第60話 アリシア視点 悪夢と悪い魔法使い
私アリシアは、夢を見ている。
何度も見る夢で繰り返される光景。
村に魔物が来た。
おじさんがそう叫ぶ、最初は何を言っているのか小さい私にはわかなく、村にいたおじさんが突然に私の手を取ると必死に引っ張る。
おじさんが転ぶと私も転んだ。
顔をあげると、おじさんが死んでいた。
小さい私は必死に走った。
魔法が得意なママと何時もやさしいパパに知らせるためだ。
あちこちで悲鳴が聞こえる。
これは夢。
15年前の夢。
小さい
小さい私は家の扉を開く私の手は勝手に扉を開いた、両親が食べられていた。
何かか壊れた……私は燃える村に座っている、今ならわかる私の火の魔法が発動したのだろう。
気づけば知らない大人が私を囲んでいた。
いきなり引っ張られて箱に詰められた。
お腹減った……そんな事を考えていると明るくなる。
知らないお爺さんが立っていた。
小さい私に中を言ってくる。
どうやら私は聖女。という名前らしい。
ううん。私はアリシア……小さい村が魔物に襲われた。それを退治したのも残ったみんなを回復したのも記憶にある。
小さい私、心を閉ざして……そう、今は我慢するの。
もうすぐ、悪い魔法使いさんが私を助けに来てくれるから。
――
――――
私は突然飛び起きた。
周りを見ると薄暗い……目が慣れてくると聖都タルタルの宿と言うのを思い出す。
夢と現実が混ざった夢、少しは慣れたつもりだけどやっぱり悪夢は悪夢だ。
「………………」
無言のまま部屋の中を見ると、ベッドに私とクィルさんが寝ている。
同じベッドで寝ていたはずのミーティアちゃんはソファーで寝ているクウガ君に抱きついて、クウガ君が寝苦しそう。
「うん。毎回だけど……よくどっちも起きないよね……」
2人とも幸せそうで、ちょっと意地悪をしたくなる。でもしない悪いおねーさんにはなりたくないし。
「うん、先生には感謝しなきゃ。今の私があるのもメル先生がいるから」
って事で少し夜風に当たり行く事する。
悪夢を見た後は気分を変えたい。
「アリシア、どこに行ク?」
「うわ。クィルさん起こしちゃった? 少し散歩……かな?」
「ん……ごえイする」
「大丈夫、寝ててね。外の空気を吸ったら戻るから」
私が言うとクィルさんはまたまぶたを閉じた。
部屋からそっと抜け出すと窓の扉を開けた、少し涼しい夜風が私の髪を抜けていく。
「風が気持ちい……」
「少し寒いかな」
「ふえ!?」
突然に窓の外から声がしたので変な声が出た。
慌ててのぞき込むと、横の窓から腰にロープをつけ、外にぶら下がっているクロウ君と目が合った。
「こんばんー」
「……クロウ君?」
「うい」
「何してるのかな……?」
「いや、転んだ拍子に師匠の胸を揉んでしまって大変にラッキーだったんだけどさ。ノラからはボクはどんな顔で居たらいい? て言われるし、師匠からは俺は本当に偶然に転んだのにわざとだって言われて……話し合いの結果、一晩中窓の外に吊らされる事に」
「うん。よくわかんないね」
「だろうね」
クロウ君の実力ならこんなロープ1本なんとでもなるのに、それをしない。
先生もこんなロープ1本でクロウ君をどうにか出来るとは思ってないのにいつも罰が軽い。
「…………アリシア」
「何かな?」
「窓開けてると危ないかも」
「え?」
クロウ君は直ぐに黙って前を向いた。
路地のほうに青い服を着た人影が見えては隠れる。
その路地にクロウ君が出しただろう『水竜』がぺったんぺったんと歩いて行くと、小さな悲鳴が聞こえた。
「青い服……もしかして……昼間の……」
「さぁ? 俺の師匠を襲うなど極刑にするだけだし」
「んー狙ってるのは私のような気がするのに、今すぐ宿を変えないと」
「…………まぁ師匠も関係してるからそこはね。とりあえず俺は暫くここにいるから寝てても大丈夫。別に宿を変える事もない」
「で、でも」
クロウ君に「大丈夫だし、なんだったら偽名まで使ったのにあっさりバレた師匠を呼んでき――――!」
クロウ君の言葉が途中で止まった。
そのまま3階の窓から下に落ちていったから!
「ク――もごっ!?」
「静かにするのじゃ。ワラワじゃ」
「先生!」
メル先生がハサミを持っていつの間にか私の横にいたのだ。
ハサミはクロウ君を吊るしていたロープを切った……。
「他の奴らが起きると面倒じゃしな……外の連中はドアホウに任せておくのじゃ、ワラワも寝る……それとも昔みたいに一緒に寝るのじゃ?」
先生の表情が優しくなる。
先生はそのままクロウ君を落とした窓を静かに占めた。
私も先生に言われて……窓を閉める。大丈夫かなぁ……。
「もう大丈夫です!」
「うむ。じゃぁお休みなのじゃ」
なんだかんだでこうやって守ってくれる先生やクロウ君を見るとあの時告白してよかった。と思える。
結果は振られたけど、そんな事があったのに態度を変えないクロウ君に感謝。
まぁでもしょうがないよね。
ライバルが先生なんだもん。先生には勝てないよ……。
守られている事を感謝して気持ちを奮い立たせる。
ヒーラーは皆を守るのにいるんだから、明日から私が頑張らないと!
部屋の扉を静かに開けてベッドに戻る。
すぐにクィルさんが私に抱きついてくる、抱き枕じゃないのに……でも何か安心するので私も抱きつき返した。
部屋が明るくなると自然に目が覚める。
私は枕元のオタマを鳴らして皆を起こすのだ。
「おはよう皆。今日もいい日にしようね」
「ああ、うんアリシアもおはよう。じゃっ後で」
最初に起きるのはクウガ君。
私達が着替えをするのに部屋から出てってくれる、その間に私は全員を起こして身支度を終えなければならない。
「部屋を二つ取ってもいいんだけどね……宿代が高いしなぁ……」
クィルさんを起こして、叩いても起きないミーティアちゃんを無理やり体を起こすと服を脱がす。
「た、大変だ!」
突然に扉が開いて私は固まった。
「うわ……ご、ごめん!」
「ええっとクウガ君後ろ向いてね。まだ着替えてる状態だから」
「クウガ、まぐわうか」
クィルさんがクウガ君の背中に抱きつく。
「クィル! ば、ばか抱きつかない。それより聖王様がアリシアに会いたいって!」
「聖王さま……? ええっと何で?」
「僕に聞かれても」
クウガ君は振り向いた。
「ふえ、クウ兄ちゃんおは……ふえ? ミーティアちゃん裸なんですけどおおお!?」
「あんしンして。クィルも同じ」
「うん、全然安心じゃないからね。クウガ君何で振り向くかな?」
「ご、ごめん!! とにかく、下にいるらしいから僕は廊下で待ってる!」
クウガ君は慌てて部屋を出ると先生の声などが聞こえて来た。
私も急いで着替えをしないと。
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