第2章 異世界生活開始
第9話 「彼」が去った後
春風がレナという少女と共に謁見の間を出て行った後、残された水音ら「勇者」達は、負傷した騎士や神官達の手当てを手伝った。
ただ、その表情はあまり良いとは言えず、純輝の言葉によって一度はやる気に満ち溢れ出していたが、春風とレナの
その後、
「と、取り敢えず、食事と部屋を用意するので、今日はもう休むといい」
というウィルフレッドの提案に従い、その日は豪勢な夕食が出たので、水音達はそれで食事を済ませると、それぞれに与えられた部屋で休む事になった。
その夜。
「……」
水音は部屋にあるベッドに座って考え事をしていた。
(……春風)
考えている内容は当然、春風の事である。
「……何でだよ、春風」
と、水音はボソリとそう呟いたが、残念なの事にそれに答える者はいなかった。
膝に置いた左右の拳をぐっと握り締めながら、水音は春風について思い出す。
「雪村春風」という少年は、普段学校では「大人しい生徒」として振る舞っているが、「師匠」と共に世界各地を飛び回っている時の彼は、目的の為なら平気で嘘を吐き、無茶な行動をとり、いつも水音をハラハラとさせていた。
しかし、決して自分勝手に行動しているのではなく、それら1つ1つの行動はいつだって
まぁ、多少は咎めてはいるのだが。
だからこそ、そんな春風の今日の行動は、水音にとって全く理解出来ないものだった。
確かに事情はどうであれ、この世界の問題に異世界人である自分達を巻き込んだルーセンティア王国は許さないだろう。
しかし、だからといって「世界を救って欲しい」という彼らの「願い」を拒否するどころか、騎士と神官達を相手に大暴れした挙句、自分達のもとを去るという春風の行動も、人としてどうかとも思っている。
ただ、幾ら考えても、水音は春風の行動の真意がわからず、それが水音を更に悩ませていた。
悩んで悩んで暫くすると、
「……あーもう! 全然わかんないよぉ!」
と、水音はそう叫んで考える事を放棄すると、ベッドの上にゴロンと寝転んだ。
そして、天井をジッと見つめると、
「春風の、バカやろー……」
と、水音はそう言って目を潤ませた。
その後、水音は腕でごしごしと目を拭うと、
「……ステータスを確認するか」
と言って、自身のステータスウインドウを開いた。
桜庭水音(人間・17歳・男) レベル:1
職能:神闘士
所持スキル:[※※※※※][神器召喚][体術][剣術][槌術][槍術][弓術][神闘気]
称号:「異世界人」「※※※※※」「職能保持者」「勇者」
(うーん。色々気になるけど、まずはこれかな)
と、心の中でそう呟くと、水音はこの欄に触れた。
神闘士……上位の戦闘系職能で、「神」に選ばれた闘士。体術や様々な武器の扱いだけじゃなく、神聖な「神」のエネルギーを用いた戦いを得意とする。
と、記された自身の「職能」を見て、
(神様……かぁ)
と、「ハァ」と溜め息を吐きながら心の中でそう呟くと、
(じゃあ、次は『スキル』だな)
と、水音は次に「スキル」の部分に触れた。
[神器召喚]……「勇者」専用のスキル。自身の武器を媒体に、聖なる武器「神器」を召喚する。
[体術]……鍛え上げた肉体で戦う戦闘術。パンチやキックによる打撃と投げ技を得意とする。
[剣術]……剣を用いた戦闘術。短剣、長剣、大剣など、あらゆる種類の剣の扱いに補正がかかり、単体から広範囲への攻撃を得意とする。
[槌術]……高い威力を誇る「戦鎚」を用いた戦闘術。扱いにはかなりの技術を求められるが、高威力の打撃技を得意とする。
[槍術]……槍を用いた戦闘術。単体攻撃を得意とし、極めれば敵の防御を突き破る事が出来る。
[弓術]……弓矢を用いた戦闘術。遠距離からの単体攻撃を得意とする。
[神闘気]……神聖なる「神」のエネルギーを扱う戦闘用スキル。攻撃だけでなく防御や失った体力や傷の回復も出来る。
「ふーん、なるほどねぇ」
と、小さくそう呟くと、最後にとある「称号」に触れた。
勇者……「神」に選ばれし希望の救世主。普通の人よりも成長速度が高い。
称号特性……普通の人よりも強い。スキル[神器召喚]を使用できる。
「ええ? 勇者の称号、こんな単純なの?」
そう言うと、水音はまた「はぁ」と溜め息を吐いた。
その後、水音はすぐに真面目な表情になると、
「じゃあ、最後はこれかな?」
と言って、とある部分に触れた。
それは、文字化けしていて読む事が出来ない「スキル」と「称号」で、幾ら水音触れてもその部分について知る事が出来なかった。
「うーん。駄目かぁ……」
と、水音は何度もその文字化けした部分に触れたが、とうとう飽きてきたのか、
「やーめた!」
と言ってステータスウインドウを閉じた。
(これでひと通りの確認終了っと……)
と、心の中でそう言うと、水音は再びゴロンと寝転んだが、
「……まさか」
と呟いて、水音はゆっくりと目を閉じた後、自身の胸に手を置いた。
「……」
意識を集中して、水音ただジッと静かにしていると……。
ーーグルル……。
と、何やら苦しそうな「声」が聞こえたので、水音はハッと両目を開けた。
(ああ、ちくしょう! そういう事か!)
と、水音は心の中でそう呟くと、再び自身のステータスを開き、文字化けしている部分にソッと手を触れた。
「く、こんなもの……」
と、水音は「怒り」を込めてそう呟くと、
「この世界の『神々』、なんて事してくれたんだ!」
と、この場にいない「神々」に向かってそう言った。
その後、またステータスを閉じると、
「明日から、いよいよ異世界生活の幕開けかぁ……」
と言って、それから水音は寝る支度をすると、明日に備えて眠る事にした。
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どうも、ハヤテです。
という訳で、今日から外伝第2章の始まりです。
本編主人公・春風が去った後のルーセンティア王国。そこで、水音ら残された者達に何が待ち受けているのか?
彼らの今後の活動に、ご期待ください。
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