねるアレである。
いかに俺が変態と言われようが、そこまでの変態ではない。
もはや引くレベル。
「そ、そんな顔しなくても。や、やっぱ忘れて!」
「え? ノラが欲しいなら努力はするが……自分でしないとお土産何て跳ね返ってこないだろう?」
「自分で買うお土産もあるだろけど、クロー兄さんからもらいたいなぁって。ミーティアさんがクロー兄さんから指輪貰ったって。その指輪は結局クウガさんに渡して売ってパーティー資金に替えたらしいけどさ」
「指輪? トイレで指輪が返ってくるの? え、何の話だ」
思わず馬に乗る用意を中断する。
ノラも変な顔をし始めた。
「ノラはトイレのその跳ね帰ってくるウ〇コが欲しいんだろ? その趣味が良くないが興奮するタイプなんだな」
「なんで! 今の話をどう聞いたらそうなるの! クロー兄さんちょっとこっちに」
「ん。はい」
ノラが怒っている。
激おこだ。
そういう時は年下だろうが素直に言う事を聞く事が大事だ。
多分俺が怒らせたから。
「いい、静かに喋るよ。クロー兄さんがトイレに行かない事はわかってるし、ボクは別にトイレのお土産が欲しいんじゃないの」
「そう……なのか……」
「そうだよ。クロー兄さんたまにポンコツになるよね」
別に普段と同じなんだけどな、ポンコツになった覚えもない。
「通常運転だよ」
「………………一応聞くけど…………スニーツ家の場所はわかってる?」
「いやだなぁノラ。俺がなんでスニーツ家に行かないと、一応場所は知ってるけどトイレだからね」
「大丈夫とは思うけど。あっそうだメル姉さんから絶対に薬だけ渡してこいって、この包み紙も渡すね」
さすが何でも知ってるノラである。
俺がかろうじて攻略ページを覚えてるのとは違ってノラは周りの気配りが凄い。
本当何で捕まったんだ……と思うが、子供で女の子だしな。
力で対抗されたらそりゃ捕まるか。
「預かっておく。じゃぁ本当にトイレだから」
「はいはい」
俺は馬に乗って走る。
なるべく大通りを避けて迂回しながらだ、途中で青い服の奴らが物影から飛び出て来た。
「まぁ監視目的でいるか……水槍」
走りながらじゃ命中率は下がるが別にあてるつもりもない。
いかくをするだけで勝手に転び、勝手に道を譲ってくれる。
そのまま走り割と短時間アリシアの実家についた。
大きな門があり3階建ての建物、大きな噴水があり贅沢なつくりが特徴。俺の家も無駄に大きかったけど、その3倍ぐらいはある。
門兵2人が俺の顔を見て眉をひそめた。
雑魚中の雑魚Aと雑魚Bと数えよう。
「ここはスニーツ家の屋敷である。捕らえるぞ!」
「ここはスニーツ家の屋敷だ。見ていると殺すぞ!」
AもBも好戦的である。
「トイレを借りたい」
雑魚Bが俺が乗っている馬をいきなり斬りつけた。
馬は暴れて俺は受け身を取りつつ地面に着地した。
「ここはスニーツ家の屋敷である。捕らえるぞ!」
「ここはスニーツ家の屋敷だ。見ていると殺すぞ!」
ああ、そうかいそうかい。
その前に暴れている馬に抱きつき『癒しの水』を唱える。馬の傷は塞がってきたが、興奮した馬は暴れる。
押さえつけてる俺と一緒にスニーツの屋敷から少し離れた。
「どうどうどうどう、ごめんってほら痛くないですよー癒しの水ですよーどうどうどう……ふう、ごめんってそうそう、やっと落ち着いた」
10分ぐらい馬をなだめて落ち着いた所で馬から離れる。
俺が歩くと馬がついて来た。
「え、いや。適当な所で待っていて」
馬が人鳴きすると道のはじに行き俺を見送ってきた、頭のいい馬は嫌いじゃない。
前方に見えるのは頭の悪い馬鹿2人、俺が無事とみると剣と槍を構えて来た。
「ここはスニーツ家の屋敷である。捕らえるぞ!」
「ここはスニーツ家の屋敷だ。見ていると殺すぞ!」
先ほどよりも殺気がある。
「トイレを借りに来た。悪いけど漏れそうなんで……」
俺は剣を振りかかって来た雑魚Aの攻撃をかわして雑魚の顔に手を広げ掴む、アイアンクローだ。
そのまま背後の鉄門へ叩きつけると雑魚Aは体をびくっとして力がなくなった。
「え。いや……死んでないよね? 頼むから死なないでね」
「ここはスニーツ家の屋敷だ。見て――」
槍をふるってくる雑魚Bの攻撃を水盾ではじく。雑魚Bとの距離が出来た所で足払いで転ばせた。
俺の手には雑魚Aが持っていた剣、転んだ雑魚Bの胸に足を置くとまな板の上にある鯉。だ。
「ここはスニーツ家の屋敷だ……助けて……」
「なんだ、普通に喋れるじゃん」
恐怖におびえた顔の雑魚B。ここで殺すには顔の中央めがけて剣を落とせばいいだろうが……一応俺は別に殺人主義者じゃないからね、仮にアリシアがここにいれば、やったかもしれない。
即死以外は治せるって聞いたし。
肩でいいか。
思いっきり地面と肩を串刺しにした。
雑魚Bの悲鳴が聞こえると、電池がきれたように突然倒れる。
「え、いや死んでないよね? たっく……一応、一応だからな『癒しの水』」
何でここで俺が殺人に気をつけるかと言うと、マナワールドの世界でも一応は街中でそんな事出来ないからね。
俺は雑魚AとBに魔法をかけて門を開ける。
騒ぎを聞きつけたのだろう、青い服を着た集団が走ってくる、その中に一人見覚えのある奴が出て来た。
「これはこれは……昨日お会いした青年ですな、スニーツ家に何の御用でしょうか?」
「トイレ貸してくれない?」
「世迷言ですな……アリシア様はいずこに?」
「さぁ……ちょっと中に入らせてくれない?」
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