第27話 「皇帝」が来る?


 翌日、朝食を終えた水音達は、


 「朝早く申し訳ないが、勇者諸君にがある」


 と、ウィルフレッドに言われたので、全員、王城内にある謁見の間に集まっていた。


 (何だろう? 『大事な話』って……)


 と、水音が考えている中、


 「あの、大事な話とは何なのですか?」


 と、爽子がウィルフレッドに向かってそう尋ねると、ウィルフレッドは若干気まずそうに口を開く。


 「うむ、話で大変申し訳ないと思っているのだが、『ストロザイア帝国』という国をご存知だろうか?」


 「ストロザイア帝国……ですか? 確かこの国と肩を並べる大国だと習いましたが……」


 と、そう答えた爽子に続くように、水音をはじめとしたクラスメイト達も「うんうん」と頷くと、ウィルフレッドは「そうか」と言って、


 「実は明日、そのストロザイア帝国のがこの国に来るそうだ」


 と、真剣な表情でそう言った。


 その瞬間、


 『ええぇ!?』


 と、爽子と水音達は、ウィルフレッドの言葉に驚いて、ザワザワとしだした。


 暫くすると、


 「み、みんな、取り敢えず落ち着け!」


 と、そう言って爽子が水音達を宥めると、ウィルフレッドを見て、


 「あ、あの、ウィルフレッド陛下。そのストロザイア帝国のが、どうしてこちらに?」


 と、戸惑いながらそう尋ねると、


 「あー。本人曰く、『異世界の勇者とやらに挨拶したい』という事だそうだが……」


 と、ウィルフレッドはなんとも歯切れの悪そうにそう答えたので、気になった水音は「はい」と手を上げながら、


 「あの、ウィルフレッド陛下。その『皇帝』というのはどのような人物なのですか?」


 と、恐る恐る尋ねた。


 その質問に対してウィルフレッドは、「う、うーむ」と気まずそうに唸った後、


 「……その、性格に少々難ありというか、癖が強いと言えば良いのだろうか。ああ、だが! 家族と自国民を想う気持ちは本物だ! それは、私が保証する!」

 

 と、真面目な表情でそう答えた。


 その答えを聞いて、


 (……え? だ、大丈夫……なんですか?)


 と、爽子と水音達は、不安な表情を浮かべた。


 その夜、訓練を終えて夕食を済ませた水音は、また書物庫で本を読み漁っていたが、


 「うーん。帝国の皇帝……かぁ」


 と、頭の中は明日来るというストロザイア帝国の皇帝の事でいっぱいだった。


 「一体どんな人なんだろうなぁ。怖い人だったらいやだなぁ……」


 そう言うと、水音はゆっくりと目を閉じた。


 それから暫くして、


 「……ん!」


 (ん?)


 「……ん! ……君!」


 (誰だ? 僕を呼んでるのか?)


 「……ば君! ……らば君!」


 (あれ? この声は……)


 「起きて、桜庭君!」


 その「声」を聞いて、水音はゆっくりと目を開けると、


 「……あ、時雨さん?」


 そこには、何やら焦った表情をしている祈がいた。


 そして、彼女の周りにある沢山の本を見て、


 「しまった! 寝落ちした!」


 と、自身がいつの間にか眠ってしまったという事を理解して、水音はガバッと立ち上がった。


 突然の事に、


 「きゃあ!」


 と驚いた祈は、思わずその場に尻餅をつきそうになったが、どうにか踏ん張ると、


 「よ、よかったぁ」


 と、水音が起きた事にホッと胸を撫で下ろした。


 そんな彼女を見て、


 「あー、時雨さん、おはようございます。で、何で時雨さんがここに?」


 と、水音がそう尋ねると、祈はハッとなって、


 「さ、桜庭君、大変、なの!」


 と、何やら慌てた様子でそう言って、水音の腕を引っ張った。


 そんな彼女の様子に、


 「え、ちょ、ちょっと待って時雨さん!? 今、何時ですか!? まだ夜ですか!? もう朝ですか!?」


 と、水音は戸惑いながら再び祈に向かってそう尋ねると、


 「もう朝です!」


 と、祈は怒鳴るようにそう答え、


 「え、えぇ!? 僕本当に寝落ちしてたの!? ていうか待って、僕まだ顔洗ってな……!」


 と、水音はそんな彼女に「待った」をかけようとしたが、


 「そんな場合じゃないの! なの!」


 と、祈は再び怒鳴るようにそう答えると、そのまま水音の手を引っ張って書物庫を飛び出した。


 「え、な、何!? 大変ってなに!? 痛い痛い! 待って、そんなに引っ張らないで!」


 祈手を引っ張られながらそう叫ぶ水音だが、祈はそれを無視して、水音を腕を引っ張りながら廊下を走り続けた。


 暫く走ると、2人は訓練場に着いた。


 「し、時雨さん、一体どうしたの?」


 と、肩で息をする水音がそう尋ねると、


 「こ、こっち!」


 と、祈はまた水音の手を引っ張って、訓練場内へと入った。


 「ね、ねぇ、一体何が……って、え?」


 そして、2人が中に入ると、


 「な、なんじゃこりゃあああああああっ!?」


 目の前には、クラスメイト達がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る