第20話 え、君も呪わてるの!?

 1、子供が出来るような事はしない。

 2、突然に襲って来ない。

 3、メル師匠の言う事を基本聞く。



 この3か条を守るのじゃ。と俺は師匠に言われた。

 案外普通である。



「不満そうじゃの」

「ああ。その……子供出来るんですか? に」

「……………………………………」

「……………………………………」



 よくある設定で、エルフは長寿に特化している分、他種族とは子供が出来ない。できにくいと言う話だ。

 ゲームによっては他種族とは絶対に無理。という設定もあったりする。



「す。する事すればそのうち出来る事もある……のじゃ」

「わかりました。我慢します」



 師匠が「我慢しておくのじゃ」と小さく言うが俺は聞こえないふりをする。聞こえなければ従う必要もない。



「あと、俺は突然に師匠を襲ったりはした事ないです」

「マジなのじゃ?」

「はい、一度も無いです」



 俺が言い切ると、ジト目がさらに細くなる。



「…………ほんとこのドアホウは……じゃぁやっぱ同行拒否――」

「ひ、ひどい! 師匠はやってもない事を罪にするんですか! この世の中から痴漢がなくならない理由がよくわかる。いいですか、俺は師匠とに軽いスキンシップをしてるんです、師匠だって俺に攻撃魔法を決めた時に、ストレス発散になったでしょ!?」

「ま、まぁのう」

「ほら。俺だってこれ以上は駄目だってラインは解ってるつもりです。に襲う事は絶対にしません!」

「お、おうなのじゃ……」



 よし、丸め込めれた。

 ようは襲う前に『襲います』って言えばいいのだ。



「後は」

「まだあるのじゃ?」

「最後の命令はいいとして、それでいいですか? その俺が言うのもおかしいですけど俺が転移の門などを知ってる事を……」

「あーその変は5年前にも考えたのじゃが面倒じゃ。ドアホウがドアホウのままでいればワラワは何も言うまい。どうせ寿しのう。ドアホウだってちゃんと成長してるよだし直ぐに老人じゃろうに」



 そうですよね。

 そう、師匠と永久にキャッキャウフフイヤーンをするには俺には時間という縛りもある。


 どこかでにならないと、師匠が一生独身設定なのはこの辺の設定なんだろうなぁ。


 なるべく早く不老になりたい。

 80歳で不老になった所でもう体はボロが出てるだろう。


 一番簡単な不老は吸血鬼の眷属になる事。

 しかしこれ問題があって親である吸血鬼を好きになってしまうし俺の意志がなくなる。

 それに眷属が親である吸血鬼を殺すと眷属のほうが消えるようなきもするし。



「聞いとるのじゃ?」

「っと、聞いてます聞いてます。じゃぁそれで契約書書きましょうか?」

「いらんいらん。あんな証文に価値なぞないのじゃ。さてアリシアにばれないように……まずはフユーンに行くのじゃ」



 ――

 ――――


俺達が徒歩でフユーンの街に戻ってくると朝方というに人が多かった。



「ずいぶんと騒がしいですね」

「そうじゃのう、ドアホウ聞いてくるのじゃ」

「師匠は?」

「何かと目立ちたくないのじゃ」



 

 冒険者ギルドのギルド長や他の偉そうな人の顔もちらほら見える。

 その冒険者ギルド長と目があった。



「おお! 君は確かスタン家のクロウベル君か?」

「え。はい……ええっとお久しぶりです」



 ギルド長として覚えているから名前なんて覚えてない。

 父やスゴウベルに会いに来た時に何度か挨拶をした事があるぐらいだ。



「今までどこに……いや、確か追放されたとか回って来たな。その人生は色々ある気を落とさずにだな」

「それは良いんですけど、この騒ぎは?」

「知らないのか!? 先ほど轟音とともに共同墓地のほうで落雷……と言うべきなのだろうか空が一瞬昼間になった。騒ぎを受けて調査団が行く所なのだが、新手の魔物もある。5年前のような強い古代ミミズ並の魔物の可能性もあって今メンバーを調整中なのだ、場合によっては近隣の街に応援も頼む予定になっている」

「へえ…………」



 俺はフードを深くかぶっている師匠を見ては顔を前に向けた。



「追放されたショックで酒場の裏で飲んでいたので気づきませんでした」

「そ、そうか……若い時から酒に逃げるのは感心せんな。君も元貴族であるなら――」



 ながーい人生教訓が終わったのは冒険者の編成が終わった、と他の人に言われた頃だった。



「む、先発隊が決まったようだな。では」

「はい、有り難いお話でした」



 スタスタスタと離れると、先ほどまで他人の振りをしていた師匠も少し後ろからついてくる。

 周りに誰もいなくなったところで俺は振り向いた。



「師匠おおおお!」

「しょ、しょうがないなのじゃ! ああでもしないとドアホウはワラワから離れなかったしのう」

「いや、それでもやり過ぎですって。凄い大事おおごとに……」

「むぅ」



 あっすねた。



「すねた師匠もかわいいですね」

「ドアホウは本当に……大事おおごとになったのは謝るのじゃ、これでいいじゃろ?」



 俺に謝られてもしょうがないんだけど「許します」と返事をした。



「で。本題に戻りますけどアリシアが心配って、なんでです? まさか死ぬとか?」

「ほんっとう何でも知っとるのう。このままでは死ぬのじゃ」

「またまた師匠も冗談言うんですね」



 思わず立ち止まると師匠も立ち止まる。

 顔をみると眼が真剣だ。


 え、いや。原作の『マナ・ワールド』でもアリシアが死ぬイベントなんて無い、気苦労はあったみたいだけど。



「なんじゃ、冗談でいうたのじゃ?」

「ええまぁ、そんな話聞いた事ないので」

「アリシアなら大丈夫と思うんじゃがのう……魔力が少ないゆえの呪いみたいなものじゃな」



 少ない?

 5年前にあった時からアリシアの魔力は俺よりも大幅にあったのを思い出す。



「でも、5年前は魔法バンバン使ってましたよね」



 師匠は腰に付けているカバンから水筒を出した。

 俺に手渡してきたので確認すると空である「中に水を溜めるのじゃ、確かウォーターボール唱えられたのじゃ?」と、言ってきたのでウォーターボールと短い詠唱で水筒に魔法で作った水を詰める。



「これがアリシアの5年前の魔力じゃ、パンパンにつまっておる。じゃが」



 クルット反対にすると水筒に入っていた魔法で作った水は地面へ吸い込まれ直ぐに乾燥していく。



「え、ふたしないと……あっ」

「今のアリシアは魔力が多いがフタが無い状態。しかし周りの者はアリシアに無理をさせるのじゃ、ワラワがいた時は調整も出来た、しかし、あれは頼まれれば頼まれただけ魔法を使ったのじゃろう」



 そうか……魔力が多いアリシアが下水道の隠し通路、そこを通りたくない理由は魔力が吸われる。からと変だなと思っていたんだ。




「何か気づいたのじゃ?」

「いや、ほとんどが初期の回復魔法しか使ってなかったなぁって」



 それに攻撃に転じたのは1回ぐらいだっけかな。



「無意識に抑えてる部分もあるかもしれんのう。何はともあれ、どこぞの男と旅に出るって手紙が来てのう、こうしてこっそり見に来たわけじゃが……変態に捕まったのじゃ」

「変態って俺の事です?」

「ドアホウが二人もいてたまるか」



 口では文句をいうが師匠はやっぱ師匠で歩くスピードも落としてくれるしゲームで知った情報よりも優しい事がわかる。



「そんな……」

「さすがに初恋された相手が死ぬとわかればショックになるじゃのう」

「悪人以外誰も死なないシナリオと思っていたのに!」

「ん?」

「ん?」



 俺と師匠は顔を見合わせた、師匠が何か言いたそうなジト眼になったので「ジト眼がかわいいですね」と言っておく。



「シ、シナ……リオ?」

「あっこっちの事です。当然師匠はアリシアが死なない方法を知っているんですよね。さすが師匠です」

「知らんのじゃ」



 うんうん。さすがは師匠物知り、え?



「何度見つめても知らぬのじゃ。できる事と言えばアリシアに魔法をなるべく遣わせない事じゃのう」

「え、師匠役立たずじゃ」

「ほうほうほうほうほうほうほうほう」



 あっやばいちょっと本気で怒らせた。



「師匠! 朝食は何が食べたいです!? もちろんおごります」

「…………高級フルーツなのじゃ」

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