第37話 告白(?)の理由


 それから少しして、漸く固まった状態から脱した水音は、ヴィンセントとエレクトラ、爽子やクラスメイト達、そしてクラリッサとイヴリーヌ、マーガレットと共に、ウィルフレッドの自室へと入った。


 (王様の自室に招かれたの、これで2回目だな)


 と、部屋の中で水音がそんな事を考えていると、


 「さてエレン、何で言ったのか説明してもらおうか」


 と、部屋の中央にあたる場所で、ヴィンセントが椅子に座って腕を組み、床に正座しているエレクトラを見下ろしながらそう言った。


 正座しているエレクトラは、先程までの強気(?)な態度から一変して、からか、それともからか、顔を赤くしながらシュンとしているので、水音だけでなく爽子とクラスメイト、そしてウィルフレッドら王族達は、そんな彼女を心配そうに見つめた。


 周囲から視線を向けられている中、エレクトラは「それは……」と口を開くと、


 「だって……だったから……」


 と、顔を更に真っ赤にしながらそう答えたので、


 「『初めて』? 何がよ」


 と、ヴィンセントがそう尋ねると、


 「あんな風に負けたの……初めてだったから」


 と、エレクトラは顔を真っ赤にしたのに加えて、左右の人差し指の先をチョンチョンとつつきながら答えた。


 その答えを聞いて、

 

 「ああ、そういやぁお前、今日までずっと負け知らずだったんだっけ?」


 と、ヴィンセントは「あちゃー」と右手で顔を覆いながら答えた。


 その答えに反応したのか、


 「あの、それってどういう意味なのですか?」


 と、爽子が「はい」と手を上げながらそう尋ねると、


 「ん? ああ、悪いな。実はエレンは職能を授かる前かかなりのお転婆……いや、最早な奴でな、その所為か将来は『自分よりも強い奴と結婚する!』なんて言うようになっちまったんだ。で、2年前に職能を授かってから、その力を使いこなせるように訓練しつつ、自分よりも強そうな奴と戦ってはいつも勝利を納めちまうんだ」


 と、ヴィンセントはチラッとエレクトラを見つつ爽子に向かってそう答えた。


 すると、その答えを聞いて、


 「はぁ、そうなんですか。無礼を承知で質問しますが、エレクトラ様は何の職能を授かったのですか?」


 と、今度は純輝が「はい」と手を上げながらそう尋ねると、その質問に対しても、


 「ああ『猛闘士』っつってな、かなり攻撃力が高い上位の戦闘系職能なんだ」


 と、ヴィンセントはそう答え、それに続くようにエレクトラは頬を赤くして「えへへ……」と小さく笑った後、


 「ま、まぁそんな感じで、私はこの力を使っていろんな強い奴と戦ってきたんだけど、どれもイマイチな感じになっちゃって、『もうここには強い奴はいないのか!?』ってなった時、ルーセンティアで『勇者召喚』が行われて、異世界から24も勇者が来たっていう話を聞いて、『これは是非戦いたい!』という想いで父様にお願いして、ここに来たわけなんだ」


 と、自身がこのルーセンティアに来た理由を話し、その話を聞いて、


 『へ、へぇ、そうなんだ』


 と、爽子と水音らクラスメイト達は、一斉にエレクトラから一歩後ろに下がった。


 それを見て「おいおい……」とヴィンセントが呆れ顔になりながらも、エレクトラは話を続ける。


 「で、実際に戦ってみたけど、流石は『神々』に選ばれた『勇者』って事で、確かに強い『力』を持ってはいたけど、やっぱり私の方が強いと、結局私の勝利に終わったなと思ってたところに……」


 「僕が現れた、と?」


 と、尋ねるようにそう言った水音に、


 「ああ。そして、戦ってみてわかったよ。お前は他の『勇者』とは違うってな。極め付けは、私をぶん投げる前に見たお前の姿だ。あれは……」


 と、エレクトラはこくりと頷きながら答えた。


 その答えに水音達がごくりと唾を飲むと、


 「とっても、!」


 と、エレクトラは目をキラキラと輝かせながらそう言ったので、


 『……はい?』


 と、水音をはじめとしたその場にいる者達全員が首を傾げた。


 そんな水音達を無視して、エレクトラは更に目を輝かせながら話を続ける。


 「勿論、それも理由の1つなんだけど! 何よりお前、この私を4回も殺したという事実を刻みつけた事で……それで……惚れたのだ! もう最高に惚れたんだ! その時思った、『私は、この人と添い遂げたい!』とな!」


 そう言い放ったエレクトラを見て、水音達は口をあんぐりしながら、


 (……いや、何言ってんだこの人!?)


 と、心の中でそう呟いた。


 すると、


 「なるほどなぁ……」


 と、腕を組んだ状態でヴィンセントがそう呟くと、水音の方へと振り向いて、


 「て事はつまり……お前が悪いんじゃねぇかぁあああああっ!」


 と、怒鳴った。


 それに対して、


 「えええええええっ!? ぼ、僕が悪いんですかぁあああああっ!?」


 と、水音が悲鳴をあげると、


 「当たり前だ! お前がエレンを4回も殺した所為で、こいつがになっちまったんだぞぉ!」


 と、怒鳴られてしまい、水音は「うぐぅ!」と呻くと、


 「というわけで、水音ぉ!」


 と、ヴィンセントはそう叫ぶと、ビシッと水音を指差して、


 「お前! 責任とってエレンとしろ!」


 と言い放ち、それを聞いて、4秒後、


 「……はぁあああああああっ!?」


 と、水音は再び悲鳴をあげた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る