第9話 修行生活22日目
修行生活22日、なんと15日目辺りでスゴウベルがストーンエッジを会得した、ぐぬぬぬぬ……。
名前だけは強そうだけど威力は弱く小石を飛ばす技、当たると地味に痛い奴。すきを見ては俺に小石を飛ばしてくる。
最近は自習が多く、今日も師匠は父上に連れられて外に用事出ている、俺とスゴウベル。アリシアは室内でお勉強だ。
お勉強といっても師匠がいなければサボり放題と言う事で俺とスゴウベルはリバーシという黒と白のコマを使ったどこにでもあるゲームをしながら時間をつぶす。
白いコマを使ったスゴウベルが一気に5枚も黒から白にかえていった。
「おいクロウベル! 先生様は今日も夜までいないのか?」
「俺に聞かれても……忙しいでしょ」
「ふーん……あっもしかして父が手を出したとか」
まったくスゴウベルは俺をからかう事に全力だ。
「アンジュがついて行ってるからそれはないよ」
「つまんねーな。もっと慌てるかと思ったのによ」
審判役のアリシアが盤面をみながら白と黒のコマ数を数え始めていた。
「クロウ君、先生の事になるとおかしくなるもんね」
「なった事がないよ」
二人とも黙りだす。
「そ、そうだね」
「こええな」
「何が? とりあえず自習ってもこうも毎回サボるわけにも……角取りだよこれ」
俺は角に黒を置くとそればで白ばっかりの場所が黒くなる。
「ぬおおおおおお! ひ、卑怯だぞ!」
「卑怯も何も」
「わっ! 黒ばっかりになった」
「ま、まだ三つもあるからな……アリシアよくみとけ! かっこいい俺を」
スゴウベルが意気込むとアリシアは困り顔だ。
俺が残った角を二つ取った時に勝負はついた。
なんとかスゴウベルは最後の1個の角をとったが負けは負けた。
「ふざけ……」
「戻りました」
アンジュが部屋に入ってくる。
あちこちが汚れていて少し匂い充満しはじめた。
「くせえ!」
「こら! スゴウベル君!」
「いやだってよ」
アンジュが自分の衣服の匂いを嗅ぐと深々とお辞儀した。
「申し訳ございません。地下にある下水道のほうにいってましたので、それよりもクロウベル様、少し手を貸していただけないでしょうか」
「え。まぁはい」
僕が立ち上がると、リバーシで負けたスゴウベルも立ち上がる。
「おい! 勝ち逃げか?」
「いやだって……」
「俺もいく!」
「こっちに言われても……」
「私もいきます! 何をするか知りませんけど」
アンジュを見ると少し眉をひそめた。
用事があるのは僕であってスゴウベルじゃない、何をするのか知らないが、アンジュだって必要以外な人呼びに来たわけじゃないだろう。
「わかりました。最悪3人ともついてくる、というエル様の言う通りになりました。歩きながら説明します」
屋敷の廊下をアンジュを先頭に歩いてく、途中ですれ違うメイドや執事がアンジュにタオルや飲み物を渡し、それを使うと別のメイド達に手渡すしぐさは、控えめにいってかっこいい。
その手際の良さにアリシアもかっこいい。と、憧れの目だ。
俺も今度真似しよう。
さて外に出て馬車に乗るころにはアンジュは既にきれいになっていて説明してくれる。
「現在地下道に魔物が出ています。ランクはDからC、冒険者ギルドといってもこの辺は冒険者が少なく他の仕事もあります。サンドベル様とメル様が討伐しておりますが、魔物の数が多く手が足りません」
「ふ。それで俺様の出番だな!」
力強くいうスゴウベルにアンジュは首を振る。
「いえクロウベル様のほうが適任と思います」
「おいい! アンジュ。メイドのくせにっ」
「なんでしょうか?」
アンジュの鋭い眼光でスゴウベルが押し黙る。
ふ、馬鹿な奴め。アンジュは剣聖と呼ばれた人だぞ、お前何て一瞬で殺されるんだからな!
「クロウベル様、何か勝ち誇っているようですが、クロウベル様が偉いわけではありませんよ」
「うっ」
「怒られてるー」
アンジュが咳払いをする。
「続きをしても?」
「あっはい。ごめんなさいアンジュさん」
「いいえ。アリシアさんが謝る事ではありません。クロウベル様には水魔法を使って一区間を防いで貰いたいのです」
「無理でしょ」
下水道はゲームプレイで知っているか結構入り組んでいる。
そもそも街のほとんどは古代遺跡の上に建っているという設定が多い。
なので下水道はとても入り組んでいるのだ、そんな入り組んだ所を管理するもの好きはいなく、適度に魔物が湧くので討伐依頼が後を絶たない。
「そうでしょうか? エル様からは推薦されていましたが、わかりました。別のプラン――」
「俺に任せて! 師匠が言うならいける」
「………………ちょろ」
「ん? アンジュに何かいった?」
「いいえ。他の2人は何か聞きましたでしょうか?」
スゴウベルもアリシアも首を横に振る。
おかしいなぁ……アンジュが小さく何か言ったような気がしたのに。
「まぁいいか。で封鎖っても何をすれば」
「ウォーターシールドの応用で行けると思います。『小僧の力であれば全身以上の大きさを作る事が出来るのじゃ』と、エル様はおっしゃっていました。要は出口を塞いでくれれば、さて着きましたね、3人とも杖と剣をお忘れなく」
なるほど? 作戦としては簡単だ…………でもあれ? 俺に出来るの?
アンジュはさっさと馬車を降りていくし残った二人も先に降りた。
数人の大人たちがアンジュを見てはお辞儀する、アンジュも軽く礼をするとスタスタと下水道の中に入っていった。
ヤバイ、おいていかれる。
俺が入ると、少し先でまっていたアリシアが横についた。
「ねぇクロウ君。下水道って魔物が出るんだよね?」
「え。まぁ……でも低級と思うよ」
各町の冒険者ギルドのクエストで下水道清掃というクエストがある、ランク的にはDランクのクエストで、この街に来る時には経験値稼ぎの場所だ。
一定時間たてば再度アタック出来て序盤は美味しい。
さらにいうと各地の地下下水最深部には隠しボスがいるらしく、序盤で挑むともちろん負ける。
その内に効率いい稼ぎ方があるので下水道の掃除クエストは誰もしなくなる。
「入ります」
「くっせえ……」
ゲームでは匂いはないんだよなゲームでは。
ほらスゴウベルも怖気ついてるし。
あれ、アリシアは平気そうな顔だな。
「みんなの役に立てるんです、スゴウベルさん我慢しましょう」
「ええっと……この先はお食事中、リラックス中の方、虫が苦手な方はご注意を。無理して進めるクエストではありません……」
「え?」
俺が小さく呟いた言葉にアリシアが振り向くが、俺は黙って首を振る。
ゲームプレイ時に下水に入る時に出るメッセージを口にした。
「なんでも無いよ、たしか虫系とネズミ系の魔物がでると思うから」
「さすがはクロウベル様、良くお調べに。書庫の本を読んでいるだけありますね。来ましたよ」
物影から俺よりでかい触手がある虫が現れた。
全身に鳥肌が立つ、だってアレよアレ。現実世界にいたゴからはじまってリで終わる害虫の王だ。
「ファイヤー! バーッスト!! クロウ君右に行った奴お願い!」
「え、ああ、うん!」
焦げ臭い巨大Gを俺は剣で斬る。
「うあああああ! 動く、こいつまだ動く!!」
「魔物ですし……スゴウベル様。中央右下に剣を魔石があるかもです」
「え。マジで!?」
それまで怖がっていたスゴウベルがアンジュの言う通りに剣を差すと赤い宝石が出て来た。
「へえ、これが魔石か。おいクロウベル! 何に使うんだ来れ」
「はいはい。師匠の授業聞いておいてよ、加工して魔法を込めたり光を入れ照明にしたり魔力ブーストとか魔物から出るアイテムでは共通レア素材の一つ」
「へえ……高いのか?」
「どうだろう、アンジュ」
価値まで言われると俺にはわからない。
ゲーム内では魔石小から魔石特大までわかれているだけで個別となると見当もつかない。
「そうですね、その大きさなら慎ましく暮らせば2ヶ月はもつでしょう」
「お。ラッキー…………アリシア。俺の気持ちだ受け取ってくれ!」
「え、いらない……今の虫モンスターから出た魔石とか」
俺は小さく笑うと、背後から頭に小石が飛んでくる。
振り返るとスゴウベルが、なんだよ! と少し怒っているようだ。
「お、小僧! とアリシア、エロガキよく来たな」
声のほうを向くと師匠と父サンドベルがいた。
「師匠おおおおおおおおお!! お?」
前に進もうとすると俺の体空中に浮く、上を見るとアンジュが俺の服を引っ張り持ち上げていた。
「アンジュ?」
「クロウベル様少し落ち着いてください」
「え。いつでも落ち着いているけど」
「………………それはそれで怖いです。クロウベル様のお体はただいまアンジュが吊り下げいますけど」
「うん。落ち着いているよ?」
確かに師匠は俺に杖を構えていた。
敵じゃないのに。
「アンジュ、クロウベルに首輪でも付けたらどうだ?」
「スゴウベル君。それじゃクロウ君が犬みたいでかわいそうだよ」
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