第8話 10日目の授業・マナ・ワールドにおける魔力のうんちゃらかんちゃら
修行10日目。
今日は実践ではなくて知識の勉強らしい。
一般的な義務教育がない世界らしいので貴族などは家庭教師を雇う事が多いみたいだ。
一応ゲーム内でどこかの国になぜか女生徒が多い学園があったはずだけど今の俺には関係ない。
追加パッチで入学できたような出来なかったような。
それよりもだ! 銀色の長髪をなびかせた師匠は今日も可愛い。教師役に徹したいのか丸眼鏡をかけて俺達を座らせた。
いつもの三角帽子は部屋の中なので当然脱いでいる。
「さて、本日は魔法の授業じゃ。そもそもワシはクロウベル。お主に魔法適正があるかないか、あったとしてそれを生かすように。と雇われたからのう」
「よろしくお願いします師匠! あと今日も可愛いですね」
「…………よくもまぁ毎日。えこひいきはしないからのう」
もちろんだ。
師匠とラブラブになるのと、授業はまた違う。
さすがの俺でも真面目に受ける。
「先生様よ。俺はコイツに勝ちたい早く授業を」
「先生お願いしますー」
「ん。アリシアは復習になるのう。この世界には――――」
うんうん。
『マナ・ワールド』における世界設定だね、簡単に言えば世界が破綻しないような設定なんだけど……まぁここは先生の言葉要約する。
この世界には魔力がある、マナともよばれており魔法の基礎となる部分だ。
転生前の地球にはなかった話で身体強化なども特別なスキルを持った人間も、そのスキルの元は魔力の変異である。
基本は火、水、風、土、雷、光、闇。
それぞれに系統があり。これは『マナ・ワールド』をプレイした俺は割と知っている。
火と光の属性が強いアリシアはファイヤー系からヒール系を覚える。聖女にジョブチェンジすれば最後は女神の奇跡
俺は水属性が強いので、ウォーター系だ。
ウォーター系で覚えれるのは、ウォーターボール。ウォーターシールド。生命の水。ウォーターウィップ、呼びにくいから水の鞭などその変で、どれもこれも他の属性魔法のほうが強いのであんまり覚えてない。
俺を殺す予定だったアリシアの幼馴染クウガは闇以外の属性を扱える、扱えるっても育てるツリースキルの関係で全部は覚えれきれないんだけど。
ぶっちゃけると既に色々破綻してそうな設定ではある。
まぁ元がゲームだし。
「――――と言う事だ。そこの小僧、聞いているのじゃ?」
「もちろんです! 師匠はどの属性が使えるんですか? やっぱ風?」
「そのうちなのじゃ」
やっぱり教えてくれないか。
属性を知っているって事は弱点を教えるって事だもんなぁ。
「おーい先生様よー。俺も才能あるのか?」
「エロガキは土じゃな、簡易的ではあるが先ほど手を置いてもらった水晶にその色が見えたのじゃ」
「え!?」
俺は思わず立ち上がっていた。
何の才能もない口だけのスゴウ兄に魔法の才能があるだなんて……へぇ……。
「まじでか」
「といっても素質としては全然に弱い。そこらの馬のほうが素質あるぐらいじゃのう。まぁ励め」
「うい」
スゴウベルが珍しく師匠の言う事を黙って聞き始めた。
毎回毎回アリシアにちょっとかいをかけて、俺やアンジュがさりげなく守っている感じになっている。
「じゃぁ次は魔法を唱える修行なのじゃ。魔法には詠唱があり特定の言葉を混ぜると空気中の――」
「先生様よー。 もっとこうわからねえ!」
何て言う事でしょう! スゴウベルが馬鹿すぎて師匠のありがたい言葉がわからないだなんて! ちょっと説教の出番だろう。
「ま、まてクロウベル! 立つな! 俺は素直に言っただけだ」
「え? あれ。俺いつの間に立って……」
「クロウ君怖いよ?」
「小僧すわっとけ……」
「え、そりゃまぁ座りますけど。おかしいなぁ。本当に立ち上がった記憶が、ちょっと口をだそうぐらいで」
師匠はため息をつき話を変えてくれる。
「ようは。火の魔法なら最初は煙、水なら水滴、土なら砂をイメージして空中に出すように訓練じゃ。それの繰り返しじゃのう、慣れてくると特定のキーワードや魔力増幅をかけるために詠唱をっとまた難しい話になる所じゃったのう。なに、練習を怠らなければお主らが大きくなって結婚する時にはそこそこの魔法を使えてるじゃろうに」
「…………先生様よ。この二人はそこそこの魔法を使えてるんだし俺も」
師匠は俺とアリシアを見る。
「こいつらは特別じゃ」
「えへへ」
「いやぁスゴウ兄、天才って奴でごめん」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!」
スゴウベルが怒りだすと、師匠が手を複数回叩く。
「と、いってもここで打ち止めな奴もいるし、魔力が突然使えなくなる奴もいる。アリシアはそのままでも将来は安泰じゃが、小僧は水魔法取ったら何も残らんぞ……」
なんという現実。
序盤でやられるモブらしい性能だ、水魔法を取るとただの元陰キャで力を手に入れ暴虐気質の『俺キレちまうと何するかわからねえよ』の性格しか残らないとか、最悪である。
「ぐあっ!」
「貴族の三男坊だもんな。次男の俺様であればまだいい縁談もあるだろうに、知ってるかクロウベル。貴族の三男以下は大抵追放か出て行くんだぞ」
「うっ辞めて」
「大丈夫! クロウ君ならきっと英雄になれるよ」
え。
俺はアリシアを見るとアリシアは俺を見返した。
「な、なにかな……怖いよ」
「いや……」
これと全く同じのセリフを原作のアリシアはクウガに言うのだ。
「俺は英雄になりたいわけじゃなく、師匠の弟子として一生付きまとうから、問題ないかな」
「大問題じゃ! どこのストーカーじゃ……そもそもお主、ワシの外見にほれてるだけじゃろ? しわしわの婆ちゃんじゃったらどうする気じゃ」
まぁ確かに俺も見た目が年配となると気持ちもぐっと下がる。
せめて40代ぐらいまでが好ましい、この隠しきれないフェロモンというか、そもそもアニメやゲームの女性キャラは年齢よりも若く見えるのが多いし、だからこそ萌える。
「おーい、小僧聞いてるのじゃー?」
「え? ああ、はい。でも師匠、何十年もずっとその姿ですよね」
空気が一瞬にして張り詰めた。
え。俺何か変な事でも……うあああああああああああああああ。
そ、そうだ。
師匠が耳が長いエルフ! かもしれないのは攻略ページと初期ラフイメージの設定で、歳をとらない設定も俺が知っていい話ではない。
まぁ誰がどう見てもエルフなんだけど。
師匠がいつの間にか出した杖をクルット回転させるとコンコンと複数回床を叩く。
「どういう意味じゃ?」
俺の返答次第では攻撃魔法が飛んできそうだ。
「いや、いつまでも、いや昔からボンキュッボンの可愛い師匠だろうなぁ……って可愛すぎて歳をとるのが想像出来ないです!」
「…………まぁそういう意味なんじゃの、考えすぎじゃかのう……ごほん! わしとて歳はとるに決まってる! 後5年もすればお主も立派な青年じゃ。ワシなど忘れて早く結婚でもするんじゃのう」
それはこまる。
俺が転生した意味がなくなるからだ。
……いや、別に好きで転生したわけじゃないけど、せっかく『マギ・オープン』の世界、しかも本編前に来たのだ、やりたい事をやるのが一番。
「申し訳ございません、メル様。サンドベル様がお呼びです」
アンジュが授業中というのに師匠を呼びに来た。
「よし、お主らサボるなよ」
「ふん! クロウベルと違ってサボるわけがない」
「はーい」
「サボった事ないよ!?」
それぞれ返事をすると師匠とアンジュは部屋から出て行った。
とたんにソファーの上に寝転ぶスゴウベル、うーんサボリの姿勢だ。
俺とアリシアは顔を見合わせて少し笑った。
「俺はいいの。いまにお前ら二人に勝つから、いやーしかし俺にも魔法の才能があるとはな……土か。おいクロウベル! 土の魔法はなんだ!」
なぜ俺に。
「土はストーンアタック。ストーンバリア。それぐらいですかね」
「すくなくねえか?」
最終的にはゴーレム召喚があるけど、教えない。
「スゴウベル君、たしかゴーレムを作れるとかあったかも」
なんてアリシアは優しいのでしょうか、スゴウベルは「まじで!?」と起き上がるとアリシアに詰め寄っていた。
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