第25話 その後の「勇者」達
爽子とクラスメイト達による「雪村春風への学級裁判」の決定から翌日、爽子や水音ら「勇者」達はというと、特に問題なくその日を過ごしていた。
昨日の午後の訓練前に起きた
「……昨日は、悪かった」
と、意外にもとうの切人本人があっさりと謝罪してきたので、皆、最初は「へ?」とポカンとなったが、その後すぐに反省したと思い、ホッと胸を撫で下ろした……のだが、
(なんだか、気味が悪いな)
と、水音と純輝はそう感じたので、万が一の事も考えて、純輝が他の中心メンバー達と一緒に切人を見張る事になった。
とまぁそんな感じで、その日は午前と午後、両方の訓練は特に問題なく終える事が出来た。
その後は基本的に各自自由行動(と言っても王城内限定だが)なのだが、水音はというと、その日は国王ウィルフレッドに許可をもらって、王城内にある「書物庫」で1人、そこに眠る様々な本を読み漁っていた。
読んでいるのは主にこの世界の「歴史」から、人々に与えられる「職能」と、そこから生まれる「スキル」について書かれている
最初は「異世界の書物」だから
その結果、
「うーん。やっぱり駄目だ」
どの本にも、水音が欲しい「情報」は載っていなかったとわかった。
それでもわかった事といえば、どの本を読んでも、この世界が
(ウィルフレッド陛下や訓練教官の話が
と、水音は頭上に幾つもの「?」を浮かべながら首を傾げた。
そして、もう1つわかった事は、5柱の神々が人類に授ける「職能」についてだ。
この世界の人々が持つ「職能」は、大きく分けて「戦闘系職能」と「生産系職能」の2種類あるとウィルフレッドや訓練教官が言っていた。
「戦闘系職能」に関しては、武器と魔術両方を得意とする「騎士」、体術を操る「格闘士」、片手武器を扱う「軽闘士」、両手武器を操る「重闘士」、槍を扱う「槍闘士」、弓矢を扱う「弓闘士」、魔術を操る「魔術師」の計7種類を基本としているが、これらの上にはより強い力を秘めた上位の職能が存在している。
因みに、水音が持っている「神闘士」や、担任教師の爽子が持っている「神聖騎士」は上位の職能に該当していて、「戦闘系職能」の中には「盗賊」や「暗殺者」は存在していないのがわかった。
一方、「生産系」に関しては、「農夫」や「料理人」、「鍛治師」や「裁縫師」といった、文字通り「作る側」の為の「職能」が存在していて、何かを作れば作るほど、新たなスキルを覚えたり、生産の成功率がグンと上がるようになっているのだ。
「ふぅ、今日はこんなところか」
と言って、水音が読んでいた本を片付けて、書物庫を出ると、
「うわ、もう暗くなってる!」
と、窓の外はすっかり夜になっていたのに驚いた。
それと同時に……。
ーーグゥ。
「あ」
お腹からそんな音が聞こえたので、水音は思わずそう声をもらして、
「い、急げば食堂やってるかな!?」
と、大慌てで食堂へと駆け出した。
そして、廊下の曲がり角を曲がった次の瞬間……。
ーードンッ!
「うわぁ!」
「きゃあ!」
と、誰かぶつかってしまい、思わず水音と、水音にぶつかった人はその場に尻餅をついてしまった。
「いたた。す、すみません、大丈夫ですか……って、あれ?」
と、水音はすぐに立ち上がって、ぶつかった人物に近づくと、
「あ……大丈夫、です。桜庭君」
そこにいたのは、
「時雨……さん?」
クラスメイトの1人である、長い黒髪の少女だった。
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