第4話
試験に、落ちた。
喫茶店での1件から約1年。俺は、キアさんの特訓の後を追いながらトレーニングを積んだ。どんなに着いていっても後を追っても、キアさんが俺を見てくれることはなく、喫茶店の1件の半年後には任務に復帰してしまった。そのせいで俺にはいよいよ模範となる者がいなくなってしまい再び独学で鍛えるが、喫茶店の営業をするたびに聞こえてくる空竜シュウヤの戦果を知るたびに壁を感じるばかりだった。そんな中でも…必死に積んで…積んで…当日、全てが砕け散った。体力も知力も対人能力も何もかも劣った俺が無様に会場から出て行くときに背後から感じたあの冷ややかな目線は、今でもハッキリ覚えている。間違いなく皆んな俺を見て笑っていた。ボロボロの焼け跡にナイフを突き立てられているのかのような感覚がハッキリとした。それ以来キアさんたちの顔を見るのも苦痛になったので彼女たちとも疎遠になり、えんたくにも顔を出さなくなった。今はえんたくから遠く離れた住宅区のアパートに住んでいる。エミナさんが俺をオリジン・ハートに保護する際に当初用意していた部屋らしく、そのままの状態だったので入居は1人でもできた。彼女たちに会いたくなくて離れたのにその彼女のご厚意に甘えている俺に吐き気がした。今もしている。なのに今もこうして生きている。なんなんだ。
…………勝てるわけがなかった。当たり前じゃないか。向こうは手足がタコのようなヤツだったり、犬の嗅覚と俊敏さを兼ね備えるヤツだったり、身体が変形して数パターンの戦闘ができるヤツ………どう考えてもなんの個性もないこの身体で、アイツらを追い抜いて勝ち抜くなんて無理じゃないか。
『先を切り開き続けるってのがどれだけキツイか知らないで』
分かってるよそんなの。でも…
『分かってるなら何でミスした?』
俺だって……俺だって切り拓き続けてたんだよ。頑張ったんだよ。なんにもないなりに必死で…本来手に入る筈だったモノを奪われ続けながら、必死で。俺の何が悪い。
『甘えんな』
甘えてねぇよ。いや…甘えてんだろうなお前らからしたら。
『俺があんなに周りくどい特訓しかできなかったのは、どうすればいいか分からなかったからだよ。なんで部外者にそんなこと言われなきゃいけないんだ。俺に何の関心もないんだから、ガワだけで俺の心の奥底に来る苦痛の重さも何も知らないんだから、そんなヤツからしたら甘ったれてるように見えて当たり前だろうが。ふざーーーー
腹がなった。最近は食いたい時にしか食べてないので、常に空腹状態だったが…そろそろ限界だ…
「……………行くか」
近くにある店で適当に仕入れて、すぐさまアパートに戻る道を歩く。
…………ご都合主義がよ。ああやって言いわ……理由をつけてなんになるんだ?分かってるよなんにもなんねぇって……でもだからって……今更何すればいいんだよ…今から頑張ってもアイツとの差は埋まらねえ…というかなんだよ"頑張る"って。こちら十分に頑張ってんじゃ。鬱病にまでなって、特訓しやるって言った奴らから放置され続けて…それでも必死にやってきたんだよ。嫌われないように気を遣ってきたんだ……もうこれ以上どうやれって……
「ーーーそう言えば聞いた?均衡維持隊、今度はまた一段と危険な任務をしてるって」
考えながら道沿いに歩くと、隣の公園から子供の声でそんな内容が聞こえてきた……
……ガキどもがよ…どっから仕入れやがったそんな情報…まぁ……どうせ家族が隊員なんだろうけど……
『もう…どうでもいいだろ………もう……どうでもいいんだ』。
アパートへ帰還し、自分の部屋に入って真っ先に見えた光景で、意識が完全に覚醒した。
「ーーーーーッ?!」
「あ、おかえり」
空竜シュウヤ…?なんでこんなところに……
「鍵、開きっぱなしだったから」
………忘れてたのか………
「……い……一体…な何、か…」
「ああ…これから結構重大な任務に向かうから……その前に話しでもって…」
………俺に、話しをしたところで何になるんだよ。
「キョウカ…大丈夫?あれから全然えんたくにも顔を出してこないし……キアもエミナも心配してた」
「……………も」
思わず声が出てしまった。空竜シュウヤはそれを聞き逃さず、話の続きを聞こうと顔を覗き込む。
「…目的は、なん…です?そんな話…を…して、何のメリットが?」
ヤツはそれを聞いて、少し呆れ顔になったと思ったら、俺の足を軽くだろうが…蹴ってきた。俺は情けなく尻もちをついてしまう。間髪入れずに俺の手前にテーブルを置き、座った。
「だから…話しをしに来ただけだってば。メリット云々の問題じゃないって」
…何故だかふと、話しをしたくなった。先ほどキアさんもエミナさんも心配してたと言っていたが、それは嘘だろう。見舞いとか全然来なかったし。このアパートを準備してくれた張本人だ。俺がどこにいるのか分からないわけじゃないし…その点で言えば、空竜シュウヤは実際にこうして足を運んできてくれた。それが少し、嬉しいとかんじてしまったんだ。
『本当に単純で、器の小さい奴だ』
……分かってるよ。そんなの…
「…えっと……どうなの。最近は」
「え………まぁ…ふつ……いや、どうでしょうか。部屋も…ご覧の有様ですし…ゴミ袋、結構たまっちゃってるでしょう…?」
「………………まぁ、そうだな…」
「「…………………………」」
沈黙。なんでここに来て1年も経ってるのに、ロクなコミュニケーションもとれないんだ…
「………あ~……そうだ!えんたくにも顔を出してなくて、今均衡維持隊がどんな状況か知らないだろ?結構大変なことになっててさ」
「……………………」
「オリジン・ハートから探知できないほど離れたところにある次元で、黒異石の密輸が行われようとしてるらしいんだ…しかもその密輸相手あの”暗楽会”らしくて…」
「……………………………」
…そんな組織名、聞いたこともねえよ。
「先行隊が既にやられてるみたいでな…そんなところに入隊一年の僕を投下するって。入隊することになった1年前と変わらずブラックだよ…」
「…………………………………」
「いやさ、同じくらいに入隊してきた同期が『ヘマすんなよ』って…久しぶりに結構プレッシャー感じてる…期待に答えられるかって……」
……………………………………もう、限界だ。
「………………………………シュウヤ、さん」
「……っ。なに?」
「………………………………………あなたは、家庭教師とかいました?」
「え?いたけど…」
「何を教わってましたか?」
「音楽とかみたいな……芸術系の人達はそこそこいた。あと柔道や剣道とかの……体育系?それと世界のこととか、普通の子達が習うって言ってたこととか…」
「小学でお受験はしましたか?中学はする予定でしたか?」
「え…?なんでそんなこと…?」
「親は学歴の重要性とか正しく教えてくれましたか?」
「…………それは……教えて…くれてたと……思う」
「世間の常識や世界観をしっかりと理解している親でしたか?それをちゃんとあなたに話してましたか?」
「え……それは……どうだろ……てか何をもってそれを判断したら…」
「例えば大学生の就活のことを知っていたり、世界の金融状況を調べていたりとか」
「あぁ……それならしていると思う…そういうこと話してたし…」
「隊員の方々を見てどう思ってましたか?」
「うーん……結構お堅くて……色々拘ってて…僕とは色々違うところがあるなぁって感じかな…」
「親はあなたを悪い意味で動物に例えたりしましたか?」
「へ……?悪い意味で…動物に…?…………そんなこともなかったけど……」
「じゃあ…」
「な…なんなんだよ!さっきからそんなこと尋ねて、何が言いたいんだ?」
空竜シュウヤは俺からの質問を区切って、俺がついさっき紙コップに注いだコーラを飲む。ここまで言ってまだ察せないのか?いや分かってるのに知らないフリ?……もっと具体的に言うか…
「あの…さっき言ってた同僚の方の『ヘマすんなよ』ってのは……あなたへの当てつけだったんじゃないですか?」
「え……当てつけ?」
「はい。あなたは、明らかに格差の上側の人間なんですよ。経済的にも、文化的にも、情報的にも、運にだって」
「運って……そんなバカな…」
「いや、あなたは絶対に運がいい。自分たちは幼い頃からあった才能を磨きながら頑張ってきたのに、『たまたまお金持ちの家に生まれて、たまたま凄い力に選ばれて、自分たちが目指していた場所にエスカレーター方式で上がっていって、魅力的な人達に囲まれている』そういう人がいると知って、そんな現実を突然突きつけられた時、あなたは、なんとも思いませんか?」
「………」
「そんな奴がいきなり横に立ってみてくださいよ…想像に硬くないですよ…『俺たちはこんなに頑張ってここにいるのに、何が試験だよ。どこが実力主義だよ』って思考になるでしょ」
「…えっと、ちょっと待って。何か勘違いしてるかもだから…」
勘違い…?まさか、同僚の方々もお金持ちの家生まれで、英才教育を受けてきてたのか?いやそれっぽいひとは確かにいた…それは確かに勘違いだったか…
「僕、養子なんだよ」
「…………………………………へ?"ヨウシ"?」
「うん。あの人だって、僕の本当の親じゃない」
「…………………………じゃあ、産まれは?」
「世界の勉強してた時に知ったんだけど、地図にも載ってないところで…スラム街ってヤツ。そこで産まれたんだって」
「………………………………本当の、親は?」
「知らない。物心つく前からずっといなかったよ」
「…………………………………空竜家に来るまで、何やってたんだ……?」
「えーと…盗みとか、人殺しとかはもう既に街にいた皆んながやってたから…他の方法で生きながらえてたよ…………力じゃ絶対に勝てないし……まぁ、偶然足を運んだ人の靴を磨いたり街を比較的安全なルートで案内したり…だね」
「………それを……物心ついた時から…?」
「うん。笑顔の練習やら、人を苛立たせない言葉遣いとか、同時進行で滅茶苦茶やってたな…街の人たちにも肩揉みやら足揉みやら荷物運びやら、今思うとひたすら人にペコペコしてたな……」
「…………………………」
「…今思うとよく死ななかったなと思うよ昔の僕。ご飯とか日本に来るまでロクに食べてなかったよ…泥水とかよく食べてたよ…」
「……………………………空竜家とは」
「いつものように街案内をしていたら偶然あの人でさ…『後継ぎがいないからお前を迎えた』って。街の皆んなよりも身なりは気を使ってたんだよね。顔もちゃんと洗って。だからかな。見落としされずに済んだの」
「………………………じゃあ、それからは恵まれた。安心安全な生活を……」
「空竜家に来ても安心安全とは言えなかったよ」
「え…?」
「だってあの人は後継ぎとして僕を迎えたんだから。ここで無能判定出されたらまたスラム街に戻されるよ」
「あ…………」
「絶対に失敗できなかった。ちょっとでも失敗したら、またあそこに戻されるから。拾われるまで生きていけたのだって、本当にギリギリだった」
「…………………だから、なんでもやったって?流石に『これは無理です』くらいは…」
「それは無理だよ。世間ではあの人は“父親”だけど実際は“他人”。今まで見てきた子供の中で比較的マシで、法律にも触れにくいから僕を迎えたにすぎない。そんな人に“弱み”を見せたら?ナメられて終わるよ。しかも一生引きずられる。それは使用人や家庭教師も同じ」
「…………………でも学校は。どうせ良いところに入れてもらったんだろ…」
「拾い子をいきなり学校に行かせても、価値観の食い違いとかで絶対面倒な目に遭うだけ。だから学校に行くのは中学校からの予定だったんだ。受験どころか小学校に行ったこともないよ」
「…………………………………………………………」
「それに、オリジン・ハートに来たからのことだけども」
―――そうだ。コイツは偶然、黒異石に選ばれて。エミナさんやキアさんに、隊員総動員でチヤホヤ—―――――――
「ここに来ても、元の世界にいた頃と何にも変わらない。ちょっとでも失敗したら人体実験に使われる。生きながら身体を裂かれて、内臓をパーツとして使われるみたい…」
「——————————————————————」
「…任務も任務だよ。毎回毎回死にかける。料理や拠点の設立、資料の準備…生き延びるために自分にできる雑用をしたよ。エミナは結構僕に優しくしてくれたけど…打ち解けるなんてとてもじゃないけど、できないんだ………」
「自分にできる雑用」…?俺だってやってきたよ。自分できることを。キアさんにとやかく言われる隙間を突いて。でも…それをお前にやらせてしまったら、お前はほぼ何でもやれてしまうじゃないか。同じことをやってる俺の存在が、霞むじゃないか…いやそうじゃない。空竜シュウヤも俺と同じ努力をしていた…ヤツも努力をしているのはなんとなく理解してた。でも俺と全く同じ方法をやって、ここまで差が出てるなんて事実を、いきなり突き付けられたら……しかもその空竜シュウヤがやってたと言う努力が、ここまで凄まじいものだったなんて………俺の言ってた俺だってやってた努力って、なんだったんだ?
「…………違う……俺だって…………………努力は……………努力で……主人公に……」
「主人公?それってどういう…?」
「………なりたかったんだよ!!俺は、主人公になるために頑張ってきたんだ!!お前から………………お前に奪われたから!!取り戻すために!!」
腹から声が出た。辺りに騒音が響いて、頭に変な雑音が鳴った。それくらい、大きな声。そうだ…お前に奪われたから、こんな目に遭ってるんだ。お前のせいで……
「主人公に…?……今のキョウカは主人公じゃないの?」
「ああそうだ。お前に主人公展開を奪われてから、エミナさんもキアさんも俺のことを雑に扱ってる。あんな惨めな日々を生きるようなヤツが…主人公なわけない」
「—————ッ!でも!そんな考えしてたらやっていけないだろ!」
「………………………あ?」
「…さっき、キアもエミナも。お前を雑に扱ったと言ったよな」
「………雑に、扱ってただろう?特訓してくれると言っていたのにしてくれなかったり、喫茶でも頑張っているのに窓際へ追いやったり、雑に扱ってると言わずしてなんと言えと」
「だって雑に扱うなら、最初この世界から追い出す時にお前の話なんか聞いてなかっただろ。お店で仕事をする時も……本人から聞いてたけどキアの修行に着いていってたんだっけ?そんなわがまま、雑に扱ってたら通してなかったよ」
仕事をしたことが…"ワガママ"?コイツは何を言ってるんだ…?俺は、自ら、辛いことに、飛び込んで、努力しただけで……………キアさんも… 着いてきていたことに、今まで何も言ってこなかった。だから大丈夫と思ってたのに…空竜シュウヤに愚痴るくらいに……ウザがってたのか…?
「でも、まともに教えてくれなくて…」
「だったとしても、最初は挑もうとするのも勧めなかった人が黙認してくれただけでも大きいだろ」
「……………」
「あと…主人公になりたいってことだけど」
「…ああ。そうだ。お前が奪っていったんだ。俺が手に入れるはずだった居場所を。既にたくさん持っているお前が、奪ったんだ。何も持たない俺からさらに取り上げて」
「……………そのことは、置いておくとして。お前、本当に主人公になる気あったの…?」
「へ…?」
「さっきから聞いていると、『キアが教えてくれないから』『僕が黒異石を奪ってしまったから』『他の試験生には才能があったから』って言い訳ばかりじゃないか…お前は、本気でその夢に進んでいたの?」
「ハア……?!」
「何かを本気で目指するのなら、周りなんかどうでも良くて、自分で自分を律して、挑むだろ?そんなできない理由探してる暇ないだろ…」
「——————————————…………」
「というかそういう作品読んでないから知らんけど、主人公ってただ強い力を待ってる存在なわけじゃないでしょ?力はなくても頭脳明晰だったり、人情に熱かったり色んな要素があるわけで…その内の要素一つで、主人公になれるなれないと断じれるものなの?」
「…………………」
「…主人公になれないのなら今までの日々は全部惨めなものだったなんて…そんな0:100思考をして本当に主人公になれる?自分の頑張りを自分で認めることができる?自分を自分という人生の主役として、本当の意味で見れる?」
「…………………」
「………そうやって誰かのせいにして、何もかもを投げ捨てて、本当にお前にとってなりたい自分になれるのか?そういう考えを持っているのが理想の自分なのか?」
………………-さっきから…コイツは何を言ってるんだ?俺がここで今までここにいれたのは……主人公になるという本気の夢があって……そのために全力を尽くしてきて………いやそもそも…どう言った基準で主人公かどうかを決めているかというと……
「なぁ、キョウカ。お前は、主人公になって、何がしたかったんだ?」
『主人公になって、何がしたかったか』?
……………『何が』?
なんでコイツは、俺から何もかも奪った癖に…こんな一丁前に説教垂れてんだ?……いやそもそも一年頑張って試験に受けれない。師匠に認められて修行するイベントすらも回収できない俺が、『あの時黒異石を取り込んでいれば』なんて……なんで思えたんだ?空竜シュウヤのように力を自由に扱えるかも分からないのに…そう思っていないと、壊れてしまうから?なんだよ………それ…………
「…………カ………ョウカ………キョウカ!……大丈夫か?どうかした?」
「…………………」
「もう、そろそろ時間になるけど……もう少し居ようか?」
「…………………………」
……そう言えば、俺は、なんで主人公になりたかったんだ?
***
その後からも空竜シュウヤは色々話しかけてきたが、言葉を発していることは分かっても意味は分からなかった。聞き返す気力もない。程なくして、空竜シュウヤは退出した。
「………………」
「…………………」
「……………………………」
……分かってた。分かってるんだよそんなこと。
もう……俺……ダメだ。終わってる…昔からそうだった。他人の言葉に振り回されて…
『あの子は普通じゃないんだから』
『お前は本当に猿だな』
頑張ったのなんて…努力の仕方を間違えたからだろ………全部俺の、お前のせいだ。
そうやって罰した気分でいるつもりか?どうせ変わらないくせに。
変わり方が分からないんだよ。
また言い訳かよ。
『精神疾患者の誇大妄想。そんなの聞くヤツがいるわけない』
『そういうのは他人に聞くようなものじゃないし、聞くのもおかしいと思います』
自分で考えれないのかよ…その結果こうやって失敗してんだろ。聞けよ…
『プライドが高いくせに自己肯定感は低い』
他人の言葉にすぐに影響受けて、自分もそう考えていると思い込んで。その癖自分の頭で考えずに外ばかりに原因を向けて。あまつさえ自分を責めてるフリで可愛そうアピール。
「……………………………………」
俺は…辛いんだ……今まで信じていたものから突然見放されたのが。正義で、自分を殺され続けることが。俺は……アイツの赤子から頑張ってきた人生を否定できない。アイツの言ってた正義も、否定できない。じゃあ、自分を折るしかない。でも…今更どうしようもないじゃないか…今から自分を変えるって、どうやって変えればいいんだ。変わるにも時間が掛かる…変わるために、これ先どれだけの時間を、お金を、心を削る?仮にその時がきたとしても、そこにアイツらはもういない。遥か向こうに行ってる……削りに削って失うものと、そうしてやっと得られるものの、取り立てがつかない。俺だって変わろうとしたよ。それも中学の時に………その結果このザマだがな……どんなに頑張っても…根っこを変えられない……否定………できない……
「………………………………」
救われるわけないじゃないか。口を開けるだけでただ待っていただけのお前が。何かをするのにも、夢も生きる理由も、上手くいかない理由も、全部他人。他人で酔っ払ってばかりのお前が。自分は愚か、他人を許すことすらできないお前が。
人生の中で一番グロテスクだ。
そんなヤツが辿り着く場所なんて、決まってる。誰もが、考えるまでもなく分かる。
「————————ハ」
「———まさに……………主人公、失格」
主人公失格 @KSGRA
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